韓国の高速鉄道であるKTXの最新車両であるKTX-EUM(イウム)にソウルから冬季オリンピックが開催された平昌(ピョンチャン)まで往復してみましたので、お伝えします。
KTX-イウムとは
KTX-イウムとは韓国の高速鉄道であるKTX路線を走る車両であり、デビューは2021年であります。KTX初の動力分散方式であり、N700S(東海道・山陽新幹線)のように先頭車以外はすべて電動車となっています。イウムは韓国語でつなぐと言う意味であり、ソウルと地方都市をつなぐと言う意味がありそうです。
運用は中央線(清涼里=安東)や江稜線(ソウル=江稜/東海)で運用されています。今後運用の拡大が予定されており、中央線の延伸や京春線や京江線でも計画されています。
編成は6両編成であり、1号車はファーストクラス(日本でいうグリーン車)となっている2クラス制であります。
最高設計速度は286km/h、最高運転速度は260km/hとなっています。E7系が最高設計速度275km/hで最高運転速度が260km/hであるので、釜山線のように最速達と言うよりはソウルとの直通に重きを置いた列車であるように見えます。スピードアップしても時短効果が少ない、北陸や上越新幹線に近い存在に見えます。
日本の新幹線とのサイズ比較は下記のとおりです。
車長*1 | 車幅 | 車高*1 | |
---|---|---|---|
KTX-EUM | 26.25 | 3.15 | 4.00 |
E5系 | 25.00 | 3.35 | 3.65 |
N700S | 25.00 | 3.35 | 3.60 |
E6系 | 20.50 | 2.95 | 3.65 |
*1 中間車両
こうしてみるとKTX-イウムは新幹線級のサイズではありますが、車幅は20cmほど狭くなっているほか、車高が4mとかなり高くなっています。動力分散方式である点と300km/hのスピードを出さなくて良いためなのかもしれません。そして、線路幅は新幹線と同じ標準機の1,435mmであります。
乗車記
今回はソウル駅からオリンピックが開催された平昌まで乗車してみました。時間的には片道90分程の旅程であります。
車内設備
新しい車両だけあり、設備は充実しています。自販機があり、種類は少ないですが、キャッシュレス決済対応でもありました。
無料Wi-Fiがあるので、ローミング利用の渡航者には嬉しいところであります。動画は切れることはなかったので、日本よりも品質は良さそうです。
電源はUSBポートのみかと思うとなんとスマートフォンを置くだけで充電できるQiボックスがありました。ただ、充電中はスマホは楽しめないので、結局はケーブル接続の方がメリットがありそうです。こちらはファーストクラスのみでなく、普通席にもありました。
トイレはE7系やE5系、N700Sと比較しても遜色ない位でした。スペースも広く、問題ありません。
デッキにはジャンプシートが設置されています。週末の繁忙期はフル稼働しそうであります。実際、結構使われていました。Maxからのヒントなのかもしれません。
ファーストクラス
いつも混雑のソウル駅ではありますが、自動改札がないので、ホームに行くのは気楽であります。自動券売機はなぜか海外クレジットカードが利用できないので窓口で切符を購入しました。
週末の昼下がりのソウル発の下りのためか、乗車直前でも優等席は空いていました。KTX-イウムは14:01発の11番線からの出発であります。14:00のKTXと間違わないか気になるところでありますが、韓国区内には過密で出発していると言うことかもしれません。
ファーストクラスは1号車すべてであります。シート配列は2-2配列でありますが、車体幅が新幹線と比較すると狭いためか、シート自体はグリーン車のような幅広感はあまり感じません。
こちらは普通席であります。2-2配列であり、シートとしてはあまり変わらない感じもします。
ただし、シートモニターはファーストクラスのみであります。タッチパネルであります。ネットやYouTubeも見れるという事でしたが、乗車した時は接続できませんでした。
