奥出雲を走る木次線と福山まで山間部を走る福塩線を利用して、中国山地を越えてみましたので、お伝えします。
松江駅からスタート
昨夜、米子空港に着いてリムジンバスが米子と松江に行くのはあまり時間が変わらないという事で、少しでも宍道駅に近い、松江に滞在します。夜間でしたが、ベタブミ坂を通り過ぎたりと意外と楽しめました。
今日最初の乗車はスーパーまつかぜであります。見た目とは裏腹に野太いエンジン音と時折、雄叫びをあげながら爆走する キハ187系気動車であります。
同区間は電車のやくもでは乗車しましたが、 キハ187系で宍道湖沿いを進むもなかなかであります。20分程で宍道駅に到着します。
出雲空港からも近く、JAL派だったらこっちを利用したことでしょう。
木次線
木次線(きすきせん)は島根・宍道湖駅から広島・庄原の備後落合駅を結ぶ81.9kmのローカル路線ですが、途中にはスイッチバック駅があり、標高700m台を走る部分もあり、絶景が見られます。
全線通しで走る列車は1日3往復しかなく、さらに芸備線との接続も考える必要があります。そうした事から、車窓と沿線を楽しむとなると時間の組み立て方が鍵となる路線でもあります。
今回は全線通しで備後落合駅まで行ける11:27宍道発より一足先に出雲横田に行ける9:09発に宍道駅から乗り込みます。
乗車して意外と困ったのがスマートフォンの電波であります。トンネルでなくても山間では通じないところもあり、車窓に専念となります。
路線の名前にもなっている木次駅に到着です。時刻表では別れていますが、25分後に同駅出発の出雲横田行は同じ列車であります。
木次と言う名前はミルクコーヒーぐらいしかわかりませんでしたが、来て見ると色々と知ることがあります。
改札を出て、目の前にあるショッピングセンターに行ってみます。同線のエキチカにはコンビニはほとんど存在しないため、飲み物を調達します。
時間通りに横田に向けて出発します。
温泉とそば
今回、一足先に出雲横田方面を目指したのは出雲横田辺りまでの奥出雲の各駅から比較的近いところに温泉があり、そして、出雲そばの本場でもあり、時間をかけても途中下車してみたかったからであります。奥出雲と言う地名が魅力的であります。奥は極みとかに近い意味がありますが、普通に考えると奥地に行くほど何もなくなります。何もないところに何かがあるから、人は旅をするのかもしれませんが。
木次駅か出雲八代駅か亀嵩駅が温泉とそばが堪能できそうなところがあります。出雲八代駅が温泉まで歩いて行けるくらいでありましたが、亀嵩駅にしてみます。
同駅には駅と直結(今風な言い方ですが)した扇屋そばがあります。そして、タクシーでアクセスとなりますが、亀嵩温泉 玉峰山荘にて日帰り温泉を営業しています。
そして、何よりも松本清張の『砂の器』にも描かれている場所であり、記事をまとめるあたり、映画を観てみました。松本清張氏は同線を旅している時にこの作品を着想したという事らしいです。
映画では本当に大霊界に行ってしまった人と後に千葉県知事になる刑事バディがある殺人事件を追っていくと複雑な生い立ちのピアニストに辿り着きます。
映画では秋田の本荘、石川、伊勢、山梨、そして、亀嵩と全国各地が出てきます。刑事が亀嵩に辿り着く旅程が何とも痺れる画でありました。また、松竹映画なので国民的大スターも出ているというのが昭和らしいです。
スマホのエリアであり、出雲三成駅停車時に列車内からタクシー会社にて亀嵩駅まで手配。もう少し早く配車していれば駅で待たずに温泉に直行できたのですが、10分程度待ちます。その待ち時間にそばを食べるか、湯上りに食べるか迷い、楽しみは後に取っておくことに。
タクシーに乗り込み、帰りのタクシーも手配します。この辺りの方言は東北の方言に似ているという事でしたが、時代が変わったのかそんなことはありませんでした。
