ANAグループの2023年度輸送事業計画を考察してみましたので、お伝えします。
ANAグループ2023年度輸送事業計画概要
ANAグループ2023年度輸送事業計画の概要は以下のとおりです。貨物便は割愛します。
国内線(ANA,Peach)
国内線は今年度(2022年度)を上回るる座席キロ供給を計画し、以下を中心に取り組み需要を以前のように回復するようです。
- 大型機材(773,772)を活用
- 柔軟な臨時便の設定
- Peachを含めた需要の高まりに対応
ANAにおいては、国内線については増便となる路線があるものの、期間増便という体で輸送力を拡大する路線が多いようです。
Peachにおいては、減便運休が目立ち、一部の運休した路線をANA便が増設したりと需要回復で利益率を拡大させるようにも感じます。
国際線(ANA,Peach)
国際線は日本入国規制の緩和を背景に伴う渡航需要(インバウンドと明記はありませんがおそらく、こちらがメイン)に以下を中心に取り組み、積極的な路線展開を図るとのことです。
- 成田発着を羽田発着シフト
- 欧州路線の定期便(毎日運航ではありませんが)の拡大
- 豪州線の増便・路線拡大
- Peachのバンコク線のデイリー運航
中国路線については両国のお上の沙汰次第という事でありますが、いずれも調整中ですが、大都市(北京、上海、広州)などはかなりの頻度で運航されそうです。ただし、すべて成田発着であり、貨物需要をカバーしているようでもあります。
ソウル線はデイリー3便が復活しそうであります。台北は桃園空港はなく、羽田⇔松山空港のみであります。
東南アジアはほぼ現状通りであり、後述する一部路線について増便が図られます。
オーストラリアについても後述しますが、シドニーは行きやすくなりますが、距離が長いため、燃油サーチャージ次第とも言えます。
北米はほぼ、以前と同じ状態になり、ANAが描いていた羽田シフトとなりそうであります。東南アジアキャリアに先駆けて際際需要の取り込みが伺えます。
ホノルルについてはデイリー3便は行くか不明ですが、フライングホヌの毎日運航の可能性はありそうです。
欧州は増便とはなるものの、北極圏を飛んだり、中央アジアを飛んだりするため、まだ文字通り遠さを感じるルートと言えます。
2023年度計画での特徴的なルート
2023年度の計画で特徴的なルートを国内線と国際線でピックアップしてみました。
国内線
成田⇔札幌が復活
0便→1便(毎日運航)
ANA運航便として成田⇔札幌が復活します。大体の都市は羽田からの国際線となっているため、あまり影響が少ないかもしれませんが、未だに成田発着の国際線も有り、そうしたところではPeachのように時間と荷物に気を遣わずに利用できるANAは大きいかもしれません。
名阪と松山便の増便
大阪伊丹⇔松山(+1便:9往復/日)
名古屋⇔松山(+1便:3往復/日)
トクたびマイルでよく見かける路線ですが、新幹線+在来線特急は瀬戸大橋の景色は良くても、岡山での乗り継ぎが面倒なのかもしれません。
関西⇔札幌の増便
大阪関西⇔札幌(+1便:4往復/日)
大阪関西から札幌もよくトクたびマイルで見かけますが、一定の需要があるのかもしれません。仮に需要を満たせなくてもトクたびマイルで合格点に持っていくと言う方法が確立されたのかもしれません。
ただし、ゴールデンウィーク前とゴールデンウィーク後から夏が始まる前は期間減便があるため、100%増便と言うわけではないようです。
セントレアの減便が目立つ
セントレア(名古屋)発着では特定路線で期間増便はあります。
中部⇔札幌、鹿児島、沖縄は期間増便となりますが、いずれも繁忙期に限定されています。
一方で下記の路線は減便となります。
中部⇔秋田、仙台、新潟、熊本、宮崎は1便ずつ減便され、新潟に至っては運休となってしまいます。宮崎も0便になりますが、お盆時期は季節運航便として運航されます。
ソラシドやAirDOの選択肢も有り、コードシェアとして残るのか不明ですが、新幹線でつながる都市は在来線で乗り換えが必要な都市とは対照的に厳しいのかもしれません。
Peach国内線は減便だらけ
Peachについては以下の通り、減便や運休であります。
■減便
関西⇔長崎、宮崎、鹿児島、(▲1便)奄美(▲1便/週)
福岡⇔沖縄(▲1便)
仙台⇔新千歳(▲1便)
鹿児島以外は新幹線で接続されていないので、そもそもの需要が少ないのかもしれません。奄美については週1便が減る形ですが、夏の時期はデイリーになります。
ANA国内線で触れましたが、福岡⇔沖縄はANAでは+1なので、実質Peachに変えたものを元に戻すと言えます。
■運休
成田⇔女満別、釧路、長崎(▲1便=0便)
女満別と釧路は7/1~10/28は季節運航されますが、冬場は実質撤退とも言えます。長崎については羽田路線で十分と言うことかもしれません。
たしかに、同路線を利用してみると釧路路線は平日は投げ売りをしても、空席が目立つので、コストだけがかさむ構造が想像され、帯広の方が需要があるようにも感じました。
と言うことでPeachは採算にシビアで儲からないところは切り捨てという事が見えます。おそらく、国際線にリソースをシフトする傾向にあるのかもしれません。
国際線
続いては国際線で特徴的な路線をピックアップしてみました。
シドニー路線は念願の昼夜各往復のデイリー体制
