ANAの2020年の国際線全路線のダイヤが確定し、さらに国際線の出発ターミナルも確定しました。路線別に出発ターミナルがバラバラに振り分けられており、振り分けの理由を考察してみました。
国際線出発ターミナル振り分け概要
日本空港ビルデングホームページより
背景
羽田空港では国際線の便数が拡大し、国際線ターミナル(2020年3月14日から第3ターミナルに改称)だけではキャパオーバーとなるため、国際線ターミナルにゲート追加対策などをしています。
しかし、それだけでは不十分なため、同空港で最も国際線を飛ばすこととなるANAが国内線で利用している第2ターミナルを増床し、国際線ターミナル機能を追加させることとしました。
こうすることで羽田空港において、国内線、国際線ともに最多のトラフィックのANAの旅客導線を第2ターミナル内にかなり閉じる込めることができそうです。
しかし、ANAはすべての国際線を第2ターミナルで完結はできず、第3ターミナルと併用することとなりました。
第2と第3ターミナル振り分け概要
国際線利用の場合、どちらのターミナルを利用するか気になるところですが、下記のルールに基づいて分けられています。
シーズンごとに設定
出発便が対象・目的地別にターミナルが振り分け
ANA以外の国際線は従来通り第3ターミナル(国際線ターミナル)
第2ターミナル国際線エリアにはラウンジが新設
今回発表されたのは2020年夏ダイヤ(3/29~10/24)であり、冬ダイヤ(10/25~)は8月下旬に発表するとのことです。
つまり、シーズン別にターミナルが入れ替わる可能性もあります。しかし、後述しますが、対象路線を見ると同社にとってコアな路線を第2ターミナルに寄せている傾向があります。
フリークエントに利用する人が出発ターミナルを覚えたにもかかわらず、半期ごとにコロコロ変わっていては不安になると想定され、出発時に利用するターミナルは固定されるのではないかと思います。
次に、ターミナルが振り分けられているのは出発便が対象であり、海外から飛んできて羽田に到着するフライトについては便名ごとに振り分けをするとのことです。
1日複数便の羽田発着がある路線(フランクフルト、ジャカルタ、バンコク、ソウル金浦、シンガポール、北京、上海(浦東)、香港、台北/松山)では便によって、ターミナルが分かれる可能性もあります。
また、悪天候や混雑などにより、急遽到着ターミナルが変更となる可能性もあり、着陸後に国内線乗り継ぎが控えている場合はワサワサする可能性もあります。
目的地別に出発ターミナルははっきりと分かれていますが、法則性、例えば、アジアは第3ターミナルとか、日中は第3ターミナルとかではなく、目的地別に分かれています。
しかし、第2ターミナルからの出発が6割となっており、かなりの確率で第2ターミナルを利用することとなりそうです。
そして、ANA便以外の国際線の航空会社は従来通り、第3ターミナルからの出発となります。ここにもANAのターミナル振り分けのヒントがありそうです。
ラウンジについては第2ターミナル出発路線にはファーストクラス設定路線が多いことからスイートラウンジが設置されることは間違いないでしょう。ラウンジのデザインは国内のラウンジや成田空港の第1ターミナル・第2サテライトに新たに出来るANAラウンジと同じく隈研吾監修となると予想できます。
そして、国際線では初めてANA搭乗客(コードシェア利用者は別として)だけのラウンジとなり、スイートラウンジにどのようなアクセス基準が設けられるのかが気になるところです。
ターミナル別路線一覧
気になるターミナル別路線をまとめてみました。また、その出発時間も記載してみました。既存路線は時刻表(冬ダイヤ)に記載のある出発時間で記載しています。
第2ターミナル
北米路線
ニューヨーク 10:20
ワシントンDC 10:55
ロサンゼルス 0:05,21:05
ヒューストン 10:20
シアトル 21:05
バンクーバー 22:00
欧州路線
ロンドン 11:35
フランクフルト 0:50,11:20
ミュンヘン 12:35
パリ 11:40
モスクワ 8:40
ウィーン 1:55
ストックホルム 9:40
イスタンブール 8:35
アジア・オセアニア路線
台北(松山) 9:20,12:40
ホーチミン 16:45
ジャカルタ 10:20,22:55
シンガポール 0:30,10:55
シドニー 8:50,22:20
北京 9:05,17:25
青島 9:55
第2ターミナルは朝、イスタンブールに始まり、午前中は忙しく、昼下がりの出発は少なく、夜な夜な出発路線が増え、閉めはウィーン路線となります。
第3ターミナル
北米路線
シカゴ 10:25
サンフランシスコ 22:55
サンノゼ 17:00
ホノルル 22:15
欧州路線
ミラノ 0:55
アジア・オセアニア路線
ソウル金浦 8:50,16:00,20:00
香港 8:50
マニラ 9:35
バンコク 0:05,0:50,11:00
クアラルンプール 0:05
デリー 9:50
上海(浦東・虹橋) 10:00,18:30,22:00
