通期見通しで売上高が前年比1.23兆円も吹っ飛ぶような苦境に突如直面しているANAホールディングスですが、事業構造改革の1つとして第3ブランドの国際線LCCの立ち上げを示しており、どういったエアラインになるか想像してみました。また、マイル修行のの敵か味方か考えてみました。
史上、稀にみる決算
過去最高益だったのに
新コロがなければ、おそらく東京オリンピックは歴代のオリンピックの中でもかなり盛り上がり、全国各地、外国人だらけの日々が続いていたと予想されます。
そして、それに向けてでっかい飛行機を用意し、海外との直通路線を準備していたANAにとっては文字通り、書き入れ時であり、2021年3月期決算はおそらく過去最高を記録していたでしょう。
しかし、1月ぐらいから武漢で騒ぎとなっていた新コロが横浜港停泊のクルーズ船でクローズアップされ、その後、あっという間に感染が拡大し、全地球上(台湾など水際で止めている所もありますが)で席巻してしまいました。
そして、国際間の移動は感染拡大となるため、各国が挙って入国制限をはじめ、さらに、国内でも移動することが危険に思われ、運輸業は大打撃を受けます。
いきなりどん底の過去最高の落ち込み
ANAにおいても国際線はほぼ収益はないと同然、国内線も採算に乗せるのに厳しい搭乗率にもかかわらず、新コロ対策のコストがかかるほか、変更手数料減免など、今まですべていい方に回っていたものが突然、逆回転しだしたような状態となっています。
同社の業績予想では通期売上は7,400億円(前年比▲12,342億円、▲40.0%)と上場している企業でこれほど売上が急落するのは見たことがないと言えます。
EBITDAを見ても通期見通しは▲3,240億円と厳しい状況であり、新コロがなければ過去最高の業績だったはずが、過去最高の落ち込みとなってしまっています。
数字で語るだけでなく、そこに働く人が4万人超存在し、業務の内製化や多くの企業に出向を要請し、いきなり無職と言うことを極力回避する方法を尽くしていますが、その衝撃ははかり知り得ません。
構造改革案の第3ブランドの国際線LCCとは
ANAホールディングスより
いつ設立して、いつから就航するのか開示されていませんが、現時点で分かっているのは資料やトップの会見から以下のとおりです。
LCC事業の知見とグループリソースを有効に活用
低コスト運航でグループのネットワークを補完
ANA・Peachでカバーできない中・低単価需要の取り込み
ANA傘下のエアー・ジャパンを母体に
東南アジア(シンガポール・バンコクなど)における需要の取り込み
以上からすると、JAL傘下のZIP AIRと似たモデルであり、アジア地域ではスクートや一度手を組んだエアアジアが仮想敵国とも言えそうです。
新たなゾーンでの需要取り込みと言えば良いですが、既にプレーヤーが揃っている現況ではどのような価値観を出すのかが注目点と言えます。
エアー・ジャパンを活用するのは知見が大きく、ここ20年くらいのアジア路線はエアー・ジャパンが支えていたと言っても過言ではなく、国際線ではかなりのオペレーターでもあります。
チャンギ空港のエアー・ジャパン運航の共同運航便のANA便については、ゲートで必ずANA以外にエアー・ジャパンとアナウンスされていた記憶があり、NQ便で誰が乗るのか不思議に感じたくらいです。
コロナ禍以前から画策されていたのでは
第3ブランドの国際線LCCについては、あまりに準備されていた感もあります。一方で新コロは人類の予想をはるかに超える影響を及ぼしています。
もしかしたら、アフターオリンピックの需要の冷え込みを低価格方向にシフトして喚起するために、選択肢の一つとして画策されていたのかもしれません。
売上が半減近くなる中で、こうした新ブランドを思いつき、立ち上げるとすれば逞しいとしか言えませんが、何か伏線があり、前倒したとも考えられます。
説明資料のカラーリングが気になる
個人的に気になったのが、説明資料における第3ブランドを示す色であります。銀座線色と言うかパソコンで表示される金色と言うか微妙なところであります。
黄色寄りであればスクートのようなカラーであり、金色となれば台湾・新規気鋭のスターラックス航空(星宇航空)のような色合いも考えられます。
ライバルJAL傘下のZIPAIRは黒と白であり、それと対抗するようにもっとも遠い色である黄色や金色と想定もされます。
社名についても気になりますが、黄色寄りであれば、安直ですが、ピーチの弟分でバナナ、オレンジ、パパイヤとかも考えられます。
バナナはバナナ、バナナと言われそうですし、バナナマンをキャラクターに使えそうであり、意外といいかもしれません。
子供にはバナナの受けは良さそうですし、バナナは万国共通でもあり、意外といいかもしれません。
海外マイル修行キラーとなるのか
東南アジア路線となれば、マイル修行の聖地でもあり、その路線から移管されるとコードシェアでもしない限りはマイナスとなります。
LCCであり、競合となるスクートやエアアジア対抗となるとシンガポールやクアラルンプールへの就航も想定され、マイル修行キラーも想定されます。
ZIPエアーではJAL運航路線と重複していますが、どうなるのか最も興味があるところです。
最後に
絶好調から絶不調になるという悲劇的な状況でも銀行のプレッシャーもあり、構造改革を提示しており、現状あるもので路線移管や余る機材の退役がメインと思っている中で、新ブランド立ち上げは少し違和感もありました。
対抗するJALが国際線の中距離においてLCCを展開しており、その対抗としては正解かもしれませんが、事業構造改革に本当に寄与するのか不明であります。
まずは現金確保して、LCC事業は推進するものの、事態が好転したら、再びモヒカン・トリトンブルーにリペイントすのような再編もあるかもしれません。