北海道の特急列車のパイオニアである特急おおぞらに始発から終点まで乗車しましたが、トラブル続きでもありましたので、記事にしてみました。
特急おおぞらとは
おおぞらは1961年に誕生し、当初は函館=旭川間を結ぶ列車でした。青函連絡船との接続列車であり、小樽を経由しない、室蘭本線・千歳線を経由する特急列車でありました。
翌年、釧路までの直通運転が一日一往復開始されます。旭川から富良野線を経由していたこともあり、函館を朝5時前に出発し、釧路には16時前に到着と現在では羽田からフランクフルト、ロサンゼルスまで行けそうな時間であります。
1981年に石勝線の全線開通に伴い、おおぞらは石勝線経由となりました。それまでの函館発着から札幌発着と変更されたものの、一往復だけは函館から室蘭本線をとおり、千歳空港駅(現:南千歳駅)から札幌まで行き、再び、千歳空港駅を通り、石勝線に行く、何とも不思議な路線でした。太川さんであれば、真っ先に千歳空港で降りることでしょう。
1997年には振り子式車両の283系気動車が導入され、「スーパーおおぞら」となり、JR北海道がもっとも輝いていた時代でもあります。それまでの飛行機やバスなどの価値を失わせる勢いがあった時代とも言えます。
それから15年後には、北海道と言う過酷な気象条件と高速化という機器の摩耗が激しい中で、トラブルに見舞われ、スピード重視から安全重視となり、所要時間が遅くなっています。
一方で、新型車両261系1000番台を導入しています。
「スーパーおおぞら」と言う名称は2020年春のダイヤ改正でスーパーの名前が消え、約4半世紀ぶりに「おおぞら」となっています。
新幹線の名称として復活した列車「はやぶさ」「さくら」「つばめ」「かがやき」「はくたか」「つるぎ」がある一方で、名門と言われつつも、消えて行った特急列車「白鳥」「はつかり」「あかつき」「彗星」から見ると「おおぞら」は北の大地で60年近く、ほぼ定位置で奮闘しているのはシーラカンス級なのかもしれません。
乗車記
千歳線地上設備不具合で運行見合わせ
ホテルをチェックアウトし、札幌駅までウォーキングを兼ねて歩いてたどり着き、大丸地下で昼食とドリンクを調達します。
ドリンクは極力冷えていることを考慮してギリギリに購入し、改札に。改札に行くとあるべき、おおぞらの案内がありません。
そして、改札前には多くの人がいます。確認すると千歳線(白石あたり)での地上設備不具合により、上下線ともに運転見合わせとなっているとのことです。
下り列車は結構札幌に到着しているようですが、下りはシャットダウンされてしまっています。
こうした時代なので、色々なことが重なり、終日運休とかも想定され、まずは新千歳=釧路間の飛行機を確保します。バスで移動はできるようであり、バックアップは確保します。
30分くらい経過しても進展がないため、応対係に効いてみると、それほどシリアスではないことを聞き、えきねっとで早々に発券してしまいます。
40分くらい経過すると行先表示が正常になり、新千歳空港行きの人を中心に改札になだれ込みます。
おおぞら5号は当初の時間から30分が経過しており、先発列車出発次第、出発とのことで、車内にいるしかなく、当初購入したドリンク以外に新たに購入することが厳しくなってしまいました。
バタバタしていたのか愛称マーク表示も白紙です。一方で、側面のLEDはきちんと表示されています。結局30分超の遅れで出発となります。
千歳線・石勝線前半は順調
札幌駅を30分超の遅れで出発し、先行する列車が多い中、順調に走行し、南千歳までは2分程遅れを回復していました。
改札前で待たされたこともあり、折角購入したカニづくしの弁当をかき込みます。
合わせて買ったワインも少し温くなってしまっていますが、何とか楽しめます。ワンカップワインながら、脚付きのカップは珍しく都内ではあまり見ないものであります。
この後北海道限定と銘打つハイボールを飲みますが、製造場所が守谷となっているのも見るといい勉強です。南千歳手前では、疎開しているALL NIPPON機を見ることもできました。
石勝線に入れば、上りとの行き違いはあるものの信号所区間の長い同路線であれば、回復もあるかなと感じていました。
石勝線では過酷なタイムトライアルもエゾシカが
石勝線に入ると現代的な線路を感じるところもあります。分岐が設置されている場所はシェルターで囲われており、ポイント不良をそもそも防ぐ術が施されており、北海道新幹線でもそうしたことがされているのは、新しい路線と感じます。
南千歳からのタイムリカバーは引き継いでおり、途中のすれ違いの283系でも、もともとの遅延以上になることはないかなと感じていました。
ところが、新得の前で突如「急停車します ご注意ください」とアナウンスが流れ、減速して、停車します。
自動車と違い、列車は急停車と言ってもすぐには停車できないため、衝撃は少ないものの、最後の停止する瞬間は前のめりになります。
停止後に車掌から「エゾシカと衝突した」旨のアナウンスがあります。乗車していたグリーン車は釧路方の先頭車両であり、衝突しているのであれば、何かしら音や振動もありそうですが、何もありません。
停車中に前部のドアに行ってみても、窓に変化もなく、血の臭いもしません。急ブレーキ制動中に衝突して、吹き飛んでしまい、車両には影響がなかったのかもしれません。
車掌さんは怪我した人はいないか確認しており、20分後に運転再開となりました。
これにより、当初の遅れを回復するのはあきらめたのかダラダラとなってしまいました。
新得駅に到着し、乗車している列車の遅延ばかり気にしていますが、普通列車とかはもっと影響があるのかもしれません。駅区間が新幹線級の石勝線もここで終わりです。
おおぞら最大の景色
ここからは根室本線です。池田あたりまで山間の景色ですが、そこからは太平洋の景色が待っています。
台風崩れのあいにくの天気であり、白波どころか荒れ狂って白濁であります。秋口にこうした景色を見られるのは結構珍しいとも言えます。
途中内陸部に入り、湿原のような景色も見えますが、再び沿岸部となります。
白糠停車後は結構、速度アップし、新釧路川を渡ると終着釧路駅です。
結局、遅れの回復はなく、50分程の遅れでの到着となります。札幌駅にいた時間からすると5時間近くもかかった計算となります。
ひらがなの「くしろ」が昭和感満載であります。おおぞらは昭和の時代には北海道として別格にされてきたものの、令和ではそうした恩恵が少ないのかもしれません。
最後に
到着が遅れ、17時前となり、日本でもかなり東に位置する釧路は、夜が近くなっています。台風崩れの強風と大雨でありつつも、かなり寒く、異国感満載です。
さらに、駅前にあるSLの車輪をモチーフとした記念碑や結構味のある駅舎を見ると、雨に濡れて嫌なものの、ここに来てよかったと感じるところでもあります。
おおぞらというJRでもシーラカンス級の特急列車に乗車し、いきなり、出発が遅れたり、エゾシカと衝突したりと言う北海道らしいイベントも経験でき、さらに台風崩れの荒波が見えるのはなかなかいい経験でした。