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鉄道は「金を失う」を忌み、航空は「空っぽ」を恐れる。インフラ支える文字の呪縛と美学

日本の風景に欠かせない鉄道と航空。日々、何百万人という人々を運ぶこれらの事業はビジネスと言うよりも、インフラであり、余人代えがたい存在であります。莫大な設備投資と運営コストを抱える事業ゆえ、株式会社としての経営は大変でもあります。

その恐怖は、時に私たちが日常的に使う「漢字」の形さえも変えてしまいました。鉄道会社が「鉄」という字を忌み嫌い、航空会社が「空」という字に抱く「イメージとの間での葛藤」文字の向こう側に隠された、血の滲むような経営努力と、日本独自の「ゲン担ぎ」の文化を深掘りします。

「鉄」という文字に隠された呪縛と「言霊」

日本語には古くから「言霊(ことだま)」という概念があります。言葉や文字には霊力が宿り、発した言葉や書いた文字が現実の事象に影響を与えるという考え方です。

鉄道会社にとって、社名に含まれる「鉄」という文字は、事業の根幹を成す素材そのものです。車輪とレールの鉄同士の摩擦が大量輸送を生み出し、産業革命以降の人類の発展を牽引してきたと言えます。しかし、この文字を分解すると、経営者にとって身の毛もよだつ意味が浮かび上がります。

「金」+「失」=「金を失う」

鉄道事業は、初期投資に莫大な費用がかかります。線路を敷設し、車両を造り、駅を建て、膨大な人員を雇用する。そして、一度走り出せばメンテナンス費用が延々と発生し続けます。歴史を振り返れば、多くの鉄道会社が赤字に苦しみ、倒産の危機や国有化の波に飲まれてきました。

明治時代の鉄道黎明期から、経営者たちは日々帳簿を見つめながら、「これ以上『金を失う』わけにはいかない」と切実に願いました。その執念が、文字の形を変えるという具体的な行動に繋がったのです。まあ、私鉄では鉄道事業だけでは儲からないので、敷設した線路の沿線に不動産事業を開拓して、成り上がったのが多い所でもあります。まあ、その恩恵で我々は棲家があるのかもしれませんが。

「矢」が選ばれた理由とポジティブな意味

「失」という字を避ける際、代わりとして選ばれたのが「矢」でした。なぜ「矢」だったのか。そこには単に形が似ているという以上の、極めて前向きな意味が込められています。個人的には矢と言うと「矢ガモ」が最初に思いついてしまいました。

「速さ」の象徴

鉄道の最大の武器は速達性です。放たれた矢のように、目的地へ向かって真っ直ぐ、速く進む。鉄道の理想像が「矢」には投影されています。かつて、札幌と旭川間では『スーパーホワイトアロー』という特急が走っていたくらいです。

「的に当たる」

商売において「当たる」ことは、すなわち繁盛を意味します。矢が的を射抜くように、顧客のニーズを捉え、利益を確実に得る(収益を的中させる)という願いです。

「真っ直ぐな経営」

脇目も振らず、公共交通機関としての使命を果たすという誠実な姿勢も表現されています。

このようにして、偏が「金」で旁が「矢」という独自の漢字(「鐡」の変体、あるいは造字)は、鉄道業界の「隠語」ならぬ「隠字」として定着していきました。

「金+矢」を採用・愛用する鉄道会社一覧

多くの鉄道会社が、ロゴマークや社章、駅の看板などでこの表記を採用しています。

「金+矢」を愛用する代表的な鉄道会社

1. 近畿日本鉄道(近鉄)

日本最大の私鉄ネットワークを誇る近鉄は、この表記を大切にしてきた代表格です。かつての社名ロゴでは、はっきりと「矢」の字が使われていました。広大な路線を維持し続ける近鉄にとって、経営の安定は至上命題。この一字には、並々ならぬ経営への執念が宿っています。

2. 西武鉄道

西武グループにおいても、古い看板や公的な資料、さらには切符の地紋(背景模様)などに「金+矢」が使われてきました。特に昭和中期までに設置された施設や銘板には、今でもこの「矢」の文字を見つけることができます。

3. 大井川鐵道

静岡県を走る大井川鐵道は、社名そのものに旧字体の「鐵」を使用していますが、その中身をさらに「矢」に書き換えるという「二重のこだわり」を見せることがあります。SL(蒸気機関車)を動態保存する同社にとって、鉄はまさに魂。その魂を「失わない」という強い意志の表れです。

4. 富士山麓電気鉄道(旧・富士急行)

2022年に富士急行から鉄道部門が分社化された際、その名称には伝統的な「鐵」の精神が引き継がれました。富士山の急勾配を走る厳しい環境下で、安全と繁盛を願う心が文字に刻まれています。

