九州南部の宮崎から鹿児島にかけて走る日南線を完乗してみましたので、お伝えします。
空港から志布志に
今回は日南線の完乗にあたり、宮崎からではなく、鹿児島から目指します。日南線は盲腸路線であり、終点まで行くと同じ線路を戻る必要があります。それはそれで良いのですが、旅なので来た道を戻らないのも楽しさでもあります。
日南線は飛行機との関係も強く、志布志駅は鹿児島空港とバスの接続があり、田吉駅は宮崎空港駅まで一駅と言う、飛行機を活用しない手はない路線でもあります。
という事でまずは鹿児島空港から志布志駅を目指します。
志布志行きのバスは9:40とANA619便の到着から1時間後あります。本来はその後便のソラシド運航便が15分の乗り継ぎのため、良いのですが、満席でした。トクたびマイルであっという間に埋まってしまったようです。
鹿児島市内方面に向けてリムジンバスがたくさん出発していくので、長時間にふさわしいバスかと思うと路線バスタイプでした。しかも、結構なクラシックであります。
今回も蛭子席に陣取り、長いバス旅が始まります。
ホテル京セラの前を通過です。写真のアネックス館はどうかわかりませんが、黒川紀章氏の設計という事です。
時折、錦江湾が見えたりしますが、基本的には峠を越えて街に入り、再び峠を越えて、街と言った道中であります。峠の上に来ると山並みとその先に海が一瞬見えたりとなかなかの車窓であります。
バスは長距離ではありますが、昔の国鉄のような都市間都市間の需要をさばいているような感じであり、途中から乗車した人はすぐに途中で降りてしまうと言った感じでした。最初から最後まで乗る人は自分だけでした。
ただ、長距離で余裕時分がないのか、山道でもかなり飛ばします。そのため、蛭子席では峠道となるとかなり左右に体を持っていかれることとなりました。
ストロングチューハイを1本持って行ったのですが、3本ぐらいないとバス酔いに負けてしまうところであり、実際、下車後は下船した後のような感じでした。
富士山と茶畑のイメージが強い日本茶ですが、鹿児島のお茶は静岡に匹敵するくらいのアウトプットであり、今後は桜島と茶畑がイメージとなるのかもしれません。
やっと長かった、志布志駅に到着です。志布志駅の住所は志布志市志布志町志布志2丁目28であり、志が6つもあります。志が多いのは良いことです。
志布志で温泉
駅の前にはショッピングセンターがあり、列車待ちが出来そうです。しかし、今回は約2時間もあります。2時間もあると探してしまうのが温泉であります。
今日はとても寒く、温まりたい気分でありますし、2時間近く峠道で揺さぶられたことから、珍しくバス酔いをしたみたいであり、気分を転換させたいところであります。
駅から1.8kmのところに安楽温泉 笑がおの湯という地元の人が通う銭湯温泉があります。歩くと20分、往復で40分であり、小一時間はお湯に浸かれそうなので、行ってみることに。
途中にはSLが展示されている公園もあります。志布志駅からすぐのところであります。寒いのか2km近く歩いても汗ばむことなく温泉に到着します。
同温泉は面白いことにさつま揚げ店と一緒になっており、そのお店から大浴場に行きます。お店を入ると券売機があり、そこで入浴券を購入します。
入浴料は400円ですが、ドリンクとさつま揚げ一個がセットになった温泉セット(600円)があり、興味深いので選択してみます。
同温泉にはアメニティは一切ないので、持っていない人はタオルの他に石鹸とシャンプーも購入する必要があります。石鹸は新品まるまる一つで、後の使い道も困ってしまうので、旅行用の極小ボトルのボディソープを持っていくと良いかもしれません。
お店のレジでチケットを渡して、タオルなどを受け取り、大浴場に向かいます。脱衣場には鍵付きのロッカーがあるので、安心して入浴できます。
