ANAの最新のビジネスクラスである「THE Room」に搭乗しましたのでお伝えします。
ANAのビシネスクラスの実力は
カタール航空との比較
ANAのビジネスクラスは高い評価を得ており、SKYTRAX社のWorld’s Best Business Class Airlines 2019において2位を獲得しております。1位はカタール航空であり、その差は何か比較してみました。同じくSKY TRAX社のAirline Ratings Breakdownのビジネスクラス(Long Haul)での比較となります。
各項目ごとのスコアそれぞれグラフで比較してみます。下記のとおりです。
チャートでは水色がANA、ピンク色がカタール航空であり、両者が拮抗しているところは色が混ざったすみれ色となります。
ANAはラウンジサービスにおいては清潔さやネット接続などでは大差をつけて優れているものの、機内サービスではカタール航空が優位であり、客室乗務員については、拮抗しています。特徴があり、日本語で言うおもてなしでは優れているものの、言語面ではカタール航空の方が優位となっています。
シートや客室乗務員の品質を上げることでカタール航空を凌駕し、世界一のビジネスクラスも見えてくると言えます。
新ビジネスクラス「THE Room」ができた背景はこうした理由であり、世界一のビジネスクラスを目標としているのかもしれません。
ビジネスクラス搭乗記
ANAはロンドンヒースロー空港ターミナル2Bから出発
新型ビジネスクラス「THE Room」が最初に提供される羽田=ロンドン線のロンドン発のNH212の搭乗となります。
新品ピカピカのボーイング777-300ER(JA795A)であります。機内に入るとこれまでとは別世界のビジネスクラスが広がります。
ビジネスクラス最前列席に座る
シートは5K、ビジネスクラス最前列となります。
進行方向と逆に座るシートであり、ファーストクラスの人と背中合わせになります。
これより先はファーストクラスです。モニターが大きいですね。
ファーストの利用者は一人しかいませんでした。
ものすごい座席幅
窓が2つあり、サイドテーブルは通路側あるため、窓側が主なシートスペースとなります。
隣席を見るとものすごい距離感を感じます。
壁面とシート間は小物を落とさないようにハニカム目の金属ネットが張られています。下は良く見えませんが遮音に貢献しているのでしょう。
全体の印象として色合いが濃い目であり、和のテイストを感じます。この辺りは隈健吾氏の監修だけあり、豪華さとも上質とも違う芸術性が極まっています。
照明モードは何通りも
シート操作ガイドが紙であるほか、シートモニターでもライティングのモードやシートのコントロールもできます。多機能すぎて一回のフライトでは覚えきれません。
窓は電動式ブラインド
窓は手動ではなく、電動で暗くすることができます。シェードは2種類あり、障子のような外光を柔らく取り入れるシェードと完全に遮光するシェードの二段階構造となっています。
両シェードが閉まる模様を動画で撮影してみました。音声はカットしています。
ドアは手動式で開閉
新ビジネスクラスのメインポイントでもある個室化する扉は電動ではなく、手動であります。個室化する(閉める)作業は上に動く扉と横に動く扉をボタン操作でシュッと占めることができます。
隣席の人がいち早く締めた状態が以下のとおりです。一方で、開ける時は手動となります。開ける時は結構力が要ります。
機内食を載せたり、パソコンで作業する場合に重要なシートテーブルはANAの機材では最も信頼ができるテーブルであります。
グラつきがなく、面積も広く安心感があります。シートをフルフラットにして胡坐での食事も可能なテーブルの高さであります。
そして、濃い色の木目が高級感を醸し出しています。
ビジネスクラス最大級の4Kモニター
シートモニターは4K対応のディスプレィであり、綺麗の一言です。映画はHDですが、画面が大きいこともあり、飛行機とは思えない世界が広がります。
一時はなくなるとも思えた機外カメラもあります、離陸や着陸では結構楽しめます。モニターのコントローラーはディスプレー付きでフライトマップを見たりすることができますが、メインのシートモニターはタッチパネル式であり、そちらで足りるため、あまり活躍の場は少なかったです。
シートコントローラーの存在感が素晴らしい
操作パネルは壁の一部であります。西欧のビジネスクラスでは高級車の操作パネルのように金属の質感やデザインを優先しているのとは一線を画し、建物の一部のようであり、こうしたところも飛行機らしくない演出を醸し出しています。
暗闇でははっきりと浮き上がり、安心感とアクセントとしての効果が際立っています。
日本行きアメニティは薄型グローブトロッター
ANAでは2019年の早い時期からアメニティのポーチをグローブトロッターとコラボしています。
日本発便では容量が大きいタイプのグローブトロッターコラボのポーチが提供されますが、日本行きでは帰国の際の荷物の多さへの考慮や到着後は家に帰ることを前提として、スリムなポーチが用意されています。
見た目は薄いですが、こちらの方が個人的には気に入っており、今後の旅行で重宝しそうです。
この他、スリッパは従来のANAの濃いブルーです。国内線のプレミアムクラスもシートが一新されるタイミングに合わせて、ダークブラウンやダークグレーに変えた方がマッチするのではないかと思います。
トイレのインテリアも大幅にグレードアップ
ANAではボーイング787をはじめとして、10年くらい前からトイレにはウォッシュレットを設定しています。それ自体は同機でもありますが、洗面台がステンレス製からより大きい白いシンクなり、清潔感が増しているほか、壁紙がデザインチックになり、成熟しています。
