イギリスのロンドンとバーミンガム、リバプール、マンチェスター、エジンバラ、グラスゴーを結ぶ特急のAvanti West Coastに乗車してみましたので、お伝えします。
Avanti West Coastとは
Avanti West Coast とはイギリス国内の鉄道の主要幹線であり、ロンドンに次ぐ都市のバーミンガムやマンチャスター、リバプール、そして、北部のエジンバラやグラスゴーを結ぶ幹線であります。
イギリス東海岸の都市を結び、ヨークを経由してエジンバラを結ぶイースト・コーストラインとともに鉄道発祥の地だけあり、1900年前から開業していた路線であります。
現在は、上下分離方式を採用しており、線路はイギリス政府保有のネットワーク・レールが保有し、運行は外資を含めた運行会社が運営と言うさっぱりとした上下分離方式となっています。日本とはちょっと違います。(新幹線は東北・北海道・北陸・九州方面では上下分離は進んでいますが)
また、Avanti West Coast はロンドン以外のイギリスの主要都市を結ぶ路線でありますが、東海道新幹線のように名古屋、京都、新大阪、新神戸、岡山、広島、小倉、博多と日本の背骨を一直線に停車していくわけではなく、バーミンガム行き、リバプール行き、マンチャスター行き、エジンバラ行き、グラスゴー行きと別れています。
各目的地の駅がどん突き駅と言う事と、各駅での需要が別れているため、そうした結果と言えます。蓋し、東海道新幹線のように16両編成も不要であり、行先別の列車を体系的に運行すればニーズを満たせるようであります。のぞみにの分単位間隔の運行とは一線を画します。
日本の鉄道史で例えると、東北新幹線開業前の東北方面の特急列車が近いかもしれません。エジンバラを仙台とするとエジンバラに行くまでの路線は東北本線と常磐線があります。今後、ハイスピードの新線計画があり、既に建設は進んでいますが、その他系や運行車両編成がどうなるか気になるところであります。
乗車記
ロンドン・イーストン駅
Avanti West Coast Expressのロンドンの駅はイーストン駅であります。日本の場合は、新幹線は東京駅に集約され、在来線特急についても中央線方面が新宿となっている以外は便利でありますが、ロンドンの場合は各方面で駅が別れているため、駅がばらばらであります。地下鉄の活用となりますが、上野駅のような高低差の駅が多く、イーストン駅も地下鉄駅からだと結構な移動となります。
また、アメリカに鉄道などと同じく、発着番線が出発15分くらいまで確定しないため、改札前のコンコースは混んでいます。しかし、2階に行くとスターバックスやプロントのようななカフェがあります。プロントは夕方から居酒屋ですが、ここでは昼からアルコール提供をしていました。座っていた半分くらいはビールやロック、ワインを飲んでいました。日本国内だと昼からアルコールを見つけるのは大変ですが。
チケットは紙で発券も可能ですが、オンラインで予約発券して、スマホにチケットを表示することが可能です。改札にはQRコード読み取りがあり、そこにかざすと簡単に通過できます。
ユーロスターや飛行機のように手荷物検査はないので、そうしたことに面倒くささを感じる人には便利であります。LCCと対抗しているようで運賃は空いている時間帯は安かったりします。
イーストン駅はAvanti West Coast の始発駅なので、かなりの特急列車が止まっていますが、基本的には1時間おきで各地に向かいかつ、改札は列車ごとに設定されているため、間違えて乗るのは少ないと言えます。
日本ではどん突き駅を見直して、スルー駅を増やした結果、効率は上がっているものの、どの列車と迷うことが多くなっていますが、それがないのは使い慣れていない旅行者にとっては良いかもしれません。コンビニでドリンクやスナックを買ったりと逆にマネタイズできるかもしれません。
390形「ペンドリーノ」
Avanti West Coastの編成は11両編成であり、日本の場合は1~11号でナンバリングされていますが、同列車ではA~Kでナンバリングされています。HJKが優等座席であり、H号席がスタンダード・プレミアム席、J,K号席がファーストクラスとなっており、それ以外はスタンダード席(日本で言うと普通車)となっています。