大浴場は銭湯そのものと言った感じで、タイルに囲まれた世界であります。構成は真ん中にタイルの浴槽と一段高いところに檜浴槽があり、サウナは人ぐらいしか入れませんがあります。そして、水風呂もあるのでサウナの繰り返しもできます。
鉄分が多い温泉ですが、とても気持ち良く、小一時間があっという間に経ってしまいました。
休憩室でドリンクセットを飲んでいる時間はないかなと思い、レジに行くと持ち帰りも可能という事で、好みのさつま揚げとドリンク(缶のお酒かペットのソフトドリンク)を選び、温泉を後にしました。
いよいよ日南線
出発15分前に志布志駅に戻りましたが、折り返し運転の調整中のため、発車5分前までドアは空きませんでした。


駅名標は潮風でかなり傷んでいます。終着駅の証かのように左側の次の駅は記載されていません。
乗車する列車は宮崎行きではなく、油津駅まで列車です。日南線は利用の少ないところでスプリットされているようです。
出発と同時に安楽温泉 笑がおの湯でテイクアウトした温泉セットであるのどごし生をプシューとさせて、エビのさつま揚げを食べます。
湯上りと歩いたご褒美なのか格別であります。
発車してすぐに志布志港が見えます。鹿児島に来てもなかなか志布志まで来る機会はないので、貴重な景色であります。
列車は高台を走り、眼下には志布志湾が見えます。これまた絶景であり、志布志まで来ないと見られない景色であります。
この後、ダグリ岬海水浴場の砂浜が見え、徐々に山側に入っていきます。


宮崎県に入り最初の駅である福島高松駅に停車します。こじんまりとした駅舎がかわいらしいです。この後、串間駅に停車し、南郷駅の先までは山間を縫うように走ります。
榎原駅で下りの快速列車「日南マリーン号」と入れ替えのため、4分停車します。日南マリーン号は名前からすると特別な車両かなと思うと普通と変わりませんでした。
列車は油津駅まで行きますが、南郷駅で途中下車します。日南駅が日南の中心地と言えますが、南郷駅は合併前の南郷町の中心駅であります。
駅舎は同地でキャンプをするライオンズカラーに塗られています。一方で油津はカープのキャンプ地であり、赤く塗らているとのことです。
駅前にはドラッグストア・コスモスがあり、そこで飲み物を調達して、約一時間後の特急列車を持ちます。
特急 海幸山幸
出発30分くらい前には特急列車が回送で入線してきます。同車両は高千穂鉄道でトロッコ型(オープンエアーな場所がある)列車でしたが、再起できない被災により、高千穂鉄道が廃線となってしまった際に、JR九州が買い取り、水戸岡氏がプロデュースしてキハ125-401・402に生まれ変わった波乱万丈な車両でもあります。
油津や日南駅が始発でいいのではないかと思う中での南郷からの始発であります。
外装も内装もウッディーな感じであります。外装は木の経年感がログハウスのように味が出ています。
ワンマン運転の2両編成で自由席もあります。なんとなく、色やマークからとんかつが食べたくなってしまいます。
シートは特急の普通車としては珍しい2-1配列であります。海側が2列で山側が1列となっています。内装もウッディーのフローリングであります。座席はJR九州オリジナルの新幹線車両や特急車両にも通じるシートであります。こういうところでコスト削減をしつつ、お金をかけるところでかけているのかもしれません。
自由席は2号車の宮崎方の三列となっています。南郷から乗車で半分以上が埋まっていました。
そのほかにラウンジ的なベンチシートも自由席扱いとなっています。土日運行では活用する人も多く、観光と生活が同居する列車でもあります。


あそボーイにも通じる陳列棚があり、記念乗車スタンプの横にはキレイキレイのシートがあります。これもあそボーイにもありました。


記念乗車スタンプを押すカードは乗車した際にアテンダントからもらえます。一列シートは置く場所が少ないですが、カクテルテーブルは結構な広さです。
南郷が始発と言うのが出発するとすぐにわかります。細田川河口に日南線の細田川橋梁が大きく架っており、ここからの景色が絶景であります。