シドニー路線と言うと羽田からもシドニーからも夜行便のみであり、それはそれで時間の活用はできていたのですが、昼行便が毎日往復となる計画であります。
JALとバチバチに競争する路線でもあります。シドニーに宿泊しないで東京羽田に戻るシドニータッチの時短もできそうであります。
ただし、燃油サーチャージは欧米と同等の徴収がされるため、海外発券かつ、最終目的地をロンドンやアメリカ各地にしないといけないと言うような対策は必要であります。
パース路線は秋以降
そして、2023年9月以降と先ではあり、且つ、成田発着ではありますが、成田⇔パース便が週3往復で復活しそうであります。シドニーと比較すると接続では融通は効きませんが、西オーストラリアも良い所なので再び行ってみたいところであります。
ジャカルタ路線の増便
ジャカルタ路線は現在、羽田と成田、それぞれ毎日1便ずつ運航されていますが、加えて羽田発着で週5便が追加となる予定です。ジャカルタはいまいち、マイル修行では活路がありませんが、ジャカルタ発券でセール運賃が出ると活路が出てくるかもしれません。こちらもほぼ、以前に近いかたちになります。
北米は以前よりもパワーアップか
北米路線において毎日運航されるのは下記のとおりです。
ロサンゼルス⇔東京(成田/羽田)毎日3便
サンフランシスコ⇔東京(成田/羽田)毎日2便
シアトル⇔羽田 毎日1便※
ワシントンD.C.⇔羽田 毎日1便※1
ヒューストン⇔羽田 毎日1便※1
シカゴ⇔東京(成田/羽田)毎日2便
バンクーバー⇔羽田 毎日1便※
メキシコシティ⇔成田 毎日1便
※成田から羽田に移管
※1 毎日運航に増便の上、成田から羽田に移管
北米(アメリカ、カナダ、メキシコ)についてはANAが2020年前に描いた姿になりつつあります。機材も77Wが多く、新仕様のファーストとビジネスクラスも多く運用されており、国際線の稼ぎ処と言えます。全都市が毎日運航であり、すべて羽田発着に切り替えであります。
唯一、サンノゼ線は未記載でありますが、サンフランシスコ線で既に増便したのが、それをカバーしているので合理化していると言うことかもしれません。
ヨーロッパはまだ遠い
ヨーロッパ路線での増便は下記のとおりです。
羽田⇔ミュンヘン +週3便
成田⇔ブリュッセル 週2便
羽田⇔ミュンヘンは0から週3便の増加であります。フランクフルトではカバーしきれない需要をカバーすると言えますが、羽田からの実飛行距離はANA最長にもなりそうな気配があります。成田⇔ブリュッセルはワクチンの運び屋であり、容量に変化はありませんが、晴れて定期便になりそうであります。
パリ線は調整中という事であり、増便となるかは期待はありますが、乗り継ぎとなると結構厳しいので、パリ自体に行きたい人が増えないとなかなか便数は増えないかもしれません。以前に744が就航していたのは今となっては驚きであります。
後はフランクフルト線に新仕様のB777-300ERが投入されるとかなりメリットはあるのですが、そんなにANAにはB777-300ERはなく、結構厳しいかもしれません。しばらくはルフトハンザの欧州ネットワークと税金等の安いと言うメリットでフランクフルトを利用することとなりそうです。
デュッセルドルフやストックホルムやミラノやイスタンブールと言うのはまたまだ先のようであり、ヨーロッパはまだまだ遠いようであります。
アメリカは行きやすいのですが、入国の際の書類が今や日本入国よりも面倒であり、入国時の質問も多く、相反してほぼ何もない欧州の方が楽であり、原油価格次第と言ったところであります。
Peach国際線
Peach国際線については関西⇔バンコク線がデイリー化する計画であります。週6便から週7便であり、このほか、羽田⇔仁川線も真夜中でありながら好調のようで、国際線かつ、インバウンドで儲けたいところと言えます。
Air Japanも有ることからPeachとしては国際線はどのようにするのか不明ですが、韓国や台湾などは積極的に今のうちに攻めて欲しいところであります。
国際線としての第2ターミナルはオープンするのか
国内線と国際線で発着回数が羽田空港で増えると国内線はターミナル2で何とかなりそうですが、国際線はターミナル3では無理が出てきそうであります。
羽田におけるANA国際線の数は決して少なくないので、他社への影響も考慮すると2020年3月末に開業して、すぐにクローズされたターミナル2の国際線エリアのオープンにも期待が持てます。
個人的には開業の日に行ってみたのと、半沢直樹のロケシーンでしか見たことがないので、国際線搭乗となると封切りと言えます。
ターミナル3の出国時のセキュリティチェックは以前のフルパワーではないですが、フルに持っていくまで時間がかかりそうであり、ターミナル2も要員確保が大変かと思いますが、4月くらいからは利用できて欲しいところであります。
最後に
ANAにとって、利益源泉は国内線と北米線であると言うのがわかります。それは実利的と言うよりは政策的とも言え、この路線は何としてもNo.1であることが次なる拡大を示すようにも見えます。
利用者としては利用機会が拡大し、旅行がフレキシブルになるのでメリットではありますが、インフレ傾向であり、マイルは唯一の逃避行でしたが、そのマイル数も増えるとなると外人しかメリットがないプログラムとなり、つまらないなぁと思います。