JR東海が2025年に同管内を普通列車乗り放題の切符を発売しますが、それを紐解くと旧・青春18きっぷで一番儲かっていたのではと考えてみましたので、お伝えします。
JR東海☆夏の乗り放題きっぷ・発売
JR東海は2025年6月20日にJR東海☆夏の乗り放題きっぷを発表しました。概要は以下のとおりです。
商 品 名:「JR東海☆夏の乗り放題きっぷ」
発売条件:「EXサービス」で熱海駅~米原駅を着駅とする東海道新幹線を予約者限定
○利用期間:2025年7月19日(土)~9月10日(水)
○発売期間:2025年7月 4日(金)~9月 9日(火)
○有効期間:2日間
○価 格:おとな 3,900 円 / こども 1,900 円
○発売方法:「e5489」(JR西日本ネット予約)限定発売
※「EXサービス」で熱海駅~米原駅を着駅とする東海道新幹線をご予約後、「EXサービス」にログイン後の画面からリンクする「EX旅先予約」から「e5489」をご利用する場合に限。
○受取箇所:JR東海の「きっぷうりば」及び改札の外にある「5489 サービス」の表示のある券売機
※きっぷの利用開始日当日まで受け取り可能。
※熱海駅はJR東海の新幹線乗換口「きっぷうりば」で受け取り可能。
※国府津駅・甲府駅・辰野駅・塩尻駅・猪谷駅・新宮駅では受け取りできません。
○利用区間:JR東海の在来線全線乗り放題
※新幹線を含む特急列車、急行列車等はご利用いただけません。利用する場合は別途運賃・料金が必要です。
フリーエリア
JR東海ホームページより
フリーエリアについてはJR東海の在来線がすべて2日間乗り放題であります。ただし、在来線特急、「しなの」「伊那路」「ふじがわ」「ひだ」「南紀」「しらさぎ(一部区間)」「踊り子(一部区間)」は特急料金だけでは乗車不可となっています。
ただし、切符の受け取りは熱海と米原を除き、JR東海との境界駅である国府津駅・甲府駅・辰野駅・塩尻駅・猪谷駅・新宮駅ではできないとのことです。
まあ、御殿場線の松田駅には5489端末があるので受け取ることが出来そうです。
購入イメージ
JR東海ホームページより
EXサービスにて熱海から米原間の各駅が着(目的地)となる切符を購入するとその後に今回の「JR東海☆夏の乗り放題きっぷ」の申し込み画面への動線バナーが出現するとのことです。
上図の例画面では東京→名古屋を自由席片道にて購入しても、利用できるようであるので新幹線は一区間で、熱海、三島、新富士、静岡、掛川、浜松、豊橋、三河安城、名古屋、岐阜羽島、米原、いずれかが到着駅となっていれば良いので、JR東海エリア外からのこのきっぷを利用すると「小田原→熱海」や「京都→米原」でも良いですし、JR東海内であれば「静岡→浜松」と言った区間でも利用可能なので、JR東海エリア以外の人でなくてもJR東海内を広く回るのには適しているかもしれません。
また、EXは自由席で、夏の乗り放題きっぷ は5489端末で紙発券となると、同日で利用が前後しても利用はできそうであります。
コメント
今回の切符を見ると夏の青春18きっぷ期間にぶつけてきており、土日問わず連続する2日間が3,900円(1日あたりに換算すると1,950円)で神奈川県から滋賀県までアクセスできます。北を見れば富山、南を見れば新宮と和歌山近くまでも行けるきっぷであります。なかなか普通列車で行くと言うのは大変ですが。
最初のエリアまでの到達地域に東海道新幹線を入れているのは隣接する他社(JR東日本、JR西日本)への考慮と言うところかもしれません。
JR東海☆夏の乗り放題きっぷには☆が入っており、つのだ☆ひろ、みたいと言うのが第一印象であります。ダイアモンド✡ユカイとは違うようです。
旧・青春18きっぱー(東名阪)利用者には朗報?
