シンガポール発成田行きNH802便(ボーイング777-300ER)ビジネスクラスに搭乗しました。ファーストクラスからエコノミークラスまで4クラス設定があるこの機材に搭乗したレポートと後継機による次期ビジネスクラスを考えてみました。
ボーイング777-300ER
概要
1995年6月に運用開始されたボーイング社が開発したワイドボディ双発ジェット機のボーイング777シリーズの航続距離延長型のタイプで2003年に初飛行しています。ローンチカスタマーは日本航空ですが、日本においてボーイング777-300ERを最も多く運用しているのはANAです。ボーイング777-300ERの特徴は民間機としては世界でもっとも強力なターボファンエンジンであるGE90-115Bエンジンを2基搭載し、強力な推力で同機の大きな機体を長距離かつ安定して航続できるようにしています。ボーイング777-300ERに限って言うと死亡事故を発生したことがない機体であり、777シリーズでは最も受注されているベストセラー機です。日本国の次期政府専用機もボーイング777-300ERが採用されることとなっています。お値段は2億3,700-2億6,400万USドルだそうです。
エンジン
ボーイング777-300ERのエンジンはGE90-115Bという名称で、ゼネラル・エレクトリック・エアクラフト・エンジンズ(現GE・アビエーション)製です。ファンの直径は325cmあり、推力は最高568.9 kNとギネス記録も持っています。ボーイング777-300ERではこのエンジンのみが採用されています。
個人的には、ドアがクローズされ、トーイングトラクターでプッシュバックされ、始動するエンジンから発せられる独読な音と振動が機内全体に響き渡ると「これから出発」という感じがして、とてもテンションが上がります。
ANAにおけるボーイング777-300ER就航都市
ANAにおいて、ボーイング777-300ERが就航している都市は下記の通りです。北米を中心として、長距離区間で運用されています。一部運用を除き、ファーストクラス、ビジネスクラス、プレミアムエコノミークラス、エコノミークラスの4クラスにて運用されています。
国際線 ロンドン、フランクフルト、ニューヨーク、シカゴ、ヒューストン、ロサンゼルス、サンフランシスコ、シンガポール、北京※、バンコク※
国内線 伊丹=成田※
※ファーストクラスの設定はありません。また、北京線ではプレミアムエコノミーの設定もありません。国内線ではファーストクラス席がプレミアムクラスに設定されています。
ボーイング787-9との違い
ANAは世界で初めてボーイング787を運用開始していますが、その最新機材であるボーイング787-9とボーイング777-300ERを比較してみました。
機体サイズ・エンジン
機体自体のスペックは以下の通りです。
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777-300ER |
787-9 |
全長 |
73.9 m |
62.8 m |
全幅 |
64.8 m |
60.1 m |
全高 |
18.5 m |
17.0 m |
巡航速度 |
890 km/h |
910 km/h |
航続距離 |
14,900 km |
14,960 km |
最大運用高度 |
13,100 m |
13,100 m |
最大離陸重量 |
348.8 ton |
250.8 ton |
エンジン型式名 |
GE90-115BL |
Trent 1000-K |
エンジン推力 |
52,160 kg X 2基 |
33,480 kg X 2基 |
搭載燃料量 |
181 kl |
126 kl |
ボーイング777-300ERの方が大きく、最大離陸重量は100ton近く違います。同じワイドボディ機ではありますが、777-300ERは大型機、787-9は中型機として位置づけられています。スペックでは見えませんが、ボーイング787-9の方が新しく開発された機材のため、人間にとって優しく設計されています。例えば機内の湿度や気圧がより地上に近い設定を実現しているほか、窓が従来よりも大きく設計されているため、昼行時の機内はとても明るいです。パワフルな大型機と言えば、777-300ER。快適性と言えば787-9といったところです。
機内設備
同じ機体の中でそれぞれ最も座席が少ない構成での比較となります。
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777-300ER |
787-9 |
座席数※ |
212席 |
215席 |
ファースト |
8席 |
0席 |
ビジネス |
68席 |
48席 |
プレミアム |
24席 |
21席 |
エコノミー |
112席 |
146席 |
Wi-Fi |
Service |
Service2 |
衛星テレビ視聴 |
不可 |
可能 |
ウォシュレット |
一部 |
全て |
※最小座席構成
大きさのわりに最大定員が少ないのは、ファースト、ビジネスの座席が多いためであり、そうした需要の多い路線(ロンドン、ニューヨークなど)に投入されています。