と言うわけでシートテーブルを広げて、テーブルの溝にiPhoneを立てて、動画視聴はできました。なかなかいい溝であります。
飛行機みたく機内誌があります。ファーストクラスのみのようです。毎月発行しているようです。
ファーストクラスのシートのリクライニングは電動タイプであります。あまり使う機会はありませんでした。
スーツケースの置き場はあります。成田エクスプレスでは施錠も有りますが、こちらはありませんでした。扉の操作系などを見るとTGVから遺伝子が多い感じがします。
ファーストクラスの写真を撮っているとあっという間に90分が経過し、平昌駅に到着となります。
平昌駅
平昌駅は2017年12月22日に開業した駅であり、今年で5年と新しい駅であります。名前のとおり、平昌オリンピックのために開業した駅でもあり、長野行新幹線(当時)の佐久平みたいなところかもしれません。イオンはありませんでしたが。
オリンピックが開催された会場まではかなり遠く、弾丸旅程では現地に行くのは無理なので、ソウルに早々に引き返します。
戻る列車は20分後(15:53)であります。キオスクがあり、ビールをひと缶購入します。キオスクは日本と同じようにおばちゃんが多い韓国であります。
マスコット的なものが多くあるのは日本ともあまり変わりません。うっすらと雪が積もっており、ソウルでさえ氷点下ですが、それよりもさらに寒いため、駅構内でないと凍えてしまいます。
ソウル駅でもそうでしたが、大きなモニターのついた券売機の方が高性能でカード決済ができると思うとそうでなく、実は写真のようなコンパクトの発券機の方が高機能であり、海外発行のクレジットカードにも対応していると言うものでした。
週末夕方にソウルに向かう便は人気なのか、満席であり、立席特急券となりました。越後湯沢駅のようにトンネルとトンネルの間の駅のような平昌駅にKTX-イウムが入線してきました。
復路は立席特急券
立席特急券ですが、6号車と記載されており、6号車は立席専用号車かと思い、空いている席に着席。検札が間もなく来るとハングル語で何か言われます。わかりませんでしたが、「座席指定している客が来たら、立ってください。」と言う感じでした。あいにく、2駅ほどで座席指定者が乗ってきて、立席難民となります。
ここから20分程立席となります。笑うくらい満席であり、ドア付近のジャンプシートは満席であり、車いす対応スペースにおばちゃんが新聞紙を敷いて寝ていたりとなかなかであります。
仕方がないので車両連結部の幌辺りでYouTubeで時間を過ごすくらいでした。
清涼里のひとつ前の停車駅で通路側で空いている席があり、そこに着席。窓側の乗客は終始寝ていましたが、清涼里で下車していき、ソウルまでは窓側確保で隣席は空いていました。
ソウルらしい高層マンションが沢山見える景色であります。暮らしてみたい反面、不都合も多そうであり、個人的には地上が近い建物の方が安心できます。
往復で約3時間半でソウルに戻ってきました。弾丸な平昌タッチでしたが、韓国方面では釜山に次いで、初めての街の訪問でもありました。
スピード感
盛岡駅を出発した上りのはやぶさのように一気に320km/hまで加速すると言うスピード感はありませんでした。ソウルを出発してから高速新線区間である西原州駅を過ぎるまでは200km/h以下の感じでした。また、分岐を通過すると結構揺れており、復路の立席ではかなり体を持っていかれる感じでした。
一方で、新線区間はさすがと言う感じであり、揺れはなくなりますが、超高速と言う感じもしない感じでした。それでも上りのKTX-イウムと擦れ違うと編成は短いですが、高速鉄道感はありました。
新線以外では秋田新幹線や山形新幹線よりは新線以外でもスピードは出ている感じでした。新幹線のような加速感はないもの、結構スピードが出ているのは不思議でした。
最後に
2021年にデビューという事で、世界中に旅できない時期に運用開始されたKTX-イウムであり、現地に行くまでその存在に気付かなかったのですが、実際に乗ってみるとかなり快適でした。
韓国では整備新幹線のような区間が続々と計画されており、韓国国内の移動がソウルを中心として便利になりそうであります。