新型273系のやくもに出雲市と倉敷間で複数回乗車してみましたので、お伝えします。
273系
273系はJR西日本が2024年4月6日から運用を開始した特急列車用電車であり、やくも号として運用されています。
特徴としてはカーブの多い伯備線と山陰本線を高速で運行できるように、先代のやくもを踏襲して振り子式を採用しています。とは言っても40年以上の前の振り子式とは異なり、制御付自然振り子方式として、さらに、車上のジャイロセンサーが現在位置を検出し、マップデータと照合して制御しており、精緻に車体を傾けることにより、乗り物酔い評価指標が381系比で最大23 %改善しているとのことです。
導入にあたり、現在の鉄道の主流である空気ばね式車体傾斜装置の搭載も検討したようですが、カーブが多すぎて、エアタンクの容量が追い付かない結果となり、振り子式としたようです。四国でも同じような話がありました。
中国地方は振り子式の車両が多く感じるので、現在、日本で走っている振り子式列車を調べてみました。
北海道
キハ283系気動車 オホーツク 大雪
東海
383系電車 しなの
西日本
381系電車 やくも(臨時)
283系電車 くろしお(オーシャンアロー)
キハ187系気動車 スーパーおき、まつかぜ、いなば
智頭急行
HOT7000系気動車 スーパーはくと
四国
2000系気動車 宇和海など
8000系電車 しおかぜ いしづち
2700系気動車 南風 しまんと
九州
883系電車 ソニック
885系電車 リレーかもめ かささぎ みどり ソニック
子供のころの印象としては381系しなのとくろしおでありますが、その後も振り子式は随分、開発されてきたのがわかります。スーパー北斗の2時間59分はCMも未だに記憶があり、E351系も印象深いところです。
273系のフォルムは271系を踏襲したと言う事ですが、振り子式と言う事もあってか、どことなくE351系を彷彿とさせます。
西九州新幹線のかもめと同じくひらがなで「やくも」とペイントされています。やくもブロンズという列車では見かけない、なかなかな色を採用しているのも特徴であります。
デザインは川西康之氏と近畿車輛デザイン室が監修したとのことです。町中華で飲ろうぜが好きな人がいたのかもしれませんね。
273系はすべて電動車となっています。1号車は半室グリーン車で、後述するコンパートメント席(普通席)となるため、記号はクモロハと久々の4文字が新鮮であります。
基本は4編成であり、クモロハとクモハは貫通扉を備えています。令和の車両だけあり、男女別トイレや車椅子スペースが設けられています。
クモハ273には霜取り予備用のパンタグラフもついています。このあたりは271系とは違い、中国山地を横断し、日本海側を進むので設けられたのでしょう。
米子から出雲市へ普通席
まずは、米子駅から出雲市まで乗車してみます。この区間はチケットレスで購入すると特急券700円とかなりお得なものもありました。米子空港から松江駅経由で出雲市に行くよりも、米子経由の方が安くなる計算となります。
いずれにしても出雲市到達時刻は同じとなります。
鳥取行きのスーパーまつかぜ12号が停車しています。やくもの豪華さをまつかぜが見ると生まれた時代は違うとは言え、ジェラシーさえ感じてしまう事でしょう。俺は何でこんな貧乏くさいのか?と嘆きそうです。
普通席
定刻通り、入線してきて車内に乗り込みます。まずは普通席であります。2-2配列であります。これは他のJR西日本の特急と同じであります。ただ、かなり雰囲気が違います。グレー系でまとめられているこれまでの特急車両と違い、鮮やかな配色であります。
床はフローリングであり、ヘリンボーン柄となっています。最近はこういう風にしないと乗ってくれないのですかね。
テーブルは背面テーブルのみであります。肘掛けにはカクテルテーブルはありませんでした。そして、コンセントは1席1口設けられています。このあたりも最近のトレンドですね。
実際に木材かどうかはわかりませんが、木目調が壁から手荷物棚から、窓枠まで至る所まであります。迷ったら木目と言う事なのかもしれません。