また、機内インターネットにおいても、それぞれの機体が採用しているインターネットインフラが異なるため、課金システムは別々です。777-300ERではデータ量制限がありますが787-9ではそれがありません。インターネット利用では787-9の方がメリットがありそうです。このほか、787-9では、NHKワールドとCNNとスポーツ24がライブで見ることができる「SKY LIVE TV」が提供されています。
ビジネスクラスのシート
両機のビジネスクラスのシートはいずれも隣席の人と並んで着席することのないスタッガード(ジグザグ)配列のフルフラットにリクライニングできるシートです。両機とも座席配列は1-2-1、シートピッチ62インチ、シート幅21インチとレイアウトや広さは変わりません。しかしながら、ボーイング777-300ERの方が客室幅5.86メ-トル、ボーイング787-9は客室幅5.46mであり、ボーイング777-300ERの方が同じシートスペックで同じ配列であるもののゆったりしています。
また、同じスペックを持つビジネスクラスのシートではありますが、ボーイング777-300ERのシートは第一世代、ボーイング787-9は第二世代と言っても過言ではない細部の差があります。主な違いは下記の通りです。
収納型テーブル
第一世代(777-300ERなど) シートモニター下部から引き出す
第二世代(787-9) サイドテーブル下から引き出す
写真は777-300ERのテーブルです。
サイドテーブル
第一世代(777-300ERなど) ブルーを基調とした照明が埋め込まれている
第二世代(787-9) 木目調の落ち着いたカラーのテーブルで埋め込みはない
シートモニター
第一世代(777-300ERなど) 17インチ
第二世代(787-9) 18インチ
個人的には、第一世代の方が日本初のスタッガード配列に挑戦したシートであり、当時色々と工夫して製作した感じが見え、テーブルの素材やボタンなどの細部の質感も高く、サイズ的に大きなボーイング777-300ERに設置されていることもあり、見た目がゆったりして好みであります。
後継機「ボーイング777-9」
ボーイング777-9(ボーイング社ホームページより)
ANAでは2014年3月にボーイング777-300ERの後継機としてボーイング777-9を20機新規発注することを発表しています。2021年度から順次導入していくようで、東京オリンピック開催後に就航する予定です。ボーイング777-9とボーイング777-300ERのスペックは以下の通りです。777-9は開発中のため、未公表や今後変化する可能性もあるため参考としてください。
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777-300ER |
777-9(開発中) |
座席数 |
365~368席 |
400~425席 |
全長 |
73.9 m |
76.7m |
全幅 |
64.8 m |
71.8m※ |
全高 |
18.5 m |
18.5 m |
巡航速度 |
890 km/h |
後日発表 |
航続距離 |
14,900 km |
14,075 km |
最大運用高度 |
13,100 m |
後日発表 |
最大離陸重量 |
348.8 ton |
351.5 ton |
エンジン型式名 |
GE90-115BL |
GE9X |
エンジン推力 |
52,160 kg X 2基 |
47,927kg X 2基 |
搭載燃料量 |
181 kl |
後日発表 |
※飛行時。地上では、他航空機や地上構造物との接触回避のため、主翼端左右それぞれ約3mを折り畳み走行・駐機する。
特徴としては、777-300ERよりさらに胴体を伸ばし、座席数の増加を実現するほか、軽量化を図り、777-300ERのエンジンであるGE90-115Bよりも推力の小さい新開発のGE9Xで同等の最大離陸重量を実現し、燃料消費・運航コストの効率化が図られる点です。航続距離は777-300ER同等ですが、水平尾翼をさらに長くすることで燃料効率をいっそう高めています。
ANAでは、2016–20年度 中期経営戦略において、5年間で国際線旅客事業の生産量を1.5倍、売上高を1.2倍にする計画を掲げており、計画が順調に進捗すれば2021年度には機齢もありますが、777-300ERでは容量不足ということも考えられ、777-9Xを導入する理由のひとつかもしれません。
ANAアニュアルレポートより
次期ビジネスクラスはどうなるか
シートスペース
先述のとおり、生産量を考慮すると座席数も今以上に確保する可能性もあります。
BUSINESS STAGGEREDは前世代のシート「New Style,CLUB ANA」と比較するとフルフラットやスタッガードシート配列によるプライバシー性において格段に進化したものの、シート自体のピッチや幅はあまり変化していないようです。以上から考えられるのは、シート自体のスペースの変化はあまりないと考えられます。
装備・配列
