日本が第一旅程となる航空券(日本発券)のマイルの積算率が低かったり、運賃が割高な理由を考えてみました。
景品表示法とマイル
景品表示法とは
最近、景品表示法(不当景品類及び不当表示防止法)に抵触するような事案やそれを順守するために付与するマイル数を減額したりするケースがありました。
景品表示法とは下記の通りです。
景品表示法は、商品・サービスの品質、内容、価格等を偽って表示を行うことを厳しく規制するとともに、過大な景品類の提供を防ぐために景品類の最高額等を制限することなどにより、消費者のみなさんがより良い商品・サービスを自主的かつ合理的に選べる環境を守ります。 自主的かつ合理的に、良い商品・サービスを選べます。
消費者庁ホームページより
ポイント還元率も国に握られているという事になります。適当なことを言う詐欺師が多いかも知れません。詐欺師が出て来ないような社会は誰が作るのか大きな問題です。
JALパックは狙ったのか
直近で言うとJALパックがマイラー必見!1万マイル付プラン!!!(!が多過ぎ)を販売していたと言うものであります。ホテルの部屋の広さは18.2㎡とビジホのようであるものの、1泊33,200円で付与されるマイルは10,332マイルと1万マイルが目立ってしまいます。
これは有名人が被弾する文春砲で公開されています。
マイルは同法では総付景品と定義されており、購入した人の中から抽選で1名にハワイ旅行ペア旅行券が当たる懸賞とは違い、取引した金額に応じて必ず付与されるポイントと同様な総付景品として扱われています。
外資系ホテルで同様なプランも有ったような気がしますが、換金性と外資圧力とかがあったのでしょうか。
法律でのマイル相当の付与の上限金額は下記のとおりです。
取引の価額 | 景品類の最高額 |
---|---|
1,000円未満 | 200円 |
1,000円以上 | 取引の価額の10分の2 |
航空券や旅行代金は1,000円と言うのは稀有なので実質的には20%以上の総付景品を付与してはいけないという事になります。
JALパックの場合は33,200円で素直に計算すると6,640円相当のマイル以上は付与してはいけないという事になります。ところが、10,332マイル付与されています。ここで法令違反になるか否かは貯まったマイルの価値であります。
この10,332マイルで飛行機に搭乗する以外に換金性の高い他社のポイントに交換したり可能であります。マイレージが消費者に広く知れ渡り大きな影響力があるという事でもあります。
ではどのくらいの価値かと言うとビックカメラのポイント⇒マイルを交換するレートは1:1であり1マイルの1円の価値があると言えます。
また、同社がJALグループの航空券を購入する際にマイルをeポイントと言う特定目的利用のポイントに交換することができ、そのポイントは1ポイント=1円として扱われます。ただし、そのeポイントに交換する際は10,000マイルからは15,000ポイントに交換できます。特定目的として1円の価値が割り引かれたとしても1マイル1円以上の価値があると言えます。
ANAもニアミス
JALばかり書いてしまいましたが、ANAでもこうしたニアミスは直近でありました。創立70周年記念で国内線の運賃を平日7,000円、土日祝日を10,000円で販売した事例があります。平日に羽田⇒石垣に同運賃で搭乗した場合、取引金額(運賃、PFC370円は右から左なので対象外の可能性が)7,000円で付与されるマイルはANA平会員であれば612マイルであれば1マイル=1円と換算すれば法律上限1,400マイルに及ばないので問題ありません。
しかし、これが最上級会員のダイヤモンド会員でそれを2年以上継続し、かつ、ANAカードゴールド以上を保有している場合は通常の積算率に応じたマイル以外にその積算率換算後のマイルに130%を乗じたボーナスマイルが付与されます。
従って、トータルのマイル付与数は1,407マイルとなり、1マイル1円と低く見ても比較しても法律上限を超えてしまいます。
ANAではこれを超えない範囲でのマイル付与にとどめたため、違反にはならなかったようです。会員から見ても数マイル誤差なので大きな影響はなかったと言えます。
そして、この問題は実際に付与され、実際に特典航空券やスカイコインやeポイントに交換できるマイルのみであり、上級会員になるためのプレミアムポイントやFLY ONポイントは関係ありません。
日本の航空会社の上級会員のマイル付与率が低いのは景品表示法が原因?