今では陸地とつながったの虚空蔵島の先に七つ岩(ななつばえ)が見えます。何ともこの世離れした景色であります。
車窓の足下に目を向けてみると、ゆるりとした波が砂浜に打ち寄せています。渚と言うのはこういうことを言うのでしょう。
油津に向かうと海岸から離れていきます。カープファンなら知っているであろう天福球場が見えます。知らなくても、アテンダントが放送で案内してくれるので大丈夫です。
ドラッグストアで調達した飲み物も切れてしまい、車内販売で地ビールを調達します。下車するまで喉が渇くことはないのは有難いです。
列車はしばらく、山間部を走り、北郷駅から伊比井駅まで区間は長い直線区間があることを車内放送で説明があります。
そして、トンネルを抜けると再び、海に近づきます。
日南線が長きにわたって運休した場所を通過します。
まだ、応急的な雰囲気でありますが、次の豪雨時期までコンクリートで固める気配もします。ローカル線は同時多発的に被災し、特に橋梁をやられると致命的でありますが、日南線は何とか鉄道で復旧できたのは幸いと言えます。
青島駅が近くなると洗濯板が見えます。満潮に近いのか朝の青島を散歩するほどはっきりは見えません。
列車のどんどん進み、以前に日南線に乗車した子供の国を出発すると加江田川を渡り、水田と住宅地が多くなってきます。
前回、初めて日南線に乗車した田吉駅に停車し、宮崎空港行きの普通列車と交換です。海幸山幸はここから空路で帰る人にとっても乗り継ぎが良い列車でもあります。
しかし、今回は完乗がかかっているため、ラストの未乗区間の田吉=南宮崎間を乗るため、スルーです。このため、一本遅い飛行機となりました。
そして、南宮崎駅に到着です。車両基地も近いことからたくさんの列車も見られる同駅であります。これにて日南線の完乗でもあります。
南宮崎駅
その土地の地名に対して南が先頭または最後に付く駅は数多あります。南が付くと何となく力強そうであります。東から行くと南稚内、南千歳、南越谷、南浦和、南新宿、南大沢、南町田グランベリーパーク、南小谷、南安城、南今庄、南茨木、南宍道、南岩国、博多南、南鹿児島などこの他にもたくさんありますが、そうした中でも南宮崎は鉄道駅としてはその役割と認知度の高さでは全国トップレベルかもしれません。
しかし、駅舎はずいぶん昔から変わらず、となりの宮崎駅や西鹿児島駅であった鹿児島中央駅などは駅ビルが新しくなっているのと対照的です。
しかし、それでも南宮崎は時代が変わっても南宮崎であることが素晴らしいと言えます。
また、宮崎空港(KMI)が近いので、離陸していく旅客機が見えます。同空港ではよく見かけるソラシドエアのB737-800です。飛行機との共存にも近い駅であります。
黄昏な空の下には同駅付近の中心的な存在である宮交シティが見えます。鉄道とバスと飛行機を結ぶ駅を実感します。
そんなことを思いつつ、宮崎空港行きの普通列車で宮崎空港(KMI)に到着です。九州では福岡空港に匹敵する空港アクセスの良さであります。
来年には西九州新幹線で長崎空港が長崎駅から近くなることが想定されますが、それでも直結という地位は揺るがないことでしょう。
最後に
今回は日南線の完乗のため、鹿児島空港から志布志に行き、待ち時間を活用して鉄分の高い温泉に漬かり、温まってからの日南線完乗となりました。
途中からJR九州らしい観光特急を堪能した後に接続が便利な南宮崎駅で乗換て宮崎空港から再び離陸となりました。
つまり、今日は日南線のためだけの弾丸九州旅行でした。そんなことができるのも飛行機とバスと鉄道がうまくかみ合っているからかもしれません。
写真は志布志湾のダグリ岬海水浴場の砂浜でありますが、なかなかこうした景色は見られず、貴重な弾丸旅でした。
次は東京に戻るかそうでないかは次回をお楽しみにしてください。
今回新たに完乗した路線
日南線 志布志~子供の国 77.5km
日南線 田吉~南宮崎 2.0km(完乗)