
羽田からの乗り継ぎを経て、久しぶりに体験した那覇空港の「バスラウンジ」の風情。そして、B737-800のプレミアムクラス機内食と、梅雨の雲海を抜けて静岡へと至る2時間強のフライト。さらには、降機後に訪れた大井川鐵道との結節点「金谷駅」での鉄道ノスタルジーまで、お伝えします。
- 旅の始まりは那覇空港。ANA SUITE LOUNGEでの静謐なひととき
- 何年ぶりか。懐かしい「38番ゲート」とバスラウンジへ
- ランプバスの車窓から思い出す、LCCの歴史と空港の変遷
- 本日の座席は「B737-800」の1K。レトロプレミアムの貫禄
- 第1滑走路「18L」からのスマートな離陸と、梅雨の雲海
- プレミアムクラス機内食 野菜たっぷり「コンパクトお弁当スタイル」
- 静岡への降下、見え隠れする駿河湾と大井川河口
- 富士山静岡空港へ着陸。コンパクトゆえの圧倒的な快適さ
- 最後に
旅の始まりは那覇空港。ANA SUITE LOUNGEでの静謐なひととき


旅のスタートは、熱気あふれる那覇空港(OKA)から。
今回は羽田空港からの乗り継ぎで那覇へと降り立ちました。那覇空港に到着すると、独特のねっとりとした南国の空気が「沖縄にやってきた」という実感を湧き立たせてくれます。
しかし、今回の目的地はさらにその先、静岡です。
次のフライトまでの限られた時間を過ごすため、いつものように最上級のホスピタリティが約束された「ANA SUITE LOUNGE(ANAスイートラウンジ)」へと足を向けました。
那覇空港のプレミアムクラスやステータス会員向けのラウンジは、時間帯によっては非常に混雑することがあります。特に羽田や伊丹行きの大型機(B777やB787)の出発が重なる時間帯は、ラウンジのシートを探すのも一苦労ということも珍しくありません。
しかし、この日は幸運にも大きな混雑は見られませんでした。
すでに羽田からのフライト中、あるいはラウンジでも少し喉を潤していたため、ここでは出発前の最終チェックをしつつ、静かに流れる贅沢な時間を贅沢に「30分程」過ごすことにしました。旅の合間に訪れる、この「何もしない贅沢」こそが、ラウンジ滞在の醍醐味です。
何年ぶりか。懐かしい「38番ゲート」とバスラウンジへ

ラウンジで贅沢な時間を過ごした後は、いよいよ静岡便の搭乗へと向かいます。
那覇空港の2階、きらびやかなブランドショップが並ぶ「DFS(免税店)」の目の前にあるエスカレーター。ここを降りていく時の、少し冒険心がくすぐられるような感覚が私は好きです。
「何年ぶりでしょう。」
エスカレーターを下りた先にあるのは、1階の「バス搭乗ラウンジ」。
主要幹線を飛ぶ大型機のように、2階からボーディングブリッジ(搭乗橋)を渡って直接機内へ入るのではなく、一度地上に降りてバスに乗り込み、駐機場の飛行機へと向かうスタイルのゲートが集まる場所です。
今回指定されたのは「38番ゲート」。
この数字を目にした瞬間、私の脳裏に一気に記憶のフラッシュバックが起こりました。
「そうだ、ここは約18年前、石垣(ISG)行きに搭乗して以来だ……!」
まだ石垣島に旧空港(カラ岳ではない、街の近くにあったあのスリリングな旧石垣空港)があった時代。あの頃も、ここからバスに揺られて向かったものでした。
月日が流れるのは早いものです。空港のターミナルは拡張され、新しく美しくなりましたが、この1階のバスラウンジ特有の「これから飛行機に乗り込むぞ」という独特の旅情と少しの雑多感は、昔と変わらずそこに残っていました。
ランプバスの車窓から思い出す、LCCの歴史と空港の変遷


