イタリアのナショナルフラッグシップキャリアであるITAエアウェイズのスターアライアンス加盟について考察してみます。
欧州委員会、ルフトハンザ・グループのITA航空への参加を承認
ポイント
- 欧州委員会の競争当局は、条件付きでITA航空によるルフトハンザ航空の株式41%の買収計画を承認
- ディールは2024年第4四半期に完了予定
- ルフトハンザグループへの迅速な統合を計画
ルフトハンザ グループ、イタリア経済財務省(MEF)、ITA 航空は、競争法に基づく EU 委員会の承認を受け、ITA 航空(Italia Trasporto Aereo SpA)の少数株 41% を取得し、その後、2023 年 5 月に合意されていた 約566億円の資本拠出で Deutsche Lufthansa AG が残りの株式を取得する方向となりました。ディールは 2024 年第 4 四半期に完了する予定です。
イタリアはルフトハンザ グループにとって 5 番目の「本拠地市場」となり、収益の点では、ドイツと米国に次ぐルフトハンザ グループ第 2 位の市場となるとのことです。
買収取引完了後すみやかに、両路線はコードシェアを開始し、1,000以上の新しい乗り継ぎオプションが生まれ、特に南米、北アフリカ、中東の目的地への選択肢が大幅に増えるとのことです。
ルフトハンザ自体やグループのブリュッセル航空もアフリカ路線はありますが、ITAエアウェイズはアリタリア時代からもアフリカ路線が多いのでネットワークとしてはなかなかの買い物かもしれません。まあ、弱っている時に安く買えたのは良いですが、弱っていた原因である収益性構造改革をどのように行っていくのか注目でもあります。
欧州委員会としてはスカンジナビア航空をスカイチームに、ITAエアウェイズをスターアライアンスにすることで、攪拌を起こして、LCC台頭の中でフルサービスキャリアの再編で経済効果にしたいと言う事があるのかもしれません。
ITAエアウェイズとは
ITAエアウェイズについて、前身のアリタリア航空を含めてGPTに聞いてみました。
ITAエアウェイズ(ITA Airways)は、イタリアの国営航空会社であり、アリタリア航空(Alitalia)の後継会社として設立されました。以下に、ITAエアウェイズとその前身であるアリタリア航空について詳しく説明します。
■アリタリア航空 (Alitalia)
・設立と歴史アリタリア航空は1946年に設立され、イタリアのフラッグキャリアとして長年にわたり運航してきました。
1960年代から1980年代にかけて、アリタリアはヨーロッパおよび国際線で重要な役割を果たし、成長を続けました。
・経営難と再建2000年代に入ると、アリタリアは経営難に直面し、経営破綻や再建を繰り返しました。
2008年に一度破綻し、その後、イタリア政府と民間投資家の支援を受けて再建されましたが、再び経営難に陥りました。
・最終的な破綻2017年にアリタリアは再び破綻し、経営再建の努力が続けられましたが、持続可能な解決策を見つけることができませんでした。
■ITAエアウェイズ (ITA Airways)
・設立と運航開始アリタリアの長年の経営問題に対処するために、イタリア政府は新たな国営航空会社としてITAエアウェイズを設立しました。
ITAエアウェイズは2021年10月15日に正式に運航を開始しました。これはアリタリアの最終運航日の翌日です。
・運営方針と目標ITAエアウェイズは、より効率的で持続可能なビジネスモデルを目指しています。
航空機の更新や経営のスリム化を進め、収益性の向上を図っています。
航空連合やコードシェアパートナーシップを通じて、国際的なネットワークを強化しています。
・ブランドと遺産ITAエアウェイズは、アリタリアのブランドと遺産を継承しつつも、新たな航空会社としてのアイデンティティを確立しようとしています。
アリタリアの一部の資産や従業員を引き継ぎつつ、サービスの質や顧客体験の向上を目指しています。
ITAエアウェイズは、アリタリア航空の長い歴史と経験を基に、イタリアの空を飛び続ける新しい時代の航空会社として成長を図っています。
アリタリア航空と言うと歴史は深く、成田にもずいぶん昔から就航している名門航空会社と言えますが、今世紀前後から経営危機が何度となく訪れ、国が支援するなどしていました。もともと、エアラインビジネスはインフラに近く、公益的な側面もあるので、プロフィッタブルなビジネスではないので経営が大変ではあり、イタリア政府も何度となく支援してきましたが、政府自体の負担も大きいのか、ルフトハンザグループへと言うことで、イグジットさせたようです。
ドイツの代表的な製品と言えば、ポルシェであり、ハイパフォーマンスでプレミアムでプロフィッタブルなものと同様に旧アリタリアをプレミアムブランドとして再生できるかルフトハンザの力量の見せ所でもありそうです。
スターアライアンス加盟への言及
ITAのマイレージプログラムとスターアライアンスへの加盟について、ルフトハンザのニュースリリースでは以下のように延べています。
ITA Airways already focuses on quality and a premium approach with an Italian service culture. Members of its existing loyalty program "Volare" will also be able to collect or use their miles with Miles & More from the first day after the closing. In addition, the respective lounges will be mutually accessible. ITA Airways is aiming to join the Star Alliance in the near future. Commercial processes, IT systems and purchasing processes will be harmonized as quickly as possible in order to exploit the numerous synergy effects.