温泉まで10分足らずで到着、迎車込みで1,950円、帰りもそうでした。青春18きっぷ1回分を超過してしまいましたが、今回は特別ということで。
玉峰山荘は立派な建物でとてもきれいであります。日帰り温泉の受付はフロントを通り過ぎた温泉の入り口にあります。
タオルを買い、いざ温泉に。とても広々としていてすっきりとしていて清潔感があります。露天風呂にサウナに水風呂もあり、泊まりたいくらいでした。泉質はアルカリ性単純泉と肌に効きそうな温泉でした。
同ホテルホームページより
1時間後で手配していたタクシーに乗り込み、再び駅に。列車出発まで後25分というお昼ど真ん中の時間でしたが、平日のためか待ちなしでお店に入れました。
一番シンプルな割子そぱを頼みます。5分もかからずで三段の割子そばが出てきます。そばなので時間がかかるということないのですが、列車に間に合うか気になるところでしたが、蕎麦湯もゆっくり飲んでトータル15分くらいでした。
つゆはかなり濃いめであり、次の段に引き継ぎが出来そうでもあります。
食後はホームに佇み待っていると12:50発の備後落合行きがきます。列車が来ると蕎麦店主が事前に注文されたそばか弁当を列車に持って行きます。
列車で食べるのも良いですが、ちゃんとした器で食べた蕎麦は格別でした。途中下車してよかった旅です。
スイッチバック
列車は珍しく2両編成でありましたが、出雲横田駅で切り離し、備後落合までは単行となります。平日ではあるものの、ほとんどが観光客というか鉄欠乏症の人であり、鉄道話に集中する人、時刻表を見る人、動画を撮影する人と似た人ばかりでした。
出雲横田を出発してからはカーブは多いもののそれほど勾配はきつくなく、着々と進んでいきます。
そして、まず、一段目とも言える出雲坂根駅に到着します。すれ違いとかはないのですが、16分の停車であり、大撮影大会が始まります。
駅舎は九頭竜湖駅にも似た印象ですが、あちらは道の駅やコンビニで賑やかですが、こちらは湧水を酌むぐらいしかなく、ひっそりとしています。


駅の前にはこの後に見どころとなる国道314号が走っています。山側に歩いてみると赤い大橋が見えます。
そして、列車は13:50に出発します。二段目のスイッチに向かい、雪国らしく分岐はシェルターで覆われています。
そして、二段目のスイッチに到着です。割子そばは三段でしたが、こちらは二段でお終いであり、後は山腹を縫うかのようにひたすら登っていきます。
このまま脱線したら、はるか崖の下に転落してしまいそうなところをゆっくり進みます。
三井野原駅まで八つの坂根トンネルがあり、どこまで登っていくのかと思うくらい登っていきます。
時折、国道314号奥出雲おろちループが垣間見えますが、なかなかゆっくり見せてくれません。
この後、列車が登り切った感があるくらいになると奥出雲おろちループの橋がはっきり見えます。
国道はクルクル回っているのですが、木次線も18分かけてスイッチバックと大きく廻りながら登っていくというのが実感できます。
スキー場のある三井野原駅から川沿いをひたすら下り、備後落合駅に到着です。
再び芸備線
備後落合駅に到着です。乗り換えのために別ホームに行くと寒色系の帯と暖色系の帯のキハ120系が並んで待っています。この景色、テジャビュかなと思いましたが、ちょっと前に芸備線と姫新線で中国山地を縦貫した時と全く同じ時刻でありました。
今回は東ではなく、西に進みます。


列車は三次まで行きますが、備後庄原では長めに停車します。広島らしくカープモニュメントです。カープラッピング列車には遭遇できませんでしたが。。。
塩町で乗換待ち