改札を抜け、ANAのロゴが入った大型のランプバスに乗り込みます。
羽田空港のバス搭乗といえば、広大な敷地を延々と走り、時には「これ、本当に同じ空港内なのか?」と思うほど移動に時間がかかることがありますが、那覇空港はコンパクト。
バスはスムーズにディーゼル音を響かせながら走り出し、ものの数分で本日お世話になるスマートな機体の足元へと到着しました。
バスの窓から駐機場の飛行機たちを眺めていると、ふと昔の記憶が呼び起こされます。
今でこそ、LCCのピーチ(Peach Aviation)やジェットスターなどは、一般の航空会社と同じく綺麗で便利な国内線旅客ターミナル(かつての国内線・国際線連結ターミナル部分など)に着岸し、ボーディングブリッジを使って快適に乗降できるようになっています。
しかし、10年くらい前は、那覇空港におけるピーチの搭乗口といえば、現在の場所ではなく、はるか遠く離れた「貨物ターミナル内」の「とんでもない」位置にありました。
プレハブ小屋のような、お世辞にも豪華とは言えない簡素な倉庫風のターミナル。そこに詰め込まれ、歩いてタラップを上り下りしていたあの時代を考えると、現在の那覇空港の利便性の向上は目を見張るものがあります。そんな航空業界の歴史の変遷に思いを馳せられるのも、バス搭乗ならではの醍醐味と言えるでしょう。
タラップを一段ずつ踏み締め、機内へと足を踏み入れます。
本日の座席は「B737-800」の1K。レトロプレミアムの貫禄

本日、静岡空港まで私を連れて行ってくれる頼もしい相棒は、ボーイングのベストセラー中型機「B737-800」です。そして指定した座席は、最前列の窓側、「1K」。
この機材、ANAの地方路線の主力を担う大ベテランですが、コックピットや客室を最新鋭にした「737 MAX」へのリプレイス(置き換え)計画が進んでいる(あるいは控えている)影響からか、シートの質感やコントロールパネルのデザインには、どこか「一世代前」の古めかしさが漂っています。
厚みのあるシートクッション、ゆったりとしたシートピッチ、そして体を包み込むような大きなヘッドレスト。座ってみれば、「やはりプレミアムクラスだな」という抜群の安定感と貫禄をしっかりと肌で感じることができます。
何より、最前列の1K席は、足元の広さが段違い。壁までの空間に余裕があり、機窓の景色を独り占めできる最高の特等席です。
第1滑走路「18L」からのスマートな離陸と、梅雨の雲海

離陸の準備が整い、飛行機は静かにプッシュバックを始めました。
本日の離陸滑走路は、陸地側(ターミナル側)に位置する「第1滑走路の18L」です。
現在の那覇空港は、沖合に新設された第2滑走路(18R/36L)との2本の滑走路で運用されています。一般的に「着陸は沖合の第2滑走路、離陸はターミナルに近い第1滑走路」というパターンが多く採用されているようです。
風向きや管制の状況によっては、はるか南側の瀬長島方面まで長い距離をタキシング(地上移動)してからの離陸となることもありますが、本日選択されたターミナルに近い「18L」は非常にありがたい存在。
なんと言っても、「ドアクローズから離陸までの時間が圧倒的に短い」のです。
滑走路の手前で何機もの着陸待ちに巻き込まれることもなく、機体はスムーズに滑走路へと進入。力強いエンジン音とともに、あっという間に那覇の空へと舞い上がりました。

季節は梅雨。
地上はどんよりとした曇り空、あるいは今にも雨が降り出しそうな空模様でしたが、高度を上げるにつれて機体は分厚い雲を突き抜けていきます。
雲を抜けた先に待っていたのは、まばゆいばかりの青空と、眼下に広がる純白の雲海でした。
上空からの強い太陽光が、遮るもののない一面の雲の絨毯に反射し、客室全体を強烈に照らし出します。まるでスタジオの巨大な「レフ板」の中にいるかのような、透き通った明るさ。これぞ、雨の季節のフライトにおけるある意味、隠れたご馳走です。