以上のようにルールから、最安で東名阪の各移動を1泊2日で移動できないか考えてみました。東京在住と名古屋在住と京都在住と大阪在住で考えてみました。
朝早く出発して、夕方に目的地に到着して、翌朝には戻るために、再び早く出発して出発地には夜に到着するルートが想定されます。目的地で推しのイベントがあるような移動費を抑えたく人、頻繁に移動したい人には良いかもしれません。
表の☆マークはJR東海☆夏の乗り放題きっぷの1日あたりの料金です。実際に1日しか利用しなくても3,900円かかるのでご注意ください。
(幹)は新幹線の略です。
東京在住
JR東日本を目の敵にしたわけではないですが、東京都心から小田原までの交通費を考えた場合、普通運賃で小田急が安いのでそれに則り計算してみました。
同切符の購入ルールに従い、小田原から熱海間は自由席新幹線に乗車します。あとは米原以西の京都、大阪まで普通電車で移動となります。米原以西はJR西日本に課金となります。
復路は沼津まで往路と同じですが、御殿場線で松田まで行き、神奈川県までフリー切符で行きます。そこから歩いて行ける新松田駅まで行き、小田急で新宿に出ると言うルートです。小田急課金は800円で済むのでコストを下げられます。熱海経由よりはダイヤは別として合理的です。
横浜方面や千葉方面の人だとJR東日本の東海道線の方が頼りになるので何とも言えませんが、最安ルートと言えます。
名古屋往復は6,900円とぷらっとこだまや東名バスよりも安くなります。京都も往復で1万円以下と安いです。
大阪については梅田で算出していますが、難波であれば名古屋から近鉄の株主優待を手に入れられれば2,200円/片道なので、時短で難波方面も可能となります。
名古屋在住
名古屋から東京を目指す場合、JR東海内での新幹線利用が最低1駅間必要となります。
これはディスアドバンテージのようにも見えますが、かったるい区間である浜松と静岡間を新幹線でwarp出来る特権があるとも言え、東京が近づくと言えます。
そういう意味ではバスに座っているばかりよりは安いですし、メリットはあるかもしれません。
記載されているルール的には、フリー切符がEX新幹線チケットよりも先出となるのですが、紙発券とIC発券は日付単位のようなので、不便益もあるので可能と見えます。
京都在住
京都の人が金曜日に「そうだ東京に行こう」と思って計算したものです。行きは米原まで新幹線で行き、先述のとおり、フリー切符で最東端までアクセスできる松田まで行き、小田急の新松田から新宿に至るルートです。
御殿場線と言うのがボトルネックとなりそうですが、比較的余裕があるのではないでしょうか。京都と米原間はJR西日本課金となりますが、新快速もあり、一番メリットがあるようにも見えます。
大阪在住
大阪在住の場合は、行きは京都で新幹線に乗り換えるか、新大阪→米原まで運賃・新幹線特急券が別途必要となります。新幹線は1駅間の特急料金は安いのですが、2駅となるとかなり高いので、大阪は不利と言えます。
ただ、新幹線着駅がJR東海管内の米原と熱海間ということで、フリー区間内の新幹線区間を購入して同切符を得て、大阪から米原までJR西日本の割引切符を模索すると言う手もあります。
また、これらと組み合わせて、大阪との往復を名古屋経由の近鉄往復と言うのも最安に近い額で利用できると有りかもしれません。
いずれの都市もかつての青春18きっぷには及ばない、且つ、時間はかかるものの高速バスやLCCよりは安い結果となり、JR東海の考えがどんなところにあるのか考えてしまいます。
東海道本線のことを考えると
以上のように、東名阪の1泊2日移動では、旧・青春18きっぷにはかなわないものの、バスやLCCよりも安く、さらには青春18きっぷの期間よりも期間は広くなっています。そして、JR東日本のように土日を絡めなくとも連続する2日と言うのもかなり寛容と言えます。