座席の生地はファブリックでありますが、魔除けとなる麻の葉がプリントされています。この辺りも近年の技術で簡単にできるようになった背景があるようです。
セミコンパートメント
1号車には同列車最大の特徴であるセミコンパートメント席が半室あります。普通席ではありますが、2-2のボックス席と1-1のボックス席の配置となっており、普通席としては乗り得なシートであります。
1-1のボックス席は2名からの利用、2-2ボックス席は3名からの利用であり、金に物を言わせて、乗車券と特急券を2人分購入しても、1人で乗ることはできなくなっています。コンパートメント席のコンセプトをきちんとキープしていきたいのが伺えます。
米子から出雲までは結構空いていましたが、予約断面でも結構空いていたので、ホリデー以外は1人利用が出来ないので結構空いているのかもしれません。平日に限りおひとり様とか出てくるかもしれません。
車外からコンパートメント席を見てみます。夜は夜汽車のような印象を与えてくれます。ユーロスターのファーストクラスのようにも見えます。
トイレは男女別に分かれており、最近の仕様でありますが、西日本の特急的な配列であります。ただ、配色は少し豪華であります。このあたりもJR西日本が結構、力を入れているのが伺えます。
18:30過ぎに米子からスタートであり、既に車窓は何も見えずに、30分辺りで松江駅に到着します。出雲駅と鳥取駅と松江駅は随分昔から立体交差駅となっており、頻繁に来ていないとどこの駅が駅名票を見ないとわかりません。
松江から30分後、終着の出雲市駅に到着しました。夜間であったため、振り子の具合などビジュアル的には感じませんでしたが、体感的には振り子式の線区を走っているのかわからないくらい快適でした。
シン振り子パワーの威力を感じるのは日中かもしれません。
出雲市から倉敷へ グリーン車
と言うわけで、日中に山陰本線と伯備線における273系の快適さを改めて味わうために出雲市駅に戻ってきました。出雲市駅も正面以外の入り口は普通な高架駅であります。
ちょっと時間があるので、駅に隣接した蕎麦屋で早めの昼食としました。11時なのでまだまだ空いています。
穴子天ぷらと出雲そばであります。今年はこれを年越しそばにしても良いくらいであります。前回の出雲そばは亀嵩駅でした。今回は出雲市駅であり、次は何処になることやら。
今回は臨時のやくも16号となります。11:43発であり、倉敷には14:35着と3時間弱の振り子旅となります。振り子式電車のアップデート且つコンプリートでもあります。
先代は国鉄色からさまざまなカラーリングで関心を持ってもらうようにしていましたが、今後はやくもブロンズが定着していくことでしょう。やくものブロンズ以外の色が意外と高貴であります。
と言う事で1号車半室のグリーン車に乗り込みます。この辺りは西日本と言った雰囲気であります。
グリーン車のシートは富と長寿の象徴とされる亀の甲羅をイメージした「積石亀甲」模様にベースカラーは黄色となっています。西に黄色と風水で聞いたことがありますが、西に向かう列車でもあるのでそうしているのかもしれません。
窓の雰囲気はE351系をどうしても思い出してしまいます。
シート配列は1-2配列と半室構成ながら豪華であります。このあたりも高速バスとの差別化を感じます。シートはスペーシアXのプレミアムシートを意識しているようにも感じます。ちなみにスペーシアは電動リクライニングでありますが。
ちなみに1列席が宍道湖ビューであります。岡山までの道中だと約3分の1が宍道湖ビューとなります。
半室なのでグリーン車はみずほのグリーン車みたいな感じであります。まあ、車端部であり、コンパートメント席がアブソーバーとなっているので入ってくる人はいないので静かであります。
プライバシー感のあるシートバックと最近は当たり前になりつつあるヘッドレストが装備されていました。グリーン席もテーブルはシートバックであり、広々としていました。
