
ウズベキスタンの高速鉄道であるアフラシャブ号のVIPシートとビジネスシートに乗車しましたので、お伝えします。
アフラシャブ号とは
アフラシャブ号(Afrasiab)は、ウズベキスタンのサマルカンドと首都タシュケントを結ぶ高速鉄道です。この列車はスペインの鉄道車両メーカー「タルゴ(Talgo)」製で、ウズベキスタン鉄道が運行しています。サマルカンドやタシュケントのほか、ブハラやカシュカダリヤ地方の都市も一部ルートで結ばれ、観光やビジネスで重要な役割を果たしています。
特徴としては、時速約250kmで運行され、サマルカンド~タシュケント間の2時間30分以内で結ばれています。
また、3クラス制であり、VIP、ビジネス、エコノミーから構成され、ビジネスとVIPは1両ずつ、残りはエコノミーとなっています。タルゴ製の車両のため、1両あたりの長さは短いので、座席数はかなり少なくなっています。
列車名の「アフラシャブ」という名前は、サマルカンドにあるアフラシャブ遺跡に由来します。この遺跡は、サマルカンドの古代都市の一部であり、紀元前6世紀頃からの歴史を持つ場所です。
タシケントとサマルカンド間は344kmあり、東京から名古屋、仙台の距離であり、この高速鉄道が出来たおかけで同都市間はかなり早く移動できるようになりましたが、後述しますが、人気が故になかなか予約を抑えるのは厳しいと言えます。
乗車記

タシケント駅はタシケントの繁華街とは少し離れたところにあり、少し寂しい感じであります。ただ、駅の横には鉄道博物館があり、旧ソ連時代の車両が見ることができます。
別件ですが、ウズベキスタン入国間もないのか、なぜか携帯の電波がSIM、eSIMともに全く入らず、このままではスマホに切符を表示させることが出来ずに乗れないことになってしまうので、仕方なく、仕事用のスマホでテザリングをかけて何とか表示させたりしました。
iPhone16 Proが発売日まもなくで持ってきたので、ウズベキスタンの携帯キャリアに認識されていなかったのかもしれません。翌日からは安定しましたが。

タシケント駅であります。旧ソ連の面影はありますが、立派な駅舎であります。タシケントという地名は小学校の社会で覚えているところであり、それから実に数十年後に訪問したのは感慨深いところです。

地下には自由通路があり、旧ソ連時代からある地下鉄とつながっています。再開発の予定でもあったのか、ソ連はこんなものなのか大空間です。壁の色がE4系を彷彿とさせます。

駅舎には乗車する人しか入れず、上の写真の手荷物検査ブースで手荷物検査を受け、切符を提示して駅舎内に入ります。

駅舎内は売店やコーヒーショップがありますが、東京駅のような何でもありの空間ではありません。

中庭みたいなところもあり、涼しい時期はこちらの方が良いかもしれませんが、暑かったので、中で待ちます。

2階にはレストランがあります。社員食堂のようにプレートを持って、お好みのおかずを選ぶ感じでした。昼過ぎてはありましたが、数人の利用のみでした。
また、アルコールはビール飲みあり、昼からでも提供していました。値段は100円ぐらいなのでもっと飲みたいところでしたが。
ここで1時間くらい過ごして列車に乗車ですが、QRコードを翳すことなく、ビジネスシート車両出入り口にいる係員にスマホ画面の提示のみでした。

タシュケント・サマルカンド高速鉄道の線路は広軌1,520mmであり、新幹線やTGVの1,435mmよりも広い線路となっています。

車両はタルゴ社製であり、タルゴ250であります。タルゴはシリーズは異なるものの、同国やスペインやサウジアラビアの高速鉄道で運用されている車両です。

編成は先頭と一番後ろの車両が機関車の動力集中方式であり、その間は客車となっています。新幹線のような動力分散方式ではないので、客車内ではモーター音はないので、ある程度は静かであります。

10両ぐらいの編成ですが、Bisrto(ビッフェ)だけの車両も繋いでいます。エコノミー客も利用できますが、ビジネスとVIP車両の客向けに食事や軽食・ドリンクを提供するギャレイの役割の側面もあるようです。