今回のきっぷは青春18きっぷなので、行き過ぎても余計な費用は掛からず、このまま沿線最大の街の三次まで行っても良かったのですが、時間が中途半端になるため、塩町で乗換待ちをします。
そして、ホームを降りると、学校が終わった学生で溢れかえっています。三次行きの単行の芸備線は突如として満員列車となっていました。降りて回避できたのは運が良いかもしれません。
駅から1km弱歩いたところスーパーがあり、そこを目指します。黄昏ののどかな景色が広がっています。スーパーにはイートインコーナーがあり、そこでコーヒーを飲みつつ、パソコンを開けて作業します。駅で待つよりも暖かく、便利であります。
この後は駅に向かいます。1時間前は学生で溢れかえっていたホームは誰もいません。日が落ちて寒さが身に染みてくると遠くから列車の音が聞こえ、列車が近づいてきます。
福塩線
福塩線は名前のとおりで、福山から塩町まで伸びる路線であり、途中の府中駅までが電化されており、そこから先は非電化の区間となっています。
塩町から乗ると芸備線や木次線と同じようなキハ120形であります。芸備線の分岐を超えて福塩線に入っていきます。
もう辺りは暗くなり、外は何も見えないですが、山越えなのかゆっくりゆっくりと走る区間が多い路線でもあります。
府中が近づいてくると長大トンネルに突入します。トンネルの名前は八田原トンネルであり、ダム開発のために作られたトンネルであります。
長さ約6kmとローカル線には似つかわしくない直線区間が続きます。最近では吾妻線の八ッ場ダム開発による、線路付け替えが記憶に新しいところでありますが、ここでも線路付け替えがあったというのは来て見ないとわからない事実であり、体を張って得られる知見でもあります。
このトンネルでは2022年3月末までトンネル内もイルミネーションしているようなので行って見るのも良いでしょう。
列車は府中駅に到着です。府中駅からは電車となり、夕方という事もあり6両編成ですが、福山に向かうのでガラガラです。
連結部分のライトが双方点灯しているのがシュールであります。連結部分の隙間から線路に転落しないためなのでしょうか。
広島まで
福山城が見えれば福山駅であり、これで福塩線も完乗となりました。ここからは山陽本線で一路、広島に向かいます。
まずは尾道と三原の間にある糸崎まで岡山カラーの列車に乗り込みます。福山から糸崎までは大きな街が続き、帰宅時間帯でもあるため、利用者は多いですが、それでもきちんと座れます。
尾道を過ぎると糸崎は近く、乗り換えに備えます。糸崎駅ホームの向かいには広島行きの列車が待っています。こちらも6両編成であります。
ここからは広島車となり、新しいRed Wingです。岩国から糸崎辺りまではほぼ新しい車両に置き換わっており、普通列車の旅でも広島辺りは快適であります。
リムジンバスを使わなければ同駅が広島空港までの要衝となる白市駅を発車します。
山陽本線はかつての幹線もあってか、福山から広島までの距離は100kmを超えるのですが、普通列車では2時間足らずで着いてしまいます。
弾丸列車でありながら、停車時間が長く、駅でなかなか良い接続に遭遇しない新幹線こだまよりも効率的かもしれません。
夜9時を過ぎていますが、広島駅は結構混んでいます。今日は途中で温泉に入ったりしたものの、やはり一日中列車は疲れ、エキチカのホテルですぐに就寝でした。明日も一日中、線路の上です。
最後に
今回は山陰から山陽に一気に中国山地を駆け抜けた旅でありました。駆け抜けるというには随分ゆっくりであった区間はありましたが、中国山地の山並みと出雲ぞばに温泉と乗るだけではない一日でした。
明日以降も旅は続きますが、今日とはまた違った世界になりそうです。
今回乗車した路線
木次線 宍道~備後落合 81.9km(完乗)
福塩線 塩町~福山 78.0km(完乗)
山陽本線 福山~広島 103.0 km