
2026年現在、ANAの国際線戦略において、この中国路線はきわめて特殊な位置を占めています。かつてJALの独占状態だった国際線市場に、ANAはいかにして切り込み、そして「中国といえばANA」と言われるまでのシェアを築き上げたのか。
そこには、航空業界の歴史を揺るがした「下剋上」のドラマと、現代中国が抱える不透明な地政学リスク、そしてANAが編み出した驚くほど合理的な機材運用の裏側がありました。
歴史の波に翻弄されながらも、戦略的に空を制しようとするANAの中国路線。その深層を、地政学的な視点も交えながら考察してみたいと思います。
ANAの中華人民共和国路線
ANAの中国路線は以下のとおりです。中国路線と言っても、岡山、広島、山口、鳥取、島根の中国地方ではなく、中華人民共和国(C国)路線であります。
✈️ ANA 中国大陸・香港 就航都市一覧(2026年時点)
| 都市名 | コード | 空港名 | 主な出発地 |
|---|---|---|---|
| 北京 | PEK | 北京首都国際空港 | 羽田、成田、関空 |
| 上海 | PVG | 上海浦東国際空港 | 羽田、成田、関空 |
| 上海 | SHA | 上海虹橋国際空港 | 羽田 |
| 広州 | CAN | 広州白雲国際空港 | 羽田 |
| 深圳 | SZX | 深圳宝安国際空港 | 羽田 |
| 大連 | DLC | 大連周水子国際空港 | 成田 |
| 青島 | TAO | 青島膠東国際空港 | 羽田 |
| 杭州 | HGH | 杭州蕭山国際空港 | 成田 |
| 香港 | HKG | 香港国際空港 | 羽田、成田 |
※最新の運航情報はANA公式サイトをご確認ください。
一応、香港も中国路線として加えました。東京以外の路線は少なく、関空からがかろうじて残っている状況です。中華人民共和国は日本の西に位置するので、ANA便に拘るのであれば、一度東へ戻ってから乗り継ぐ必要があり、かなり不便です。
中華人民共和国には数多の航空会社があり、東京以外への乗り入れもあるので、そちらに流れてもANAとしては良いのかもしれません。
スターアライアンスのエアチャイナのハブである成都への就航がなくなっている点も気になります。乗り継ぎ次第ではコロンボ方面などへのアクセスに便利な都市でした。
ちなみにJALの中華人民共和国路線は以下のとおりです。
✈️ JAL 中国大陸・香港 就航都市一覧(2026年時点)
| 都市名 | コード | 空港名 | 主な出発地 |
|---|---|---|---|
| 北京 | PEK | 北京首都国際空港 | 羽田、成田 |
| 上海 | PVG | 上海浦東国際空港 | 羽田、成田、関空 |
| 上海 | SHA | 上海虹橋国際空港 | 羽田 |
| 広州 | CAN | 広州白雲国際空港 | 羽田 |
| 大連 | DLC | 大連周水子国際空港 | 成田 |
| 天津 | TSN | 天津浜海国際空港 | 成田 |
| 香港 | HKG | 香港国際空港 | 羽田、成田 |
※最新の運航情報はJAL公式サイトをご確認ください。
ANAはシンセンやハンチチョウ、チンタオがオンリーであり、JALはテンシンがオンリーとなっています。
パンダを運んだり、武漢からのあの時に国民を運んだイメージもあり、現在ではANAのほうが中国路線に強いイメージがあります。
何故、中国路線が強くなったのか
ANAは日本の航空史では必ず出てくる「45/47体制」でドメ線の航空会社でしたが、1986年にこの不公平な体制が廃止されると、ANAは即座に国際定期便の開設に動きます。その翌年、1987年に念願の中国路線(東京=北京・大連)を開設しました。
JALが手薄な地方都市や、急成長が見込まれるビジネス拠点(大連や青島など)をいち早く押さえることで、「中国といえばANA」というブランドを構築し、JALとの差別化を図る必要がありました。
そして、以下のようなこともあり、JALに対抗するキャリアとなり得たのかもしれません。
💡 ANAが中国路線で「JAL」を逆転できた3つの理由
- 【打倒JALの執念】
かつての「45/47体制」による国際線独占を打破するため、JALの手薄な地方都市(大連・青島等)へ先制攻撃。 - 【「近さ」を活かした二毛作】
