スターアライアンスの初期メンバーであるスカンジナビア航空がスターアライアンスから脱退する理由と今後のアライアンスの方向性を考えてみました。
スカンジナビア航空のスターアライアンス脱退
スカンジナビア航空の歴史
スカンジナビア航空は2023年10月3日 17時55分にプレスリリースを発出し、経営的に困窮していた状況を打開するために、エールフランス-KLMやデンマーク政府、投資会社のキャッスルレイク、リンド・インベストの2社を含めた4社のコンソーシアム(目的一致の集団)の条件を受け入れることを発表しています。
スカンジナビア航空はデンマーク、スウェーデン、ノルウェーのスカンジナビア3カ国が共同で運航する航空会社で、スターアライアンスのメンバーであります。本社はスウェーデンの首都ストックホルムにありますが、各国政府が出国しており、国は跨いでいるものの、今では数少ない、国営会社に近い存在と言えます。
ただ、設立時から、北欧3国の経済状況もかなり変化しており、天然資源と政策で一人あたりのGDPは日本なんかを凌駕するノルウェーではLCCが台頭したりしている中で、公共交通としての政府の在り方も各国で変化してきたと言えます。
日本におけるスカンジナビア航空はずいぶん昔から就航しており、サンデーモーニングかサンデージャポンの時間帯に放送されていた「兼高かおる世界の旅」のスポンサーとしても知られています。
北欧らしいシンプルなサービスが功を奏したのか、そうでなかったのか不明ですが、サービスは評価は現在では分かれています。
実際に欧州域内のビジネスクラスはエコノミー同等であり、いくら、エコノミーの座席をシェアするビジネスクラスと言えども、提供食事などではかなりマイナスなイメージもあります。
個人的にもマイレージ加算はされない低運賃は有効と思いつつも、ラウンジが利用できるのはポイントだったりします。また、欧州内ではマニアックな路線を運航し、かつ、低価格だったりするのもポイントでした。
ただ、スターアライアンス利用となるとやはり、ルフトハンザグループが影響力が大きく、北欧に行かないとなるとルフトハンザクループ利用メインでもあります。
スカンジナビア航空の株主構成
事業の経営において、カバナンスと言える影響力は株主構成であります。今回の発表断面での株主構成は下記のとおりです。
日本の上場企業では半期末(多くが3月末と9月末)で開示している中で、細心のアップデートを開示しているの北欧の会社らしいかもしれません。
株式保有、議決権比率においてもデンマーク政府とスウェーデン政府がトップであり、それ以下も北欧の銀行や年金など、スカンジナビア以外の国には譲らないぞと言う意思が見えます。
また、比率は低くなっていますが、pensionと言う文字も見かけ、スカンジナビア各国にとっては、安定した収益を目指す企業であったのかもしれません。
ただ、設立の一つの国であるノルウェーはメジャーとはなっておらず、一人あたりのGDPでは世界屈指の国でもあるノルウェーは国策的には海外に投資をしているので、そうしたことがあるのかもしれません。そうした中で、スカンジナビア航空はオスロは主要空港であり、ベルゲンはヨーロッパ各地とも接続している中でも不思議であります。
新たな株主構成
今回発表された内容では、、エールフランス-KLMやデンマーク政府、投資会社のキャッスルレイク、リンド・インベストの2社を含めた4社により、実質的な経営権を確保していくこととなります。
その代表的なメッセージとしてはスターアライアンスを脱退して、スカイチームに加盟位するとことが大体的に発せられています。
これはルフトハンザグループがスカンジナビア航空の再建に救済をしなかったこと、これまで国策として北欧の各国が株式保有をしてきたことをあきらめて、大陸の資本を受け入れることであり、大きな変化と言えます。そこまでしても、半島のインフラとしては重要と言うことかもしれません。
とは言え、政府として保有を継続するのはデンマークのみであり、半島各国も一枚岩でないようでもあります。
ノルウェーではLCCが成長し、ノルウェエアシャトルがロングイェールビーンまで就航しているので、脱スカンジナビア航空もあり得ると言えますが、スウェーデンのイグジットは不明であります。隣国のフィンエアーはフィランド政府ががっちり株式を55%保有しており、譲れない関係にも見えますがどうなのでしょう。
今後、スウェーデンはスターアライアンスメンバーの選択肢がどうなるか不明であります。アジアの太客は多い都市でもありそうですが。
ANAストックホルム線就航に暗雲
もともと、2020年就航であったストックホルム線はご存知の通り、現在に至り未就航であります。もともと、北欧は日本とのダイレクト需要は少なく、その就航には懐疑的でしたが、JALがヘルシンキに就航しており、同一アライアンスメンバーであるフィンエアーのハブであることもあり、対抗したことも有ると言えます。
今回のアライアンス脱退は即ではないと言えることもあり、当面は継続し、就航しても良いと言えます。
ストックホルム直行と言うとほぼ、ビジネスの需要と言え、日本の通信会社の役員や社員が設備投資関連で訪れるビジネス需要がメインと言えます。
その他はコペンハーゲンなどの需要があると言えますが、今回の件で利益率が低くなると、フランクフルト線のバイパス的な役割となりそうです。
こうしたことから、JALのドーハ線対抗や収益の源泉である北米線増便の方に頭は向いているかもしれません。
最後に
ビジネスと言うものは諸行無常であり、儲からないと安くたたき売られるものであります。本人の努力とは別の処で地政学的な理由やパンデミック等の影響でビジネスが大きく影響を受けたりします。
スカンジナビア航空は大陸間をフライト現在、運航しているキャリアですが、今後はAF/KLのハブが近いことからリストラされて、インターユーロのみのキャリアとなるかもしれません。企業経営の難しさを感じるところでもあります。それでも跳ね返すエネルギーがないと生き残れないかもしれません。
以上、ユルユルな見立てでした。