航続距離は777-300ERと同等であることからすると現在の就航ネットワークにおけるリプレースが想定され、それらのネットワークをターゲット(顧客層、飛行時間、乗り継ぎ、競合他社プロダクト等)として配列や装備が考えられると思います。また、787で開発された技術により機内はより快適にかつ先進的な機能が装備されることが想定されます。スペックとしてのスペースはあまり変わらなくても、広く感じるような配列やギミックを搭載する可能性があります。
日本初のスタッガードシートに挑戦した同社のため、驚くようなビジネスクラスを作り出してくれることに期待したいです。
ビジネスクラス搭乗記
アップグレードが2時間半で落ちてきた
今回はビジネスクラスのチケットを購入したわけではなく、クアラルンプール発券のプレミアムエコノミークラス(E)でシンガポール経由の旅程で購入しました。クアラルンプールからシンガポールまではSQ便を利用しています。
今回は時間がなく、搭乗日の4日前に購入したため、プレミアムエコノミーのシートは通路・窓側ともに指定されており、真ん中の2席のみが空いており、苦行回避のため、空席待ちではあったものの、保有していたアップグレードポイントによるアップグレード申請をしました。空席待ち状態であったため、当日カウンターまで持ち越されると思っていると、申請から2時間半後にアップグレートが落ちてきて、苦行は回避されることとなりました。Eクラスのチケットの強さなのか不明ですが、もしかしたらアップグレード申請しなくてもインボラされていたかもしれません。
搭乗
チャンギ空港ターミナル2のシンガポール航空のファーストクラスラウンジに25時頃まで寛ぎ、その後、ビジネスクラスラウンジに移動して寝落ちてしまい、朝シャワーを浴び、ブログを作成・下書き保存し、搭乗ゲートに。ゲートはE12と結構歩かされ搭乗。
BUSINESS STAGGERED
日本の航空会社で初めて採用したスタッガード(ジグザク配列)シートで、前述したように「第一世代(勝手に呼んでいますが)」タイプでした。
人気の個室感の高い窓側のA席は指定できずC席となりました。787-9のスタッガードタイプのシートと比較して、通路が広く、通路を挟んだ席が遠く感じます。
シートテレビはタッチパネルなのですが、シートピッチがありすぎるため大変です。(コントローラー使えばいいのですが)
ウェルカムドリンクはシャンパンにしました。安全性からなのかコスト削減なのかわかりませんがプラカップでした。過去には、プラスチック製のグラスの形をしたカップや国内線のプレミアムクラスのような少し高そうなプラカップ、本物のグラスと色々変化しており、今後も変わるかもしれません。
夜が明けきらないシンガポールを離陸し、朝焼けを見ることができました。
ビジネスクラス機内食
まもなくするとメニューが配られます。今回、注文したドリンクと食事は以下の通りです。
ワイン
イーランズ・エステート ランド・メイド ピノ・グリ 2016
マールボロ、ニュージーランド
洋ナシのジュースや蜂蜜漬けの花梨のような甘味を伴った香りがゆるやかに漂います。しなやかな酸味と角の取れたアルコール感が見事にマッチングして爽やかで華々しい味わい。果実味もアフターフレーバーに加わり微かに甘い余韻が残ります。
以上、ANAホームページより
機内食・ドリンクメニューにはビジネストラベラー誌の受賞マークが掲載されておりました。気圧で味覚が変わると言われていますが、機内の気圧が異なるボーイング777-300ERと787-9とでは、ワインを変えていたりするのかは不明です。
朝食
海外発の和食はおいしくないという方もいますが、今回はおいしかったです。特に前菜の味付けがしっかりしていました。
前 菜
烏賊とアボカドの味噌ポン酢マリネ 稚鮎南蛮漬け 鶏松風 ほおずき
主 菜
白身魚唐揚げ 甘酢餡掛け 白御飯 [409 kcal]
味噌汁
フルーツ
フルーツを食べた後、CAさんから「ほかに何かいりませんか」と聞かれ、「ワインと何かつまめるものをお願いします」と伝えると、アミューズ一式とあられを用意してくれました。お腹が空いていたように見えたのかわかりませんが、結構たくさん用意していただきました。
アミューズ
・ 枝豆
・ クルミ カシューナッツとドライレーズン
・ ガーリック風味のオリーブ
・ ゴーダチーズとアプリコット
・ ミックスあられ
このあと、折角のフルフラットなので眠ればよかったのですが、下書き保存のままのブログをチェックして公開をしているとあっという間に日本領空に。
機内インターネットはブログの写真アップには厳しいですが、下書きした記事をチェックし、公開するぐらいは問題なくできました。
作業がひと通り終わり、日本時間の正午を過ぎ、カレーを注文。定刻よりも早く成田空港に到着。飛行機から降り、外を見るとすっかり夏空の成田空港はシンガポールよりも暑いくらいで、夏の到来を感じました。
最後に
久しぶりのボーイング777-300ERに搭乗し、後継機の777-9Xのことを考えてみましたが、今のBUSINESS STAGGEREDが発表された時、全く想像しえないシートに驚いたように、イメージは思いつきませんが、次期ビジネスクラスもサプライズなシートを発表してほしいと思いました。