出雲市を出発し、10分程で宍道駅に到着します。木次線との乗換駅でもあります。時間はかかりますが、再び木次線乗ってみたいところであります。砂の器を視ながら。
宍道駅を過ぎると宍道湖が見えてきます。それとともにスピードが上がり、振り子の本領が発揮されます。並走する自動車をビュンビュンと抜いていきます。天気はあいにくで遠くが曇っています。
そして、この辺りが最高速度の120km/hで走行しており、273系の醍醐味と言えます。約30年前にスーパーあずさで諏訪湖沿いを通過した記憶がなぜか呼び戻ります。
やくもで高速な走りは山陰本線であり、このあたりの傾きは無段階シルキーと言えます。N700Sよりもシルキーと感じるところもあり、アクチュエーター音もしないのが余裕を感じてしまいます。振り子式は複雑ですが、効果は大きいのかもしれません。
米子に停車し、次は伯耆大山(ほうきだいせん)に停車かと思うと通過していきます。このあたりから中国山地越えとなります。根雨(ねう)駅に停車すると益々、険しさを感じます。雪なのか霰なのか不明ですが、畑にうっすらと積り、今年一番冬らしい景色を感じました。12月に日本海側に来ると季節の変わり目を感じられて、良い意味で年を重ねられると感じます。
そして、新見駅に到着であります。出雲市駅から2時間が経過し、倉敷まではあと1時間ほどの旅程です。新見駅と言えば、芸備線と姫新線の列車が結節する駅でもあり、以前にJR乗り潰しの旅で立ち寄った駅であります。懐かしい。
ハプニング
とそんな思いに浸っていると車内放送であります。この先で人身事故発生のため、しばらく新見駅に停車しますとのことでした。新見駅には自分を引き付ける引力があるのかなと思いつつも、倉敷駅で50分の乗継で空港バスに乗る予定があるのは絶望的となってしまいました。
出雲市方からのやくもと岡山空港への空港バスは岡山駅も倉敷駅も乗り継ぎは微妙であり、今回は1時間近く余裕のある乗り換えを選択しましたが、まさかの人身事故でそれさえも崩れてしまうのか思ってしまいました。飛行機の遅延で今年は結構、嫌な思いをしており、JRまでそうなのかと感じてしまいました。
いつ出発するかわかりませんが、カメラ片手にホームを歩いてみます。すると、いつ出発するかわからないので車内で待つようにと言われます。さすがに改札外には出ないので、4両編成を見終えて、車内に戻ります。
すると、間もなく発車いたしますというアナウンスが流れ、ドアが閉まり出発となりました。15分ぐらいの停車だったでしょうか。これだと、倉敷で空港バスには乗り継げることとなります。
中国山地越えが振り子式必須の様ではありますが、川沿いの走行の速度は70lm/h前後でした。本則はいくらなのだろうと感じつつも、先代の381系と比較すると明らかに快適なので黙ります。山陰本線含めてトータルでの快適さと言うのを感じました。
木野山駅を通過すると備中高梁駅に停車となります。備中高梁を出発すると倉敷まで20分であります。長いような短いような3時間でありました。この辺りまで来ると振り子というよりは普通の特急であります。
出雲市から3時間2分(人身事故の遅延があったので3時間20分程)で倉敷駅に到着となりました。やくもはこの後、いそいそと岡山駅に向けて出発していきました。
山陰とはうってかわり、明るい倉敷駅であります。倉敷駅での乗り換え時間中にアウトレットで買い物と考えていたのですが、その夢は破れ、トイレとバス待ちのみとなってしまいました。旅はハプニングが多いと最近感じるところであります。まあ、それも旅でありますが。
最後に
2024年気になっていた車両に乗れて、2024年も年越しが出来そうであります。これにて振り子車両もコンプリートというかアップデートであります。
しかし、273系の性能と言い、豪華さと言い、昔のJR西日本とは比較にならないくらいであります。複数の新幹線路線を持ち、安定してきたのか不明でありますが、高速バスとの競合に向かい合うようになったようにも感じます。
今回はやくもに乗るために、米子空港に行き、岡山空港から帰京しましたが、こうした旅も出てくるかもしれません。