タルゴ車両の一番の特徴は機関車自体は2軸ボギー台車ですが、客車はすべて1軸独立車輪かつ連接台車となっています。左右の車輪の間に車軸がないため、低重心とすることができ、曲線通過などに優れているようです。
2軸ボギー台車になれた日本人からするとガタンゴトン、新幹線だとガゴンガゴンに慣れていますが、1軸だとダンダンと踊る大捜査線に使われているような音でした。
ビジネスシート

ビジネスシートは日本で言うグリーン車に近いクラスであります。運賃はエコノミーがタシケントからウズベキスタンまで片道2,500円程度ですが、ビジネスは3,500円とあまり値差はなく、魅力的かもしれません。


シートはモケット生地のリクライニングシートであり、配列は1-2配列となっています。シート自体はエコノミーとあまり変わらず2-2配列のエコノミーの差分はスペースがあると言うところかもしれません。
シートは進行方向向きには回転できずにも車両中央を境にして、それぞれ向きが反対に配置されています。

シートテーブルは大きく、ノートPCを置いて作業もできそうです。海外製ではありますが、ぐらつき感はありませんでした。

Wi-Fiはついていますが、車両内で楽しむエンターテインメントのみであり、ネットはありませんでした。先述のとおり、自分のスマホの電波が不安定であったので、道中はあまりスマホを見ることはありませんでした。


日本国内線の昔の機材みたく、音楽サービスもあり、イヤフォンも配られたりします。使う事はありませんでしたが。

ナビもついており、サマルカンドまでの道中、どこを走行しているか一応わかります。

タシケントを出発します。途中駅に停車するかと思うとサマルカンドまで入れ替え待ちの停車はあったものの、乗客扱いはサマルカンドまでありませんでした。飛行機のような感覚です。
景色は平原ばかりであり、長大トンネルはなく、立体交差と思うくらいのトンネルぐらいでした。先述のとおり、一軸台車の特徴的なメロディが一番印象にあるほか、本当に250km/h出ているのかと思うくらいでした。
乗り心地は結構揺れ、E653系いなほの方が乗り心地が良いのではないかと思うくらいでした。

ビジネスシートでは軽食が無料で支給されます。コーヒーまたは紅茶とパンの詰め合わせとなります。

パイチックなパンとマフィンとなぜかインスタントコーヒーとなります。昔のグリーン車でドリンクがサービスされていたのに近いかもしれません。
このほかにオリジナルジュース(プラカップに氷を入れて、ミントを添えたカクテルしたオリジナルのもの)やアイスクリームなど有料で販売していました。

車窓はサマルカンドが近くなるにつれて少し起伏がある景色となってきました。それでも乾いた大地であり、中央アジアらしい景色が続きます。

2時間23分でサマルカンドに到着であります。344キロの距離なので表定速度は144km/hであり、のぞみが東京から名古屋(実キロ342.0キロ)で95分、216km/hと比較すると遅いですが、日本の在来線特急と比較するとやはり早いので高速鉄道と言えます。
降車した乗客はサマルカンド駅舎には入れずに、車端部の出口から出ることとなります。
VIPシート

さて、時間は経ち、サマルカンドの滞在を終えて、再びタシケントに戻ります。サマルカンド駅も立派な駅舎でありますが、手荷物検査があり、乗客しか乗れません。

ウズベキスタン鉄道のが描かれたポスターがありました。延伸計画が書いているようでしたが、どの区間かは不明でした。タシケントとサマルカンド間はすべてタルゴの運行かと思うとそうではなく、従来ながらの機関車牽引の列車も多く、そうした列車の所要時間は4時間超となり、限られた時間で観光する海外旅行者にとってはちょっと厳しいところでもあります。