深圳 11:20
広州 9:25
第3ターミナルは朝、香港とソウルで始まり、深圳行きの後は夕方4時のソウルまではなく、夜から深夜にかけてボリューミーなアジア路線が多くなっています。夜は欧米路線となります。
出発便の時刻から見ると混雑する夜間帯は第2、第3のターミナルに分散し、混雑を回避しているようです。ラウンジ混雑の件を解消する狙いがあるかもしれません。
国際線同士の接続を最優先にしている可能性も
ANAホームページより
上記のように、第2ターミナルでは午後は閑散、第3ターミナルでも午後閑散として、出発便は少ないようです。
午後は到着便を受け入れ、各ターミナルに送るオペレーションと言えます。初のイベントのため、導線がどうなるかわからないため、バランスをとったようにも見え、確保できたゲートをどのように活用するかの試金石なのかもしれません。
第3ターミナル出発のファーストクラス路線はサンフランシスコ、シカゴのみであり、ANA & LEXUS CONNECTIONがどうなるか気になるところです。
2015年からスタートし、5年が経過しつつあり、車をリース契約していると更新の時期も近く、それを契機にディスコンも想像されます。
ANA便の羽田空港でのMCT
MCTとはMinimum Connecting Timeであり、空港での最短乗り継ぎ時間の事を言います。弾丸トラベルをすると乗り継ぎ時間を短くしたくなり、何処まで短縮できるか気になります。特に海外発券では別切り発券となるため、乗り継ぎできないと致命的になることもあり、重要なワードです。
ANA便同士の羽田空港におけるMCTは下記のとおりです。
到着/出発 | 国内線 | 国際線(T2) | 国際線(T3) |
---|---|---|---|
国内線 | 35分以上※ | 55分以上 | 70分以上 |
国際線(T2) | 80分以上 | 75分以上 | 75分以上 |
国際線(T3) | 80分以上 | 75分以上 | 75分以上 |
※第1ターミナルを利用するSFJ便(北九州/福岡)とJAL便は50分以上
預ける荷物は別として、国内から国際線は手荷物検査に加えてパスポートコントロールがあるため、最低55分となっています。
国際=国際は入国手続きがなく、同じターミナル内ので国際=国際の乗り継ぎ時間は短縮されそうですが、75分以上と記載されています。オリンピック時期のためかもしれませんし、到着と出発でターミナルが異なることが多いのかもしれません。スムースに通過できれば以前のように45分以内もありそうです。
一番時間がかかるのがターミナル3とターミナル2の移動であり、物理的な距離が影響します。こうした時間を整理しても羽田の接続時間は比較的短く、定時運行が多い航空会社が集中しているので、乗り換え時間は正確かもしれません。
マイル修行は不利になるのか
ANAマイル修行の聖地と言えばクアラルンプールですが、今回の割り振りでは第3ターミナルから出発となっています。これまでと同じと言えば同じですが、第3ターミナルにおけるANAの存在感が薄れ、これまでのスイートラウンジなどがなくなる懸念も想像されます。
サンフランシスコやシカゴ路線ではファーストクラス設定もあり、ANAにとっては重要路線でもあり、スイートラウンジを消すのは厳しいかもしれません。
また、クアラルンプール発券は直行便だけでなく、ちょっと割高になりますが、シンガポール経由便もあり、復路をシンガポール経由とすれば、羽田第2ターミナルも利用できます。
ここまでくると時間を優先するかラウンジを利用したいかという個人的な選択にたどり着いてしまいます。
バラバラにした目的
エリア別でもない、時間帯でも整理がつかない、出発便のターミナル振り分けですが、ある程度傾向は見られます。
まずは、時間帯と言えます。午前中や夜間にフライトが集中するため、それを分散したと言えます。
また、自社便だけでなく、提携航空会社との連携も想定されます。第3ターミナルを出発便とする路線はユナイテッド、タイ国際航空、アリタリア、フィリピン航空とのコードシェア路線でもあり、コードシェアとしての乗客が多い路線を第3ターミナルに集中させているのかもしれません。目的地に到着してから、さらに乗り継ぎも想定され、遅延等による振り替えをスムースにすることも想定されます。
しかし、そうでない路線も多くあり、メインはオリンピック対策が強いとも言えます。
最後に
シーズンごとにターミナルが変わる可能性もあり、路線別に勝ち負けはないと言えます。とは言え、第2ターミナルでの国内線から国際線の乗り継ぎは抜群となり、本陣の第2ターミナルを活用するのは間違いないでしょう。
チャンギ空港をハブとするシンガポール航空は第3ターミナルが中核であり、自社のスイート・ファーストクラス便に搭乗する顧客しか利用できないラウンジ「プライベートルーム」もあります。
一方で、第2ターミナルにはファーストクラス用のシルバークリスラウンジもあり、シンガポール航空のような形になり、また、空港周辺の開発も進み、羽田空港がチャンギ空港化していくのかもしれません。