後ろ向きで着席して離陸
ウェルカムドリンクの後、離陸となります。シートは変われども、ウェルカムドリンクは伝統のプラカップであります。
歌舞伎のセーフティビデオも見慣れてきましたが、このビデオも結構スゴイものと改めて感じさせられます。
夕方のヒースロー空港は混雑しており、面白いくらいに飛行機が並んでいます。国際線長距離便を優先されたのか離陸はあっという間でした。
離陸待ちをしている飛行機を眺めながら離陸するのはちょっと満足であります。
離陸して感じましたが、以前もボーイング777-300ERの5Kシートに搭乗しましたが、離陸の際の音はずいぶん静かになった感じがします。
離陸の模様を4K動画で撮影してみました。ロンドン市街の上空は飛行しませんでしたが、夕暮れの離陸はきれいであります。
食事まずはアミューズからスタート
ビーツのチャツネとゴートチーズ 仔牛のブーレット 海鮮醤ソース 合鴨のハムとメロン ライチのブロシェット であります。味の濃さでうまく演出しています。
前菜はシーフードのサラダ仕立て サウザンアイランドドレッシングであります。
見た目は素朴でありますが、鮮度はなかなかであります。コーンスープはインスタントのようですが、気圧の低い機内ではなかなかおいしい逸品であります。
メインディッシュは定番のお肉を選択します。牛フィレ肉のステーキと野菜のアソート 赤ワインソースであり、焼き目がきれいであります。添えられた野菜の調理方法はシンプルであり、かえって好感が持てます。
デサートはオレンジキャラメリゼのタルトとフルーツにしてみました。何個でも食べられそうなタルトであります。食べ過ぎではお腹がおかしくなるため、あきらめて就寝です。
枕が二つあるゆったりベッド
あまりの静寂さに映画を観ていて寝落ちて数時間が経過してしまい、折角の熟睡時間を無駄にしましたが、時間的にはまだまだであり、ベッドメイクをしてきちんと眠ることとしました。
ベッドの状態にした時はこんな感じです。搭乗するまでは足元は結構短く、狭いのではないかと思いましたが、その懸念は払拭されました。
足が先端に届くことはなく、足を動かしてもぶつかることはなく、不便は感じませんでした。これはポジティブサプライズであります。
感心したのはシートバックに隠れていた壁は光沢のある和紙のようであり、間接照明を活用して照り返す明るさは隠れ家のような個室感を高めてくれます。
枕は二つあり、寝返りを打ったり、抱き枕として利用できます。こうしたことができる自体が素晴らしく、寛ぎの極みに達していると言えます。
その後、寝不足ですが、目が覚めて、トイレの後に16列と17列の間にあるバーカウンターに。
真っ暗ですが、大きなモニターの横に冷蔵庫があります。中にはシャンパンがあり、セルフ寝覚めのシャンパンができます。これまでは冷蔵庫がないため、赤ワインしかありませんでしたが、冷たいシャンパンが飲めるのは素晴らしいという一言につきます。
一方で、シートに戻ってライティングにこだわれば、再び酔いしれる雰囲気にもなれます。
一風堂 味噌ラーメン
小腹が空き、ロンドン線のラーメンは味噌であります。ここはこれまでのANAと同じです。
極上のフライトタイム
窓を開けるとロシアのど真ん中であり、雲の切れ間が素晴らしい景色でした。こうした景色も素晴らしいですが、もっとも感銘を受けたひとときは以下のとおりです。
到着前の機内食が始まるころには機内照明は点灯し、明るくなります。
しかし、その時点から機内食までの時間は結構かかり、食後も食器の改修に時間はかかります。その間の時間は通常であれば、退屈時間であります
しかし、窓のブラインドのボタンを半分だけ押し続けると、障子のシェードが下がり、柔らかい光がスイートを包み込みます。
ノイズキャンセリングヘッドフォンを装着し、フルフラットにして、足を崩して寛ぐと、和室で寛いでいる感覚があり、とても飛行機の中とは思えない世界です。このひとときが極上の瞬間であります。
これまでのビジネスクラスでは体験できないことであり、世界一のビジネスクラスを感じられる体験と言えます。
この後、到着前の食事(日本時間では昼食)となります。和食にしてみました。おいしいのですが、もう少し新鮮な食材があってもいい感じであります。
食感も大事であり、舌触りに刺激があるとプラスと感じました。
シートベルトは3点式
障子越しの柔らかい光の中でまったりしているとベルトサインが点灯し、着陸となります。
3点式のベルトは装着感が良くなく、ウィークポイントでありますが、安定飛行での素晴らしい空間のためとなれば、あまり問題とはなりません。離着陸時は3点、水平飛行時は2点で装着でした。
国内のフライトで見慣れた東京ベイエリアを見つつ着陸であります。飛行機の上でありながらそうでない空間が終わるのは残念ですが、ビジネス最前列のため到着するとすぐに降機できます。
最後に
今回登場したANA THE Roomはビジネスクラスという概念を覆すような空間である以上に、飛行機に搭乗していること忘れさせてくれます。個室内のライティングは数多あり、一度の搭乗では覚えられないほどであります。
SKYTRAXのレーティングにおいて、カタール航空に追いつく立場でありましたが、このシートでかなりのキャッチアップが実現でき、世界一のビジネスクラスも目前かもしれません。
これほどのビジネスクラスに無縁と思っていしまたが、毎年マイル修行をするANAでこうしたサービスを受けられるのは嬉しい限りであり、今後のマイル修行が楽しくなりそうです。