
ダイヤモンドステータスを長年してきて、数えきれないほど羽田と那覇を往復してきた小生にとって、「OKA」という3レターコードは、もはや単なる空港記号ではありません。それは小生なりの思いがつまった場所であります。プレミアムクラスのシートに身を沈めた瞬間に訪れる安堵の象徴でもあります。
しかし、ふとした瞬間に、心の片隅で小さな違和感を抱いたことはないでしょうか。
「なぜ、那覇(NAHA)なのに、NAHではないのか」
その答えを求めて地図を広げ、赤道を越えてインドネシアの北端へと視線を移したとき、私は「もう一つのナハ」に出会いました。今回は、日本のマイラーがほとんど知ることのない、しかし私たちの旅のアイデンティティと密接に関係している秘境の空港「NAH」ついて触れてみたいと思います。
奪われた「NAH」の正体

航空券を予約する際、私たちは当たり前のように「OKA」というコードを打ち込みます。ですが、国際航空運送協会(IATA)のルールにおいて、空港コードは厳格な「早い者勝ち」の世界であります。
那覇空港が「OKA(Okinawa)」という広域名称を名乗らざるを得なかったのは、世界に先駆けて「NAH」の座を射止めた先客がいたからに他なりません。
その主こそが、インドネシア北スラウェシ州のサンギヘ諸島に位置するナハ空港(Naha Airportです。
日本の那覇から南へ約3,000km。フィリピンとインドネシアの境界に浮かぶこの島にあるのは、私たちが知る那覇空港の喧騒とは対極にある、静寂と大自然に包まれた「もう一つのナハ」なのです。
3,000mの滑走路 vs プロペラの風
もし皆様がダイヤモンドメンバーとして、いつものようにボーイング777や787の重厚な加速に身を任せて離陸して、那覇へ降り立つなら、インドネシアのナハ空港のスペックを聞いて驚かれるかもしれません。
あちらの「ナハ」に横たわるのは、わずか1,600mの細い滑走路が一本だけです。大型ジェット機が降りる余地などはどこにもありません。そこへ舞い降りるのは、ライオン・エア傘下のウイングス・エアが運航する、70人乗り程度の小さなプロペラ機(ATR 72)です。
✈️ 二つのナハ:空港スペック比較
| 項目 | 那覇空港 (OKA) | ナハ空港 (NAH) |
|---|---|---|
| 場所 | 日本・沖縄県那覇市 | インドネシア・サンギヘ諸島 |
| 滑走路 | 3,000m × 2本 | 1,600m × 1本 |
| 主な機材 | B777, B787, A350等 | ATR 72等のプロペラ機 |
| 利用者数 | 約2,100万人(2024) | 数万〜10万人程度 |
| 役割 | 国内外ハブ・自衛隊共用 | 離島住民の生活路線 |
年間2,000万人以上が押し寄せ、モノレールが走り、免税店が軒を連ねる沖縄の那覇空港。対して、一日の発着便数は片手で数えるほどで、ターミナルの外にはバイクタクシーが数台待機しているだけのインドネシアのナハ空港。同じ名前を冠しながら、一方は「都市の動脈」として、もう一方は「絶海の孤島の命綱」として、それぞれの空を支えています。
おまけですが、NAHを目にするとNHを想起するのは青組のせいなのでしょうか。
秘境の観光:青い海と「海底火山」の誘惑
この「もう一つのナハ」があるサンギヘ諸島は、観光地として整備された沖縄とは異なり、手つかずの自然が残る真の秘境です。しかし、そこには冒険心をくすぐる独自の魅力が溢れています。
特にダイバーの間で伝説的に語られるのが、「マハンゲタン海底火山(Mahangetang Underwater Volcano)」です。海中からプクプクと火山ガスが泡となって立ち上る幻想的な光景の中を潜る体験は、世界でも類を見ません。また、かつての地震で海に沈んだ村がそのまま残る「ドロウンド・ヴィレッジ(Drowned Village)」といった、神秘的なダイブスポットも点在しています。
陸に目を向ければ、空港の背後にそびえるサヘンダルマン山(Mount Sahendaruman)が、バードウォッチャーたちの聖地となっています。ここには世界でこの島にしか生息しない「サンギヘヒタキ」などの希少種が息づいており、原始の森の息吹を肌で感じることができます。沖縄の国際通りや美ら海水族館のような華やかさはありませんが、ここにあるのは「地球の鼓動」そのものです。
那覇(OKA)からナハ(NAH)行くには