ここで、プレミアムクラスの定番アイテムである「機内スリッパ」に履き替えるか一瞬悩みますが、本日はあえてスリッパを取り出さず、履いてきたスニーカーをそっと脱ぐだけに留めました。
俗にいう「スリッパを持ち帰る(=スリッパ修行)」こともせず、ただ純粋に足元を解放し、リラックスした状態でこれからのフライトを楽しむことに集中します。
プレミアムクラス機内食 野菜たっぷり「コンパクトお弁当スタイル」

水平飛行に移ると、お楽しみの機内食の時間です。
羽田〜那覇のような大型の国内主要幹線では、陶器の器に盛られた温かい食事が提供されますが、今回の那覇〜静岡のような地方・中距離路線では、四角いボックスに美しく収められた「コンパクトな弁当スタイル」での提供となります。
とはいえ、中身のクオリティは手抜き一切なしの本格派。今回のメニューをさっそく開封してみましょう。

お食事
- 玉子焼き、鯖味噌煮、きんぴら牛蒡
- パパイヤイリチー
- 炊き合わせ
- プルコギ
- 赤紫蘇ご飯あさり煮添え
- 味噌汁
429 kcal ※味噌汁を除く
※味噌汁のカロリー/アレルゲン情報については客室乗務員にお尋ねください。
ドリンクはキリッと冷えた白ワインをチョイスしました。
よくよく考えてみれば、羽田からの移動も含めた累計で、今日の私はすでにかなりの量のお酒を消費してしまっています。雲の上のアルコールは回りやすいと言いますが、心地よい酔いが旅情をさらに加速させます。
お弁当を開けてみて感じたのは、「意外と野菜が多い」という嬉しい驚きでした。沖縄伝統の「パパイヤイリチー(パパイヤの炒め物)」や「炊き合わせ」など、品数が豊富で滋味深い味わいです。
少し話は変わりますが、修行の次の日は高確率で新しい吹き出物(ニキビ)ができてしまいます。
プレミアムクラスの豪華な食事が原因なのか。
それとも、提供されるアルコールを貧乏性根で飲み過ぎてしまうからなのか。
はたまた、おつまみに出てくるあのおいしい「おつまみ(あられ)」の食べすぎか、単なる寝不足のせいなのか。
原因は科学的には不明ですが、とにかくマイル修行から帰宅した翌日の私の肌は、高確率でボロボロに荒れ狂います。それでも、この贅沢な空間での飲食の誘惑には勝てないのです。
静岡への降下、見え隠れする駿河湾と大井川河口

至福の時間はあっという間に過ぎ去ります。
飛行距離としては羽田便よりも短く感じられるため、体感時間はさらにマッハです。巡航速度で東へ進んだ機体は、気がつけば富士山静岡空港(FSZ)に向けてゆっくりと降下を開始していました。

この路線、天気が良ければ着陸前の旋回時に、機窓から大迫力の「富士山」が拝める絶景ルートのはず。しかし、この日はあいにく富士山周辺も雲に覆われており、最後までその美しい雄姿を現してはくれませんでした。山頂の神様は、少々ご機嫌斜めだったようです。
それでも、雲の下に降りてくると、眼下には穏やかな駿河湾の海が広がっていました。
瀬戸内海のように島々が点在する内海とはまた違い、太平洋のスケール感を持ちながらも、どこか優しく、穏やかな印象を抱かせるのが静岡の海の魅力です。

