
今年もこの季節がやってきました。私のメイン決済口座であり、空の旅の生命線でもある「ANA VISAプラチナ プレミアムカード」の更新です。
2026年、マイルを取り巻く環境は激変しています。相次ぐ年会費の値上げ、プライオリティ・パスのサービス改定、そしてAIの台頭による「旅の組み立て方」の変化。「年会費10万円弱のカードを、果たして老後まで持ち続ける価値はあるのか?」そんな自問自答を繰り返しながらも、今年も「更新」のボタン(心の中)を押しました。
今回の更新を機に改めて整理した、このカードの「現在地」と、これを選び続ける心理を、4つの視点で紐解いてみたいと思います。
基本スペック
まずは、現在のスペックをおさらいしましょう。多くのカードが還元率を改悪する中、このカードは「牙城」を守り続けています。
圧倒的なマイル還元率
このカードの真骨頂は、迷う必要のない「高還元」と「シンプルさ」にあります。
通常還元率:1.5%(100円=1.5マイル)
200円につきVポイント1ptが貯まり、3マイルに交換する仕組み。
ポイント移行手数料は「完全無料」。他社カードで発生する年間数千円のコストが不要な点は、地味ながら大きな差となります。
ANA航空券決済:3.5%還元
通常分1.5%に加え、プレミアムカード限定特典の「+2.0%」が加算。
年間100フライト近い修行僧にとって、この3.5%は次回の特典航空券を**「全自動」で生成し続ける装置**に他なりません。
「ビジネスクラス」への薪代わり
最新機材への搭乗を目指すなら、マイルという名の「軍資金」確保が最優先課題です。
そして、ボーイング777-300ERの「THE Room」に加え、この夏からはボーイング787-9でも「THE Room FX」が始動します。
特典航空券の確保や、来年度からさらに重要度が増す「アップグレードマイル一本足打法」を完遂するためには、VISAプラチナの蓄積スピードがやはり最適解となります。
更新ボーナスの微妙な魔力:10,000マイルの価値
年会費の支払いに伴い、来月には私の口座にも10,000マイルが積算される予定です。
10,000マイル = 決済額 約67万円分の価値であります。「たった1万」と侮るなかれ。決済で貯めようと思えば67万円の利用が必要なこの「燃料」が、更新するだけで無条件に補給されます。年会費高騰による心理的負担を、このボーナスマイルが劇的に和らげてくれるのです。
- ✈️ ローシーズンの羽田ー那覇(片道)が賄える
- 💺 国際線プレエコからビジネスクラスへのアップグレードの足しになる
- 💰 10,000スカイコインに交換して、次回の修行資金の一部に充てる
特に私は、3月にアップグレードポイントをスカイコインに替えるという「敗北」を喫したばかり。なかなか出かけなくなり、マイルは貯まる一方で、さらにマイルが貯まるところでもあります。
セキュリティの「鉄壁さ」は、旅人にとって福音か、あるいは足枷か

三井住友カードといえば、業界内でもデフォルトでは「セキュリティが非常に厳しい(きつめ)」ことで有名です。特に、普段の生活圏から離れた場所での決済や、海外の聞き慣れない航空会社のサイトでの航空券購入など、我々が日常的に行うアクションに対して、瞬時に「不正利用の疑い」として検知し、決済をブロックすることがあります。
果たしてこの「きつめのセキュリティ」は、良いのか悪いのか。私の結論は「短期的には不便だが、長期的には絶対的な安心感である」ということです。
デメリット:ここ一番の「弾丸予約」で牙を向く
一番のストレスは、深夜に海外発券の格安チケットを見つけ、座席を確保しようとした瞬間に「決済不可」となるケースです。三井住友のシステムが「海外サイトでの高額決済」を異常と判断し、不正検知のロックをかけてしまうのです。
これまで、台湾新幹線や東欧の航空会社、ラディソンホテルといった著名なサービスでさえロックの対象となり、その都度解除対応に追われました。一分一秒を争う予約シーンで、やむなくAMEXで決済を代替するといった場面も少なくありません。
【解決の手間とリスク】
すぐに届くSMSやアプリの通知から「自分での利用」を回答すれば即座に解除はされます。しかし、そのわずか数分の間に、狙っていた座席や残席わずかな料金クラスが消えてしまうリスクは常に付きまといます。
【「頑丈さ」の裏にある不便とコスト】
また、セキュリティが堅牢である反面、煩雑さも目立ちます。二要素認証の通知が届く程度ならまだしも、結局は不正利用の懸念から「カード再発行(番号変更)」を余儀なくされることがあります。
番号が変わるだけならまだ対応のしようもありますが、厄介なのは公共料金や携帯電話などの継続決済です。通信会社によっては自動的に振込用紙による請求に切り替わり、一回あたり500円ほどの手数料を徴収されることもあります。こうした事務的な手間と実質的なコストのロスを考えると、「本当にこれが最善なのか」と疑問を感じざるを得ません。
【セキュリティの本質への疑念】
これはカード会員の被害を守るためというより、不正利用による損害を補填する「保険料(カード会社側の負担)」を抑えるための、極端な防衛策のようにも感じてしまいます。
値上げの歴史でもある年会費
【年会費改定の歴史:15年の沈黙を破る】
- 2010年〜2024年
本体価格 80,000円(税抜)を維持
※消費税率の変動(5%→8%→10%)により、税込価格は84,000円〜88,000円と推移。 - 2025年12月10日〜
新価格 96,800円(税込)
※約15年ぶりの本体価格改定。ついに10万円の大台が見える価格帯へ。
※2025年12月10日以降の年会費支払い分より適用
「ANA VISAプラチナ プレミアムカード」を語る上で避けて通れないのが、その「年会費の変遷」です。このカードの歴史は、ある意味で日本のクレジットカード業界における「インフレとコスト増」の縮図と言えるかもしれません。
15年の沈黙を破った「安定」からの脱却
このカードの最大のアイデンティティは、2010年の誕生以来、長らく「本体価格80,000円(税抜)」を死守してきたことにありました。
2010年〜2024年: 消費税率が5%から8%、10%へと段階的に引き上げられるたびに、支払額は84,000円、86,400円、88,000円と「微増」はしましたが、カード会社側の取り分である本体価格はずっと変わりませんでした。
2025年12月10日〜: ついにその沈黙が破られ、本体価格が88,000円へと引き上げられました。結果、我々が支払う総額は**96,800円(税込)**となり、10万円という大台が目前に迫る形となったのです。
「相対的な安さ」という戦略的ポジション
一見すると約1万円の値上げは手痛いものですが、ライバルたちの動向を見ると、三井住友VISAの苦渋の決断が見えてきます。
かつて競合した「ANA ダイナース プレミアム」や「ANA アメックス プレミアム」が、2025年から2026年にかけて16万〜20万円近くまで一気に値を上げたため、実は「ANA VISAプラチナ」は、値上げしてもなお、マイル還元率1.5%を維持する最上位カードとして「最も安価な選択肢」という独特のポジションを維持することになったのです。
プライオリティパス特典は味の落ちたラーメン店