先述のとおり、ANA最高峰のダイヤモンド会員を何年続けて、ANAカードゴールド以上を保有してもボーナスマイルは130%が上限です。
米系や欧系の航空会社を見ても同等であり、先進国間では消費者保護が浸透していることを考えると景品表示法相当の法令が各国に存在すると言えます。
一方で日本発の国際航空券を購入するとエコノミーのマイル積算率が低くて、制限のある航空券でもかなり高額なケースがあります。
これは一概に景品表示法縛りと言うわけでなく、為替、購買力、事業者の戦略等が関連していると言えます。
しかし、日本と韓国の平均年収を比較しても、ソウル発券が安いのは、お金のある国からの需要を取り込もうと言うことも言え、日本は最早、G7ではないのかもしれません。
また、東南アジア発や一部の欧州の国発では日本行きの航空券や日本を経由して第3国に行く航空券がANAやJALの便のみの場合でも料金は日本発と同等でマイルの積算率が70%~50%も違うケースも有ります。
最近は便数が少ないことや燃料費がまたまだ高いにも関わらず、航空需要が高いためか、運賃は割高でありますが、以前は結構なマイル積算率の高い運賃が割安に設定されていた時も有ります。
上図はブログを始めて3か月ほどの2017年8月8日に書いた記事からの抜粋です。
運賃は総額で73,290円であり、予約クラスはプレミアムエコノミーEクラスであり、積算率は100%であります。プレミアムポイントの方に気をとられてしまいますが、付与されるマイルを計算してみます。ボーナスマイルはANA最上級会員の仕様の130%で計算しています。
クアラルンプール⇔東京間の区間マイル 3,345マイル
マイル積算率 100%
往復での基本付与マイル 3,345×2×100%=6,690マイル①
ボーナスマイル
①×130%=8,697マイル②
合計 ①+②=15,387マイル
法律上限は73,290円×20%=14,658マイルとなります。仮に2023年現在にある最高峰のステイタスであるダイヤモンド会員+moreの特典である2倍のスカイコインに交換となると30,774円相当となり、特定目的とは言え、還元率は約42%とアウトと言えるでしょう。
景品表示法は日本消費者向けの日本国の法令
基本的には事業者(一連の流れからすると日系航空会社)はクアラルンプール発券はあくまでマレーシアの消費者・需要向けに航空サービスを提供していることとなり、そのサービスの対価を受けたいために、取引し、その人物が日本に居住していても、日本国の景品表示方法は適用されないという事になります。
たぶんそうでないとANAのクアラルンプール発券はサイトで買えないと言えます。ちょっと自信がないのでChatGPTに聞いてみました。
質問:
景品表示法は日本に本社がある企業が海外で商品を販売したり、サービスを提供した場合には適用されますか。
回答:
景品表示法は、日本国内での景品や賞品、引換券、クーポン券などの提供に関する表示について規定しています。海外での販売やサービス提供については、原則として景品表示法の対象外とされます。
ただし、日本国内で行われた景品表示と同様に、海外での表示においても、消費者が誤解を招くような虚偽の表示や誤解を招く恐れのある表示を行うことは、景品表示法違反となり得ます。また、日本国内で販売される商品の広告や表示において、海外での販売状況が明示される場合には、景品表示法の規定に従う必要があります。
したがって、海外での販売やサービス提供においても、適切かつ正確な表示を行うことが求められます。
日本における需要は対象外ではあると言うのは自明のようです。
ただし、海外の事業者や拠点から日本の消費者向けに海外の拠点やサーバーからネットショッピングにて、明らかに日本の消費者が不利益を被るサービスを提供した場合は、海外の拠点やサーバーがが管轄されている国において、日本の景品表示法と同等な定めがある場合でも、ない場合でも、消費者契約の特則が設けられております。
前者の場合は消費者が日本の法律で訴えたいと言う意思があれば、それを出来、後者では法律がないので泣き寝入りではなく、取引をした消費者の所在地の日本の法律(景品表示法)で訴えることができると言うものです。
ただ、こうした事案は国跨ぎであり、証拠集めなど厳しそうです。日本の裁判所に出廷と言うのも厳しいかも知れません。
また、ネットショッピングの場合、買い物を始める前に無理繰りな同意をさせられているケースも有ったり、事業者側がレピュテーションリスクを避けて、訴訟に行く前に金で解決すると言うことが想定されます。
脱線しましたが、海外発券においてはそれを利用しない日本の一般消費者との間でその便益に著しい格差(組織的に社員の海外渡航の際に海外発券を強要し、積算マイルしたマイルを次の出張に強制使用させるなどして会社利益に強制的に寄与させる)が生じない限りは、軽微な利用ケースなので容認されていると言えます。
もっとも、現時点では航空運賃が高いので付与されるマイルと比較しても、法令上限の20%は越えは厳しいと言えますが。ある意味残念です。
最後に
マイルを初めとしたポイントサービスは日本で貯めて、利用する場合においては日本国の景品表示法が権化となっているため、どこも同じようなものとなっています。
サミット参加国でも同様でありますが、非参加国ではそうしたことは適用されず、日本国の要請が適用されないことも有ります。
特に海外発券は日本国に本社を持つオペレーターでも現地法規制の順守となり、日本居住の日本人が現地は発券しても大きな影響はないと言えます。
一方でこうした隙間でタックスヘイブンみたいなことはできるかもしれませんが、航空券では大量のトランザクションが発生し、足跡から組織犯罪が見えてしまいそうです。
個人で気の向いた時に海外発券をするのはその断面では日本発航空券よりもマイル付与等のメリットはありますが、日本から現地まで行く際の消費(特典か有償)はいずれにしてもコストがかかるので、放免(利用できるから放免ではなく許容かもしれませんが)なのでしょう。
ダブルマイルが最近ないのは法令順守がまさに影響があると言えます。つまらないですが、社会的にマイルの影響が大きくなるとこうした結果となると言えます。