先述のとおり、H号車はスタンダード・プレミアム席ではありますが、列車の表記ではFirstとなっています。外プラグドアがヨーロッパにいる実感を感じます。
今後は日立製の列車も出てくるみたいですが、イタリア製でもかなりしっかりした車両であります。
そして、スタンダード・プレミアム車内であります。シートはファーストクラスと変わりません。1-2配列であり、向かい合わせのシートが多いのでありますが、一部はボッチ席も有ったりします。ICEの雰囲気を感じる青とグレーと白の色調であります。
ファーストクラスとの差分はドリンクと食事の提供がない点であります。フリードリンクとは言え、売店で購入した方がファーストとプレミアムの値差は十分回収できる感じでもあります。
JR東日本の普通・快速列車のグリーン車や関東の一部の特急列車のように予約されている座席は赤ランプで表示されていますが、それよりも詳しく液晶画面でどこから予約されているか表示されています。後述しますが、マンチェスターからロンドンまで乗車した際は表示されていなかったされています。車掌の采配なのかもしれません。
スタンダードシートです。このシートは時間帯でかなり安くなるので結構混んでいたりします。また、空いていてもマナーがまだまだ醸成されない学生などは空いていると2席を占有して、脚を伸ばして寝ていたりします。
また、ワンワンがゲージに入らずに通路で寛いでいたりします。まあ、マスチフやシェパードみたいな大型犬ではないので、抱っこしていたらと思ってしまいますが。
車内設備
デッキはちょっと近未来的なイメージであり、欧州系メーカーの列車はこんなところが多いです。ゴミ箱も各車両にあるので、そうした点では便利であります。車体幅は標準軌としては狭いと言えます。
座席の電源関連であります。コンセントはイギリスタイプ限定でありますがあります。また、USBタイプAも有るので、不便はないと言えます。そして、テーブルにはワイヤレス充電のQiがあります。ただ、USB-Aポートの方が明らかに充電は早いので、ケーブルは必須と言えます。
車内Wi-Fiも無料であります。ただ、イギリスの線路の電波具合は悪く、それに連動しているのかWi-Fiも調子が悪く、動画再生はブツブツ切れるケースがかなりありました。まあ、タダなので活用するしかありませんでしたが。
トイレについては様式タイプがあり、飛行機な感じでした。そして、洗面に関しては自動タイプであり、ドライヤーもついており、日本並みと言えます。
当然と言うとどうかと思いますが、ウオッシュレットは有りませんでした。ただ、欧州の特急列車のトイレとしてはかなり良い感じでした。
車窓・スピード感
イーストン駅を出発するとしばらくはゆっくりと走ります。その道中にレンガ造りの側壁や岩堀を切り開いたそのままののり面を見ると結構、違和感を感じます。日本で言うと新幹線はトンネルか高架橋がメインであり、ほぼこうした景色はないのですが、鉄道発祥の国らしいところなのでしょうか。
玄関がいっぱいある長屋のような建物が見えてきます。シカゴの地下鉄からも似たような景色を見たことがありますが、都心を離れるとこうした景色が見えます。このあたりは130km/h運転でしょうか。
車両基地の先にはスタジアムが見えたりします。スタジアムが見える比率は他の欧州の国よりも多いかもしれません。
列車はそれなりに走行して、小一時間弱でMilton Keynes Certral 駅に到着です。かなりの人が降りていました。東京からで言うと、小田原、宇都宮、高崎ぐらいの都市でしょうか。マリオットのサイトでホテルのレートを調べてみると同街にあるMoxyはロンドン市内と比較するとかなり安いので、そんな感じかなと言えます。
このあとはイギリスらしい田園風景が続きます。日本の場合はこうした標高差のない場所は少ないため、鉄路を高低差少なく、カーブを少なくしようとするとトンネルと橋梁となってしまい、こうした景色は少ないのかもしれません。
また、天候についても、イギリスで豪雨災害とニュースは少ないので、こうしたメリットは有ると言えます。将来の天候は不明ですが。
