ANAとシンガポール航空の共同事業がいよいよ具体化する知らせを耳にしましたが、それが始まるとマイル修業が果たして変わるのかまとめてみました。
- 共同事業契約の締結の内容
- コードシェア拡大範囲
- 就航地を見ると
- ANAマイレージクラブでのメリット
- ANA便とシンガポール航空の予約クラスであるものとないもの
- 海外発券へのメリット・デメリット
- 最後に
共同事業契約の締結の内容
ANAとシンガポール航空は2025年4月17日にジョイントベンチャー(共同事業)契約を締結しました。
両者プレスリリースを発出していますが、シンガポール航空の方が詳細なのでAIに翻訳とポイントをまとめさせてみました。
- ANAとSIAは2025年9月からシンガポール-日本間のレベニューシェア便を開始。
- 2025年5月に共通運賃商品を発売。
- コードシェア提携に加え、運賃オプションやフライトスケジュールの調整を強化。
- スターアライアンス加盟社間での接続性向上。
- マイレージプログラム(ANAマイレージクラブとクリスフライヤー)で獲得可能な予約クラスを拡大。
- 法人向けプログラムの連携も推進。
- ビジネス旅行者向けのサービスを強化。
- 規制当局の承認を条件に、提携範囲をオーストラリア、インド、インドネシア、マレーシアなどへ拡大予定。
- 2020年の商業共同事業契約以来、コードシェア範囲を大幅に拡大。
- ANA顧客はSIAネットワークで12都市→25都市へアクセス拡大。
- SIA顧客はANAネットワークで9都市→34都市(うち国内30都市)へ接続可能に。
レベニューシェア便と言うのは既にANAが展開しているユナイテッドやルフトハンザグループとの共同事業であり、基本的には両社もほぼ同じ予約クラスで同額の運賃を販売する形であります。
また、マイレージプログラム獲得可能な予約クラスが拡大と言うのは有償の予約クラスでANAマイレージクラブ会員であればSQ便で、クリスフライヤー会員ではANA便でマイル積算のクラスが拡大すると言う事となります。
ちなみにANAプレスリリースではわざわざ注釈をつけて、特典予約クラス、団体予約クラスを除くと記載しています。
そして、ネットワークの拡大により、アクセス都市が拡大と記載されています。規制当局の認可が必要な4か国に加えて。他の国でも拡大しています。SQが発表して、ANAは詳細を記載していないと言うのは双方でズレがあるかもしれないので、5月の商品発売時に確認は必要です。
コードシェア拡大範囲
今回のリリースでコードシェア便の拡大が双方記載されていました。就航地は以下のとおりです。
ANAコードシェア便(SQ運航)
オーストラリア
アデレード、ブリスベン、ケアンズ、ダーウィン、メルボルン、パース、シドニー
インド
アーメダバード、バンガロール、チェンナイ、デリー、ハイデラバード、コチ、コルカタ、ムンバイ
インドネシア
ジャカルタ
日本
福岡、名古屋、大阪、東京羽田、東京成田
モルディブ
マレ
ミャンマー
ヤンゴン
南アフリカ
ヨハネスブルグ
SQコードシェア便(ANA運航)
秋田、福岡、萩・石見、函館、広島、石垣、岩国、鹿児島、高知、小松、熊本、松山、宮崎、名古屋、大館能代、大分、岡山、沖縄、大阪、佐賀、札幌、庄内、高松、徳島、東京羽田、東京成田、鳥取、富山、宇部、米子
就航地を見ると
今回の就航地を見る際にANAマイレージクラブ会員にとって気になるのはSQ運航のANAコードシェア便となります。アジアとオセアニアの路線が多くなっています。
今までだとシンガポール航空独自の運賃のSQ便のみであった路線にコードシェアでANA便名が付き、ANAマイレージクラブに積算対象でなかった運賃が対象になるようです。詳しくは蓋を開けてみないといけませんが。
逆にSQコードシェア便の場合、日本の国内線の就航地にSQ便が付きます。就航都市を見ると羽田発着のようであり、クリスフライヤー会員にとってはメリットが拡大し、インバウンドに追い風と言えます。
ANAマイレージクラブでのメリット