中国は国内線と飛行時間が大差ない。昼は日本国内、夜は中国へと「国内線機材」をフル稼働させ、圧倒的な低コスト・高効率を実現。 - 【ビジネス特化の波状攻撃】
短距離の利点を活かし、1日複数便の「シャトル運航」を展開。大型機1便のJALに対し、中型機複数便のANAが「利便性」でビジネス客を総取り。
かつて「国内線のANA」と揶揄された青い翼は、中国路線を「最強の稼ぎ頭(キャッシュカウ)」へと変えることで、世界トップクラスのエアラインへと飛躍を遂げたのです。
いみじくも、就航した当時は人民服に、天安門広場前を自転車が行き交うのが中華人民共和国でしたが、今では、地方と都会や貧富の差は日本よりも大きいものの、日本を凌駕する経済大国となってしまいました。
これも、ANAにとっては、飛行機風に言うとテイルウィンドだったのでしょう。
中国のこの先はわからない

同じモンゴロイドの国で、漢字を使う国なので、余り、どうこうと言いたくないですが、最近は台頭のせいで自分の生活が厳しくなっている側面もあるので考察してみました。
1. 歴史的視点のまとめ
- 南船北馬の多様性: 南北で気候も言語も主食も異なる。「三国志」のように、同じルーツでも内紛が繰り返されるのが歴史の常。
- 約80年の継続統治: 毛沢東を始祖とする現在の中共体制は、歴史上もっとも広大な領土と人口を「継続的」に治めている稀有な状態。
- 日本の戦国時代との共通点: かつての日本も織田信長の登場まで天下統一がなく内紛続きだったように、バラバラになるエネルギーを常に内包している。
2. 現代の地政学リスク(周辺国との関係と不透明な先行き)
● 四面楚歌の境界線: 日本、インド、フィリピンとは緊張状態。ロシア・北朝鮮とも「敵の敵は味方」で繋がっているに過ぎず、国境問題の火種は消えていない。
● 膨張する野心: すでに巨大な領土を持ちながら、さらなる拡大を狙う姿は周囲から見れば予測不能。
ソ連がロシアへ崩壊・変容したようなドラスティックな変化が、この先の中華人民共和国内で起きないとは言い切れない。
遠い感覚で言うと、憎さとかの感情はありますが、超ミクロに、普通な人民と感じるところでは、西欧に見られるモンゴロイドへの見下し感もなく、がさつな一面もありますがユーモアもあり、同じモンゴロイドとして親近感を覚える部分もあって、感情は複雑です。
ANAの国際線をより柔軟に
ANAではANAグループ航空輸送事業計画を策定し、2026年1月に発表しています。内容としては国際線は前年比でプラスの輸送力を示していますが、かなり、季節ごとに対応しているようです。
まあ、これはピタッとフリートから続く、マイクロマネジメントですが、日和見のコントロールでコスト削減と売り上げ増収チャンスを逃さないと言うところであります。
パンデミックとかありますが、欧米や東南アジアではそうしたボラティリティは少なく、これは中国路線を意識しているところでしょう。
日本にいると不思議でありますが、国と国、特に行政府同士で仲が悪くなると、国民の行き来を制限するような国があり、それが中華人民共和国でもあります。経済的には日本より上になっても、自由がない国と言うのもこういうところで顕われています。
そうしたこともあってか、ANAも自身が国際線成長の源泉であったC国路線も柔軟設定にしているのかもしれません。
現在、同社では機材が不足しており、そのリソースの配分をどうするのか苦心しているようであり、政情により需要が読めない路線よりも、稼ぎ頭にフリートを配分した方が良いとなっているのかもしれません。
ある意味、当然の判断とも言えるでしょう。
最後に

かつて自転車が埋め尽くしていた天安門広場が、今や世界を牽引する経済大国へと変貌したように、航空需要の景色もまた刻一刻と変化しています。2026年現在、ANAが「マイクロマネジメント」による柔軟な機材配分へ舵を切っているのは、この予測不能な隣国とのリスクを最小限にしつつ、収益を最大化するための賢明な判断と言えるでしょう。
「近さ」を武器に成長してきた青い翼が、今後この不透明な大国とどう向き合い、どのようなフライトを描いていくのか。その「日和見のコントロール」の先に、日本の翼の次なる形があるのかもしれません。