旧・青春18きっぷの利用を考えると時間のある人が1日でどれだけ進んで元が取れているみたいな指標となりますが、実際の利用者数を考えると東名阪の利用が圧倒的に多かったのではないでしょうか。
1日2,500円程で東京から大阪まで移動できるとなるとバスよりも安く、そのシーズンには大変需要があったと思います。
それが制度改正で3日間連続、5日間連続となるとバスに流れているのは自明であり、青春18きっぷは需要は蒸発してしまったのかもしれません。
JR東海としては新幹線の一本足打法で連結利益には軽微で左うちわで、他社のJRから改悪しようと言われても、すまし顔でOKと言ったのかもしれません。
ただ、採算は別として、利用者実績としてはこれまで旧・青春18きっぷでの需要をしていた時期の実績が激減してしまい静岡支社が音を上げたのではないでしょうか。
そうしたことから、学生の帰省時期と重なったり、家族連れの移動が重なる時期と言う事もあり、東海道線をフルに利用できる過去の青春18きっぷに近いものにしたと言えます。
ただ、先述のとおり、近隣するJR各社に考慮して新幹線利用を条件をつけたのかもしれません。
JR東海の旧・青春18きっぷの儲けは
旧・青春18きっぷは5枚つづりで約12,000円であり、期間中はどの日に利用しても良く、自動改札の通過はできないので有人改札での検札のみでした。
さらに、無記名式のため、1回利用して転売して、それを購入しても不法として問われることはありませんでした。
しかし、2024年に制度改革を発表して自動改札通過が可能となり、連続した3日または、5日連続という新・青春18きっぷとなりました。
あわせて、自動改札通過により、動態が把握できるようになり、JR各社でのレベニューシェアがより実態に即した制度に変えた可能性もあります。これまではどのような分配をしていたか不明ですが、発券された駅の管轄の各社と言うものが鍵となっていたかもしれません。
まったく性質の変わった新・青春18きっぷでは北海道や西日本での利用が多くなり、そうした会社でも絶対数が少なくなり、収支としては前年比マイナスと言えますが、JR東海としては新幹線の利益からする軽微とは言え、全くなくなってしまったのではないでしょうか。
別に儲からないから無視して良いのではと考えつつも、新幹線で潤っている間に、リニアはもちろんですが、地域間輸送もBCP的な観点や地方自治体からの要求も包含するような意味で輸送実績は確保しておきたいと考えているのかもしれません。
まあ、普通の事業者は儲からないので、廃止しますと経費削減をするのですが、逆の動きがあるのであれば、不思議なところです。
この辺りは、都心で莫大な土地を再開発をし、人口1,400万人の首都東京にて電子マネーで手数料が入ってくることを考えると、ここ100年ぐらいは鉄道収入が減り、鉄道事業を四捨五入しても、生き残れるJR東日本とは対比的なのかもしれません。
新幹線とリニアの1本足打法がうまく行かない場合のことを考えだしているのかもしれません。
最後に
JR東海☆夏の乗り放題きっぷは今年売り出しているJR各社の普通列車限定乗り放題では一番、コスパが良く自由が利くきっぷと言えます。
東名阪では圧倒的なシェアがあるJR東海にとって、以前であれば、新幹線一択でしたが、どうもそうではないようです。リニアの開通が遅くなる点やその間に新東名が全通したり、首都東京の国際都市としての再開発が進んだりと、東名阪の鉄道需要が変わった場合のことも考えて始めているのかもしれません。まあ、在来線で格安需要を支える会社になるのかは不明でが。
個人的には若い頃のように、夏休みに、暑い中、早朝に普通列車で乗り継いで、車窓に夏空を見ながら関西まで移動した旅を再びと感じてしまいました。年寄りの冷や水かもしれませんが。