以上のように両マイレージプログラム会員にとってメリットはありますが、ANAマイレージクラブの会員へのメリットを考えてみました。
大きな前提として、ANAマイレージクラブの場合、マイル積算(プレミアムポイントも)は原則として、運航する航空会社の便名で積算されると言う事であります。今回の改定で、もし、運航会社ではなく、便名での加算に変更となれば、先日発表された特典航空券の改編と同様に、大転換でありますが、そうはいかないでしょう。
現行の制度で考察してみました。
SQ運航の都市の拡大
前者(SQ運航便の都市拡大)では、SQ便の都市が拡大し、かつマイルが積算する予約クラスが拡大すると言う事なので、これまで運賃が高かったり、積算率がなかったクラスが増え、マイル積算が増えます。
例えば、チャンギ空港乗り換えでモルジブ・マレに行く場合に、これまでは日本からMLEまですべてSQ運航では安かったものの、AMC積算は渋かったところが改善される可能性があります。
ただ、プレミアムポイントについてはANA運航便の場合は路線倍率1.5倍が適用されるのですが、それは残念ですが、今回の拡大都市のハブとなるチャンギ空港までANA運航便をつかめれば、今よりは良くなります。
ANA国内線運航都市の拡大
日本国内の就航都市が増えるのは一見するとクリスフライヤー会員へのメリットがありますが、ANAマイレージクラブは運航航空会社のマイル積算が原作となる点であります。
例えば、SIN⇔HND⇔ISGとなった場合、シンガポール航空のサイトで同ルートの運賃を購入した場合でもすべてANA運航便の場合、ANA運航の積算マイルで加算されるので、プレミアムポイント路線倍率も加算されることとなります。ANAサイトでもSQサイトでも共同と言うくらいなのでプライスは平仄を合わせると思いますが。
ただ、期待したい点としてはインドのデリーとムンバイ以外の都市からチャンギ乗換でそこからANA便で石垣に行く場合は、これまでよりも安くなり、プレミアムポイントもプラスαとなり、デリーやムンバイよりも安い可能性もあります。
いずれにしても、蓋を開けてみないとわかりませんが、5月には運賃と予約クラスが判明すると思われるので成行に注目です。
ANA便とシンガポール航空の予約クラスであるものとないもの
さて、ここからは予約クラスについて考察してみたいと思います。今回はANAマイレージクラブ会員とクリスフライヤー会員の双方に積算されるクラスが拡大すると記載されており、どうなるのかクラス別に考察してみます。
ファーストクラス
150%
ANA F,A
SQ F,A
ここは両社一致しており、どちらの便名に搭乗しても、変わりはないと言えます。ただ、ANAは今回対象の地域にファーストクラスは現行、飛ばしていません。一応、先日発表された2025年6月下旬のANAマイレージクラブ改定でも東南アジアと日本間にはファーストクラス特典は残しているので、機材に余裕があると飛ばすのかもしれませんが。
ビジネスクラス
150%
ANA J
125%
ANA C,D,Z
SQ Z, C, J, U, D
70%
ANA P
ANAにのみあるクラスはファーストと肩を並べる貴賓高い150%加算のJやマイル修業では忌み嫌われる70Pがいたりします。落差が激しすぎます。
一方で、SQは一律125%であり、Jが125%積算であるほか、ANAではエコノミークラスで70%積算のUクラスがいたりします。
ビジネスクラスにおいて予約クラスが拡大となるとクリスフライヤーでJが150%に昇格で、SQにも70Pが出現となりそうです。UはSQ以外にANAと共同事業を行っているキャリアを考えるとエコノミーに降格されそうです。Jが積算率が上昇し、Pが増えて、Uが消えるとなるかもしれません。
70Pの追加は脅威であり、昨日記事にしたSQワンダラストの運賃はDから70Pに整理されてしまう懸念があります。400PPも貯まらなくなるのでかなり痛いことが想定されます。
プレミアムエコノミークラス
100%
ANA G,E
SQ S, T, P, L, R
70%
ANA N