JRでも本社銘板は鉄としていても、工場や運輸区の建物では鉄に矢としているところもあり、ゲン担ぎが感じられるところであります。

国鉄からJRへ「鉄」への回帰と「四国」の意地

日本の鉄道史における最大の転換点は、1987年の「国鉄分割民営化」です。この際、漢字の慣習にも大きな変化が訪れました。

国鉄時代の赤字と「矢」。国鉄時代、現場の職員たちが使うヘルメットや備品、そして駅の看板には「金+矢」が溢れていました。当時の国鉄は天文学的な累積赤字を抱えており、「金を失う」という文字は現場にとっても経営陣にとっても、極めて切実なタブーだったのです。

JR化による近代化と例外。民営化によって誕生したJR各社は、イメージを刷新するためにモダンなフォントのロゴを採用しました。この際、多くの会社が「ゲン担ぎ」をやめ、常用漢字である「鉄」に戻しました。

しかし、ここで面白い例外があります。JR四国(四国旅客鉄道株式会社)です。
JR各社のロゴは共通の書体で作られていますが、JR四国のロゴマークをよく見ると、「鉄」の「失」の部分の第1画が突き抜けず、短くなっています。
これは「鉄(金を失う)」の状態を避け、少しでも赤字を食い止めたいという、経営環境が厳しい四国ならではの「密かな抵抗」と「願い」が込められていると言われています。

【蛇足】航空会社が抱える「空(から)」の恐怖

さて、蛇足ですが、鉄道会社が「鉄」の字に頭を悩ませる一方で、空を飛ぶ「航空会社」はどうでしょうか。

航空会社の社名には必ずと言っていいほど「空」の文字が入ります。日本航空(JAL)、全日本空輸(ANA)がすぐに思い浮かびます。一方で、ピーチのように例外的な名称も存在しますが。しかし、この「空」という漢字もまた、商売の観点から見れば非常に不吉な意味を持っています。

「空」=「空っぽ(Empty)」

航空経営において、最も避けなければならないのは「空席」です。利用者にとっては隣席が空いているとラッキーではありますが、ビジネスとしてはかなりシビアであります。
どんなに素晴らしい最新鋭の機体を飛ばしても、座席が「空っぽ」であれば、それは一円の利益も生まず、ただ燃料代と人件費を浪費するだけの「空飛ぶ負債」へと変わります。ソラとカラはなかなか、アンビバレントな関係であります。スカイツリーのマスコットである「ソラカラちゃん」何ともであり、スカイツリー資本は東武鉄道と言うのも妙であります。

「空(そら)」は憧れ、しかし「空(から)」は絶望

パイロットや客室乗務員にとって、大空は誇り高い職場ですが、経営陣や地上スタッフにとって「空」の文字は常に「ロードファクター(座席利用率)」というシビアな数字を突きつける言葉でもあります。

航空会社がキャンペーンや広告で「満」という字(満席、満天の星、満足など)を好んで使うのは、この「空(から)」の状態を打ち消したいという潜在的な心理が働いているのかもしれません。

事業会社であるANAの正式名称は全日本空輸株式会社であります。これは日本のすべてを空輸すると言う国内線で日本国内を網羅しているという意があります。20年くらいまでは機体には漢字で「全日空」とペイントしていたくらいです。

しかし、中国路線やアジア路線が拡大した頃でしょうか、漢字のペイントをやめ、ANAのロゴとALL NIPPON AIRWAYSにして、その後には「Inspiration of JAPAN」を追記しています。

航空業界では、鉄道ほど「文字の形を変える」という直接的な慣習は一般的ではありませんが、「空(そら)を飛ぶが、席は空(から)にしない」という精神的なジンクスは、現場のプロフェッショナルたちの間で深く共有されています。

現代における「ゲン担ぎ文字」の価値と美学

現代において、デジタル化が進み、駅名標が液晶ディスプレイ(LCD)に変わる中で、「金+矢」やこだわりのロゴデザインはどのような意味を持つのでしょうか。

ブランドとしての伝統があるかもしれません。歴史ある私鉄が「リブランディング」を行う際、あえて古い「金+矢」のロゴを復刻させることがあります。これは、「長年地域を支えてきた」という伝統と信頼の証として機能しています。

デザインとしての重厚感もあります。「失」という字は、左右の払いが大きく、意外とバランスが難しい文字です。一方、「矢」を用いた「鐡」という字は、縦のラインが強調され、視覚的にどっしりとした安定感を与えます。重厚な鉄道車両や歴史的建造物には「矢」の字がよく映えるのです。

最後に

「鉄」を「金+矢」と書き換え、「空(そら)」を飛びながらも「空(から)」を恐れる。一見すると単なる迷信やジンクスに思えるかもしれません。しかし、その一文字一文字には、安全を預かり、一円の利益を積み上げようとする鉄道・航空界隈の人たちの執念と誇りが宿っています。次に駅の名盤や機体のロゴを見上げる時、そこに込められた「言霊」を感じてみてはいかがでしょうか。何となく、飛行機に乗る時に、プラチナとダイヤモンドの比重が気になってしまいました。

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