さらに高度が下がると、機窓にダイナミックな大井川の河口が飛び込んできました。
近年、雨量が少なかった影響でしょうか。
本来であれば豊かな水を湛えているはずの広大な川幅の大部分が、干上がった「白い砂地」となって露出しています。その砂地の間を、細い網の目のように水流が幾筋も流れる様子は、まるで抽象画のよう。空の上からでなければ決して見ることのできない、極めて珍しく、かつ地球の営みを感じさせる美しい景色でした。
富士山静岡空港へ着陸。コンパクトゆえの圧倒的な快適さ

軽い衝撃とともに、機体は富士山静岡空港の滑走路にしなやかにタッチダウン。
この空港は牧之原台地という「丘の上」に造られた空港であるため、着陸した瞬間から周囲の視界がパッと開けます。遠く西側のコンタ(稜線)には、美しく連なる山々のシルエットが見え、非常に開放的で景観に優れた素晴らしいロケーションです。

主要幹線の巨大空港だと、着陸してから駐機ゲートにたどり着くまで延々と誘導路を走り、さらには前の飛行機が詰まっていて機内で待たされる……なんてことが日常茶飯事です。
しかし、ここ静岡空港にそんなストレスはありません。
他の便との競合もなく、誘導路もゲートも完全にクリア。着陸後、ものの数分でピタッと停止し、すぐさま降機のアナウンスが流れます。
運行便数こそ決して多くはありませんが、館内は非常に立派で、木をふんだんに使った温かみのあるターミナルビル。地方空港が持つ「機動力の高さ」と「施設の綺麗さ」が完璧に融合しています。

ここからは陸路の旅です。本日は空港から、最寄りのJR駅へ向かう路線バスを利用することにしました。
実はこれまでにも、「静岡駅」から空港へアクセスしたり、空港のターミナルを中継地点として別の場所へ乗り継いだ経験はあったのですが、「静岡空港から、直接バスに乗って移動する」というのは、私にとって今回が完全に初めての体験でした。

乗車したバスは、牧之原台地の茶畑をすり抜けるように坂を下っていきます。
驚くべきはその近さ。発車してからわずか12分という短時間で、JR東海道本線・大井川鐵道の交点である「金谷(かなや)駅」へ到着してしまいました。
金谷駅のホームに立つと、独特の地形に目を奪われます。
駅のすぐ目の前(東西)には険しい山が迫っており、熱海駅や新神戸駅、あるいは新幹線の越後湯沢駅のように、「駅を出たら即トンネル」という、鉄道好きにはたまらないエッジの効いた構造をしています。
この金谷駅の線路を眺めていると、昭和の鉄道黄金時代のノスタルジーがふつふつと湧き上がってきます。
かつて、東海道新幹線が開業するよりも前。
この地には、国鉄の最高峰ビジネス特急として一世を風靡した「151系 特急こだま」が走っていました。その編成の先頭(または最後尾)には、現在のグランクラスやプレミアムクラスすら凌駕するほどの超豪華設備を誇った伝説の車両「パーラーカー(クロ151)」が連結されていたのです。
「その昔、あの誰もが憧れたパーラーカーを繋いだ『こだま』が、まさにこの目の前のレールを、凄まじい誇りとともに駆け抜けていったんだな……」
沖縄から飛行機でひとっ飛びしてきた現代の「プレミアムクラス」の旅が、かつての地上の最高峰「パーラーカー」の記憶へと、時空を超えてカチリと繋がった瞬間でした。なんという感慨深さでしょう。
最後に
沖縄の青い海(と分厚い梅雨の雲)から始まり、地方空港の快適さを経て、東海道の歴史薫る金谷駅へと至った今回の旅。
主要幹線をただ往復するだけのマイル修行も楽しいものですが、ときにはこうした「少し外れた地方路線」を組み込んでみることで、旅の景色は一気に色鮮やかになります。
まあ、PP単価は結構良いですが。
ANAのB737-800がもたらしてくれた2時間の快適な空の旅と、おいしい機内食、そして最後に味わった鉄道のノスタルジーは、運航休止まであとわずかではありますが、結構楽しかったです。