プレミアムエコノミーはANAとSQで予約クラスにおいては全く交わりがなく、絶対的に同地域での便数は多いものの、ANAはほぼプレミアムエコノミー設置があるにもかかわらず、SQは一部機材に留まっている点や、そもそも設定座席数が少ないことを考えるとこのままと言う可能性もあります。
ただ、ANAやユナイテッド、ルフトハンザでビジネスの70Pや底辺エコノミーのSやLやTはクラス替えされることが想定されます。
その代わりにG,E,N体制となり、70%積算が出来るかもしれません。これまでは100%積算しかなかった聖域とも言えるSQのプレミアムエコノミーの積算率が悪くなるかもしれません。世界最長路線のNYC-SINに乗るモチベーションも下がってしまいそうです。
エコノミークラス
100%
ANA Y,B,M
SQ Y,B
70%
ANA U,H,Q
SQ E, M, H, W
50%
ANA V,W,S,T
SQ Q,N,V
30%
ANA L,K
SQ K
プレミアムエコノミー程ではないものの、クラスのばらつきはあります。ただ、いずれも100%,70%,50%,30%の積算率は双方、既に装備しています。調整の道筋はあると言えます。
そうなるとクラスの再編成となりそうです。
以上のように今回の共同事業はスターアライアンスメンバーとして、シンガポール航空側がANA、ユナイテッド、ルフトハンザグループに予約クラスを合わせるケースが多いのかもしれません。
総評
クラスの違いか見えてくる両者において、共同事業によるマイル積算クラスが拡大すると言うのは一見すると選択肢が多いようですが、これまでファーストは150%、ビジネスは125%、プレミアムエコノミーは125%という聖域を守っていたSQ予約クラスにビジネス70%やプレエコ70%が追加されるのではないでしょうか。
一応、ビジネス150%積算のJ追加で高いお金で搭乗する利用者にもリテンションを利かせると言う事かもしれませんが。
そして、エコノミーは底辺クラスではANAの方が多く、そのクラスに合わせることにより、人口は1.2億人とまだ多いものの、所得が低い日本人をアジア各地にSQ便で運ぶことで座席を埋めることが思いつきます。
スターアライアンスの中では欧米からはNZの次に遠い位置に本拠地を持ち、世界一周ルートを持ち、アライアンス以外のキャリアとの提携も盛んであったシンガポール航空もグローバリゼーションには叶わないと感じられる風です。
まあ、5月の運賃を見てみたら、ANAが脱ユナイテッド、ルフトハンザだったりするとサプライズですが。
海外発券へのメリット・デメリット
今回の共同事業は海外発券にメリットなのかデメリットなのかと考えると考え方は二つあります。
一つはエコノミークラスなど安い運賃でのマイル積算が拡大するので日本から直行便のない豪亜の都市にマイル付きで行けるようになるのでメリットはありそうです。LCC対抗としてマイルを貯めたい人には選択肢が増えると言えそうです。
一方で、プレミアムポイントを一気に大量に積算できるアッパークラスを考えてみると、欧米日の予約クラスに近づくと、70%ビジネスやプレミアムエコノミーが増えて、PP単価が下がることとなるかもしれません。
これは日本発着に関係ないルートでもANAマイレージクラブ修行では影響が大きくはありません。
シンガポール航空側から見ると、これをクリスフライヤー会員にそのまま適用すると激改悪なのでクリスフライヤー会員はクラスは変われど積算率は維持するかもしれません。
最後に
今回は同社リリースによるメリットとは裏腹にマイル修業の観点から考えてみました。
5年前の平子社長(当時)の時にJVについては双方、進めていましたが、その後の世の中の通りであり、ようやく完全形となるところです。
それは、グローバリゼーションに飲み込まれるSQなのか、アジア復権に傾倒するANAなのかよくわかりませんが、アメリカへの投入機材と便数を考えると後者は考えにくく、運賃は買いやすいものが出てくるものの、マイレージは貯める門戸を広げるものの、積算率はどうなのかと言うところと感じます。
この雑感が当たると益々、PP単価の安いルートを見つけて記事を書くのがなくなりそうであります。