ITA 航空はすでに、イタリアのサービス文化を取り入れた品質とプレミアムなアプローチに重点を置いています。既存のロイヤルティ プログラム「Volare」のメンバーも、閉鎖後の初日から Miles & More でマイルを貯めたり使用したりできるようになります。さらに、それぞれのラウンジは相互に利用できます。ITA 航空は近い将来、スター アライアンスへの加盟を目指しています。多くの相乗効果を生かすために、商業プロセス、IT システム、購入プロセスをできるだけ早く調和させます。
マイレージプログラムは Miles & Moreへ移行し、ルフトハンザ側のニュースリリースながらスターアライアンスへの近い将来の加盟について言及しています。これはかなりスターアライアンスへの加盟が早い気配を感じます。ルフトハンザはスターアライアンスへの取り込みへのやる気満々であります。ユナイテッドやシンガポール、ANAなどは異議を唱えるところは少ないと言えます。
欧州の新たな3大アライアンス勢力図
今回の発表以前に、スターアライアンス加盟であるスカンジナビア航空がエールフランスKLM傘下となり、2024年9月よりスカイチーム加盟となると発表しており、こうしたことから、仮にITAエアウェイズがスターアライアンスに加盟した場合に、欧州内の各アライアンスの加盟状況と勢力図を整理してみます。ロシアは除きます。
スターアライアンス
スターアライアンス加盟の航空会社とそれが目論まれているキャリアは以下のとおりです。
ルフトハンザドイツ航空
スイスインターナショナルエアラインズ
オーストリア航空
ブリュッセル航空
TAPポルトガル航空
LOTポーランド航空
クロアチア航空
エーゲ航空
ターキッシュエアラインズ
スカンジナビア航空
ITAエアウェイズ
ワンワールド
ブリティッシュエアウェイズ
イベリア航空
フィンエアー
スカイチーム
エールフランス
KLMオランダ航空
ヴァージンアトランティック航空
ITAエアウェイズ
チェコ航空
エア・ヨーロッパ
TAROM
スカンジナビア航空
勢力図
主なハブ空港ごとに各アライアンスをマッピングしてみました。ワンワールドはヨーロッパ内はブリティッシュエアウェイズとイベリア航空とフィンエアーのみですが、世界各国からの送客を大量に可能なカタール航空が中東にあり、世界中からの送客は強いかもしれません。
スターアライアンスはルフトハンザグループが大陸を席巻しており、欧州ではかなりの勢力であります。トルコをヨーロッパとして良いかわかりませんが、ターキッシュエアラインズも含めると最強と言えます。ここに、ITAエアウェイズを含めると大陸から南と東側はかなりカバーすることとなります。まあ。ルフトハンザグループとターキッシュエアラインズの運賃での整合性はあまりありませんが。
スカイチームはヨーロッパ中心部、フランス、オランダ、イギリスとイタリアがこれまでコアでしたが、イタリアが抜けて、北欧が入るのでエリア的にはカバーする広さは広くなりますが、北欧は人口も限られ、世界各国からと言うよりは欧州内需要がメインであり、世界的観光地のイタリアがなくなるのはちょっと厳しいかもしれません。
利用者視点ではITAエアウェイズがスターアライアンスに加盟するとスターアライアンスのキャリアとのコードシェアや直行便がイタリアに増えるので利便性は良くなると言えます。イタリアにとっても世界各地からこれまで以上に観光客が来る機会が増えるので、望ましいところと言えそうです。
ただ、経営となると別であり、オペレーターのPL/BSを解いてみないとわからないところもでもあります。いずれにしても、A member of Star Aliianceと言うアナウンスはローマ到着の際でも聞こえてきそうであります。
日本からイタリアは近くなるかも
イタリアと言うとこれまでは日本からはJALがかつて、ローマとミラノに就航していましたが、現在はなくなっており、現状はITAエアウェイズのみとなっています。同キャリアがスターアライアンスに加盟すると同じスターアライアンスのANAとのコードシェアは当然実施されるでしょうし、ANA自身もミラノへの直行便が早期に可能となるかもしれません。
地味ではありますが、ルフトハンザグループとなるとジョイントベンチャーが可能となり、運賃の設定のほかにマイル積算でも、プレミアムメンバーとなれば、ボーナスマイルがITAエアウェイズ搭乗時でも貯まることとなりそうです。
ハブであるローマやミラノからイタリア国内の路線はコードシェアで行きやすくなり、フィレンツェ、ベネツィア、シチリアなどこれまでよりもかなりアクセスが良くなり、日本からイタリアが近くなり、コスト的にも合理的になりそうであります。
加えて、ローマからアフリカへの路線の選択肢が増えることにより、中国大陸を経由せずにアフリカに毎日アクセスすることも将来的には実現できそうであります。
個人的にはイタリア発券のHがどうなるのかと言うところもありますし、アフリカ発券のANAチケットとか出てくるのかも気になります。まあ、2-3年後ではありそうですが。
最後に
スカイチームの名手とも言える大物のITAエアウエイズがスターアライアンスとなるのは大きな話題であります。アリタリアから随分勢いはなくなったものの、まだまだ大きなキャリアであります。
ルフトハンザは以前からイタリア方面への食指は伸びており、ローマやイタリアを拠点にしたかったのは見えていました。アリタリアからITAになり、株式取得がしやすくなり、EU委員会の承認も得て、念願の獲得と言う事かもしれません。
その前奏として、スカンジナビア航空がエールフランスKLMに飲み込まれていくのは予定調和だったかもしれません。北欧路線はあまり密に連携していない中で、南欧とアフリカ路線を手にできるのは願ったりかなったりだったかもしれません。
デュディリは相当しているとは思いますが、計画通りに行くか注目であります。