かつての「ANA VISAプラチナ プレミアムカード」におけるプライオリティ・パス(PP)は、まさに活気あふれる名店のような存在でしたが、今やその満足度は「代替わりして味が落ちたラーメン屋」のような寂しさを漂わせています。
以前はプラスチック製の会員証を提示するだけで、ラウンジ利用はもちろん、国内空港の「ぼてぢゅう」をはじめとする提携レストランで豪華な食事が振る舞われるという、修行僧にとっての「最高の隠し味」が効いていました。
しかし、2025年4月の改定を境に状況は一変します。デジタル会員証への移行という名の「合理化」が進む一方で、国内レストラン特典という「秘伝のスープ」が対象外となり、現在は純粋なラウンジ利用のみという、トッピングの消えた素ラーメンのような寂しいスペックに落ち着いてしまいました。
「無制限利用」という麺のボリューム(回数)は維持されているものの、かつての「寄れば美味しい思いができる」という期待感が薄れた今のPPは、それでいて待ち行列がある、空腹を抱えて暖簾をくぐった往年のファンに、時代の変化という少し苦い後味を残しているのです。
「老後も使い続けるか」という究極の選択

最近、よく考えることがあります。「サラリーマン(ビジネスマン)としての現役を退いた後、この高額カードをどうすべきか?」まだ、先と思いつつも、意外と早く来る老後でもあり、長い老後にもなりそうです。不摂生がたたり、人生も弾丸トラベルで終えるかもしれませんが。
私の結論としては、「終活するまで持ち続ける可能性が高い」です。その理由は3つあります。
クレヒスは「資産」なのか
退職後にこのクラスのプラチナカードを新規で申し込むのは至難の業です。現役時代に積み上げた「19〜20年のマイレージランの歴史」と、三井住友カードとの「信頼関係」を一度リセットするのは、あまりに勿体ない。一度解約すれば、二度と戻ってこられない「聖域」とも言えます。
「修行」は老後のQOLを維持する
ANA ダイヤモンドサービスを維持するためのフライトは、私にとって単なる移動ではありません。広大な空港内を強制的に歩かされる適度な運動、ラウンジでのささやかな酒盛り、そして何より「次はどこへ行こうか」とルートを練る高揚感――。これらはまさに「三つ子の魂百まで」であり、私にとっては老化を防ぐ最高の特効薬なのです。更新ボーナスの10,000マイルは、この「健康維持活動」への年間パスポート、あるいは招待状のようなものだと考えています。
また、複雑な路線を組み合わせるマイレージランは、意外にも高度に頭を使う作業です。昨今のAIの劇的な進化により、自ら思考せずとも最適解が出る時代になりつつありますが、それゆえに思考停止に陥るリスクも孕んでいます。しかし、老後のボケ防止という観点では、AIを適度に使いこなしながらも、自ら複雑なパズルを解くように旅を組み立てるこのルーティンこそが、ちょうど良い知的刺激になるのかもしれません。
決済額が減っても「還元率」が支えてくれる
年金生活になれば、確かに現役時代のような爆発的な決済(年間数百万円規模)は減るかもしれません。しかし、固定費や生活費の支払いを集約すれば、1.5%の還元率は「少ない出費から最大のマイル」を生み出してくれます。三井住友VISA インフィニットのように「年間700万使わないと特典が最大化されない」カードよりも、基本性能が高いこのプラチナの方が、むしろリタイア後のライフスタイルに合致しているのです。
最後に

結局のところ、頻繁にANA便を利用し、ライフソリューションとして日常の決済をこの一枚に集約させている以上、マイルが最も効率よく貯まるという現実に抗うことはできません。「味が落ちた」と揶揄したプライオリティ・パスの現状や、迫りくる老後への不安を天秤にかけつつも、現時点での最適解はやはり「更新」の一択でした。
そして、今回の更新にはもう一つの「おまけ」とも言える理由があります。
先日、ANAカードの表面からスターアライアンスのロゴが消えるという話題に触れました。私の現在のカードの有効期限は2027年早々。逆算すると、次回の更新カードは今年の年末から来年初頭にかけて手元に届くはずです。
その新しい券面が、単にロゴを削ぎ落としただけのものなのか、あるいはカード番号が裏面に移行した最新のナンバーレスデザインへと刷新されているのか。その「正体」をこの目で見届けることも、割高になった年会費をあえて払い、このカードを維持し続ける密かなモチベーションとなっているのです。