2018年10月以降、シンガポール航空がアメリカ東海岸と西海岸にノンストップで相次いでフライトを就航させますが、これが日本にも大きな影響がありそうです。
A350-900ULR就航とは
シンガポール航空は2018年10月以降にシンガポールとロサンゼルスとニューアーク間に直行便を就航させます。これは以前にも実績があり、航続性の高いエンジンが4基装備されたエアバスA340-500で就航しましたが、採算が合わず、就航後数年で運休となりました。
それから10年ほど経過し、技術革新が進み、より燃費の高いエアバスA350-900ULR型機が登場し、物理的な航続距離はもちろんのこと、その航続距離を以前と比較すると遙かに燃費が良くなったことにより、採算性にも幅を持たせることが可能となりました。
採算性に幅ができるということは
エアバスA340-500では、ビジネスクラスのみで飛ばしていましたが、エアバスA350-900ULRでは、ビジネスとプレミアムエコノミーの2クラスとなっています。これは、1人あたりの運賃単価が下がっても、採算が合うことを意味するととともに、これまで、プレミアムエコノミー需要で時間的な関係で他社に奪われていた顧客も取り返すことができる機会ともなりえます。
ビジネスクラスは法人契約の需要があり、座席を埋めることはできますが、プレミアムエコノミーは不確定な部分があり、料金とトータルの移動時間で訴求することで一般需要も取り込むことが可能と言えます。そうすることにより、景気変動に左右されずフライトを定期的に継続することができ、シンガポール航空ではルートの安定性を求めて、2クラス制にしたのかもしれません。
プロモーション運賃が凄い
先日、記事にしましたが、シンガポール発のロサンゼルス往復のプレミアムエコノミーの運賃か安いほか、周辺国からロサンゼルス、ニューアークへのプレミアムエコノミー運賃が安く、単価の高いプレミアムエコノミーで他社と勝負することにより、距離あたりの単価を高めて、採算性を高める勝負をかけているようです。
さらに、米国発の運賃も安くしており、アジアの需要だけでなく、北米のプレミアムエコノミー需要も獲得しようとしているようです。
東南アジアと北米をプレミアムエコノミーで結ぶ航空会社には脅威
シンガポール航空が近隣国からプレミアムエコノミーで時間とコストの面で優位となると、それまで時間がかかっていた航空会社にとっては脅威となります。その対象は、日系の航空会社や台湾の航空会社が対象となります。日本の航空会社で言うとJALとANAが対象となります。
JALとANAは成田や羽田での北米の乗り継ぎを重視し、日本人以外の需要を拡大することにより、成長ストーリーの1つとして掲げていますが、これが時間やコストで崩れ、しかも収益性の高い上級クラスから侵食すると経営にも影響が顕れると言えます。
実際、運賃を比較すると
2018年9月現在で、向こう6カ月のニューヨーク発のANAとシンガポール航空のプレミアムエコノミー運賃の東南アジア行きを比較してみると以下の通りです。
シンガポール航空は東南アジアでの運賃がANAと比較して半額近い運賃になっているほか、アジア全域で安くなっています。米国発でこれほど差があると利用者も流動的になるのではないかと思います。
北米方面の上級クラスは安くなるのか
少なくともプレミアムエコノミーはシンガポール航空が鳴り物りで、プロモーションしてるいことから、追随して安くなると言えます。ただし、乗継便と直行便では採算に明らかな優位性があるため、プレミアムエコノミーでのシェアは諦めて、自社会員向けの囲い込み強化するかもしれません。
すなわち、マイル上級会員に同路線利用の場合に優遇をする可能性もあります。
しかしながら、運賃は顧客が選択するプライムファクターであり、やはり安い運賃は出てくると思います。
最後に
ANAではボーイング787を積極的に導入し、新規路線など就航させ実績を出してきましたが、同一アライアンスにおいても新兵器とも言えるA350-900ULRにて、東南アジアの比較的利益の高いプレミアムエコノミー需要を奪われる可能性もあります。
そのためには、短期的には料金施策、長期的にはプロダクトによる差別化等が必要かと思います。
ANAマイル修行と言えば、日本=東南アジアのANA一択でしたが、サービスによっては最低限のANA搭乗比率を確保し、その他は他社のプレミアムポイントを獲得する修行になるかもしれません。また、上級会員向けのアップグレードポイントの有効性が薄れ、マイルでのアップグレードを確保する時代になるかもしれません。