放牧されている牛や羊が見えるのもスコットランドと言えます。このあたりは200km/hぐらい出ており、新幹線に近い感覚であります。
そして、列車はWest Coastの分岐点とも言えるCrewe駅に到着します。この先は北部のグラスゴーやエジンバラ、経済的には第2位の都市のマンチェスター、昔から港町であるリバプールに分岐していきます。停車するパターンとそうでないパターンがあり、高崎駅みたいなところでしょうか。
途中駅でプッシュプル運転の機関車がいましたが、ヨーロッパ内では珍しく落書きがないのは特徴的であります。ただ、ロンドン市内を中心に車両以外の鉄道設備では落書きが多い感じでしたが。
日本のはるか前から近代化されていた国だけあり、橋とかもその歴史と凄さは感じます。まあ、新東名とかも後世になると凄い偉業とかなるかもしれませんが。
売店
時間があるので車内探訪をしてみます。H車両からはかなり離れた場所に売店があります。C車であります。日本ではこんな売店は10年前以上に全滅し、車内販売すら崩壊し、ホームのコンビニだけとなっています。まあ、ホームのコンビニのプレミアム感を出していくのが課題かもしれませんが。車内の売店はカードタッチ決済で済むので便利であります。
紙袋が必要か問われて、必要かと言うのは正解であります。歩くと意外と揺れを感じ、瓶を持って歩くと途中で落として割ってしまいそうであります。
スパークリングワインや白ワインは冷やして販売しており、プラカップは自由にとれるので、なかなか言い販売であります。今日はあとホテルのみなので良いとします。
リバプールに到着
200km/h程の運転は結構継続して若干遅れながらも、リバプール空港最寄り駅を通過して、いよいよ、リバプール中心部の駅である終着のリヴァプール・ライム・ストリート駅であります。同駅への到着は5分程遅れてしまいましたが。
歴史の深い駅だけに最近のコンクリートのモダンな駅とは一線を画した壁面が特徴的であります。日本の新幹線駅の場合はほぼ新設であり、地上から高いところにガラス張りが多いのと対照的であります。
どん突き駅であり、鉄道開業当時の時代の雰囲気が感じるのは、さすが、鉄道発祥の国と言えます。
銅像は結構な駅にありますが、これは導線を分割する目的で映えとあわせて設けられてていると思ってしまいます。
リヴァプール・ライム・ストリート駅全景であります。ヨーロッパの駅の中でも歴史的にもその壮大さと凄さを感じます。船港も近く、いにしえの悠久さも感じます。鉄道と言うとフランスやスペインやドイツが先進的と言えますが、鉄道発祥当時のイギリスの凄さを感じます。
マンチェスターからロンドンまで
さて、リバプールからマンチェスターまでマン島を経由して、日帰りでアクセスしています。それはこちらです。その後、マンチェスターで1泊して、再び、ロンドンに向かう事となりますが、経済的にはロンドンに次ぐ勢力のあるマンチェスターは高層ビルの多さなどからそれを感じしました。
Avanti West Coastのマンチェスターでの発着駅はピカデリー駅であり、こちらもどん突き駅であります。そのため、ロンドン行きは始発であり、30分おきとわかりやすい体系であります。QRコードで改札通過が可能であり、不便はなく、改札直前までカフェや買い物を楽しめます。
ロンドンまではリバプールと同様に2.5時間ほどであります。リバプール線とは路線の共有が多いのですが、ペンドリーノらしく車体をフルに傾けてトップスピードで走り抜けることが多く、かつてのE351系かと思ってしまいました。
最後に
イギリスで言うと新幹線と言うのは実質、国際線のユーロスターでありますが、国内線も着々と高速化をしており、飛行機と鉄道のどちらを利用した方が良いかと問われると、イギリス国内でもLCCなど台頭があっても鉄道の方が良いケースもあれます。
時間の自由やサービスの充実を考えるとロンドン都心部までアクセスできる鉄道のコスパとかも良いかもしれません。高速鉄道(それに準じる)はLCC台頭の中でも比較対象と言えます。
また、ファーストクラスと同じシートであるスタンダード・プレミアムは食事やフリードリンク(アルコール含め)はないものの、その値差は良いと言えます。シートはファーストクラスと同じであり、スタンダードシートの混雑とは別世界であります。