帰りは何とかVIPシートを確保することが出来ました。エコノミーさえ予約が空いているのは厳しいのですが、何とかであります。

アフラシャブ号をはじめとして、ウズベキスタン鉄道は専用のアプリで列車の予約が可能です。日本のクレジットカードでも決済ができるので、このアプリが頼みの綱でもあります。
先述のとおり、サマルカンドとタシケント間は混雑しており、アフラシャブ号に限らず、満席が多く、朝早い便しか空いていないことがほとんどでした。
なんとか、タシケントに戻る夜遅くに到着するアフラシャブ号のエコノミーを確保して、帰路はスケジュールしていましたが、毎日予約画面と睨めっこしているとある特徴が段々とわかってきました。
出発の2時間前になるとVIPやビジネスのシートに空きが出る傾向があります。それを理解している人たちも多いのか、なかなか空いている座席の確保は難しいのですが、何とか19時にタシケントに到着できるVIP席に空きが発生して抑えることが出来ました。
これはANAプレミアムクラスの沖縄往復のプレミアム株優を睨めっこして確保することで鍛えられた技かもしれません。とにかく予約画面を検索して確保すると言う事です。
VIP運賃は日本円で約5,100円であり、東京と仙台間のグランクラスを考えると随分格安であります。

サマルカンド駅構内は待ちの乗客で結構います。こちらも売店と軽食のみであります。アルコールは販売されていませんでした。

いざ乗車です。vipと書かれた扉を開けるとvipシートです。

シートはビジネスと同じく1-2配列ですが、シートはフルレザーの高級感が漂います。こちらも進行方向回転はなく、向かい合わせの席で構成され、その間にはテーブルが設置されています。ただ、窮屈感は全くありません。

今回はVIP車両の端の区画のシートであり、向かい席は本来は2席あるのですが、車端と言う事もあってか1席でした。そのため、圧迫感がなく、広々としたテーブルでした。

ビジネスにはありませんでしたが、電源もあり、スマホの充電に重宝しました。充電は遅いですが、タシケントに到着のころには100%となっていました。

こちらにもモニターがありテレビドラマが放映されていました。言葉がわからないので関心はありませんでしたが。

VIPシートは一番端の車両であり、機関車部分も見えますが、当然ですが、先には進むことはできません。船のような感じの造りとなっていました。

帰りも平坦な大地が続きますが、羊の群れが見えます。ヨーロッパともアジアとも違う景色であり、世界は広いと改めて感じます。

VIPクラスの食事タイムとなります。まずはドリンクから始まりますが、アルコールはありません。紅茶としました。

前菜とかはなく、ワンプレートの食事であります。ビーツのサラダとライスと鶏肉のチャーシューのような感じです。真ん中にはアジアチックなパセリが盛られています。
鶏肉はスチーミーで調理するチャーシューな感じではありますが、ふっくらしていました。ブライン液に浸していたのかもしれません。

食後のデザートはフルーツ盛り合わせでした。オレンジとリンゴと梨にミントが載せられているのが海外と言った感じです。食器の感じからも結構、運賃の割に高級感と旅行感を感じて楽しかったです。

車体外側にはラッピングしているため、窓からの景色の鮮明さは落ちるのですが、黄昏の時間となりました。シルクロードに来たのだと言う実感を帰る頃になて感じた次第です。
その昔、白馬から初めてスーパーあずさ(E351系)に乗車した時も富士山が見える時に黄昏となり、その後、大都会の新宿に到着した記憶がなぜか呼び起こされました。

日も落ち、定刻通り、18:59にタシケント駅に到着となりました。往復ともに定刻通りであり、最近は1-2分遅れる新幹線よりも優秀なのではと感じてしまいました。
今日は駅から歩いて行けるホテルで寝て、明日は早朝にウズベキスタンを離れることとなります。旅は長いようで早い。
最後に

ウズベキスタンの観光では外せない、タシケントとサマルカンド間を走るアフラシャブ号は両都市を2時間30分以内で結び、ビジネスマン、観光客にとっても定時運行で便利な乗り物でありますが、東海道新幹線のような16両編成でもなく、5分間隔運転でもないため、予約はかなり厳しいですが、納豆走法で粘られば直前で確保できたりします。
今回の旅では一番お世話になった移動手段かもしれません。予約はぎりぎりでしたが、優雅な旅でした。