19年間、効率的にプレミアムポイント(PP)を稼ぐこと、いわゆる「修行」に明け暮れてきた私のような人間にとって、このインドネシアのナハを目指すとなると、ある種の究極的な挑戦と言えるかもしれません。
推定ルート:3回の乗り継ぎと24時間の壁
那覇から台北(チャイナエアライン等)か香港(キャセイ等)へ。まずは手慣れた空から日本を脱出します。
ジャカルタやシンガポールへ移動。スターアライアンスの翼を選び、ラウンジで英気を養いたい区間です。
拠点都市マナドへ。シンガポールからScootが飛ぶこともありますが、基本は国内線の乗り継ぎ。ここからが修行の本番です。
マナドで一泊。翌朝、ウイングス・エアのATR 72でセレベス海を越えれば、ついに「もう一つのナハ」へ降り立ちます。
なぜなら、このルートにはANAのコードシェアもなければ、スターアライアンスの優遇特典もほとんど存在しないからです。
まず、沖縄(OKA)から台北や香港へ飛び、そこからジャカルタやシンガポールを経由して、スラウェシ島の拠点都市マナドへと入ります。ここまでは、時間が許せば、エリートステータスの恩恵を受けられる「文明の旅」と言えるでしょう。しかし、マナドからナハ(NAH)への最終区間に足を踏み入れた瞬間、旅の性質は一変します。
早朝のマナド空港で、湿り気を帯びた熱気の中に響くプロペラ音を聞きながら、小さなタラップを登ります。眼下に広がるのは、観光化される前の、真の意味で「青い」セレベス海です。そこには、PP単価やアップグレードポイントの残数を計算する思考を停止させるほどの、圧倒的な「旅の原点」が広がっています。
ちょっと前にザンジバルからダルエスサラームに行くのとオーバーラップするフライトが想像されます。
「もう一つのナハ」が教えてくれること
沖縄の那覇が「NAH」というコードを使えなかったことは、一見すると不便な出来事だったかもしれません。ですが、そのおかげで私たちは「OKA」という独自の響きを手に入れ、同時に、海の向こうにある名もなき小さな空港との、目に見えない繋がりを持つことになりました。
もし皆様がステータス修行の果てに、空の旅に新しい刺激を求めていらっしゃるのなら、この「紛らわしいコード」を訪れるのも良いかもしれません。
⚠️ 予約注意!世界中の「紛らわしい」空港たち
- ● シドニー(SYD vs YQY)
オーストラリアの大都市か、カナダの静かな町か。大陸が違います。 - ● サンノゼ(SJC vs SJO)
シリコンバレーか、コスタリカの首都か。綴りは全く同じ「San Jose」です。 - ● 羽田とホノルル(HND vs HNL)
マイラーにはお馴染みですが、一文字違いの「D」と「L」に要注意。 - ● 大島(伊豆 vs 奄美)
日本国内の「大島」トラップ。特典航空券の予約時は再確認が必須です。
このほかにも紛らわしい空港コードはあります。マイル修行をするならYQYは必ず目にしているかもしれません。あとは以外ではありますが、HNDとHNLも一文字違いであります。個人的には: AAdvantage修行時代に行ったサンノゼからAviancaでSJOに行ってみたいところであります。そう言えば、ANAサンノゼ便はどうなってしまったのでしょう。
最後に

「那覇(OKA)からナハ(NAH)へ」
ステータス修行の果てに、空の旅に新しい刺激を求めるならば、この「紛らわしいコード」の裏側に隠された物語を追いかけてみるのも面白いかもしれません。ダイヤモンドの輝きを一旦ポケットにしまい、プロペラ機に揺られて辿り着くその場所には、私たちが忘れかけていた「空を飛ぶことの純粋な驚き」が待っているはずです。
次に沖縄の那覇空港に降り立ち、手荷物タグに印字された「OKA」の文字を見たとき、皆様はきっと、遥か南の島で潮風に吹かれている「もう一つのナハ」を思い出すことになるでしょう。
小生が、かろうじて記憶にある、フレーズでお終いとします。「ナハ、ナハ、ナハ、ナハ、ナハ…!」