
2026年も折り返し地点を過ぎようとしている6月。年間を通じて飛行機に乗り続ける「マイル修行(プレミアムポイント修行)」を行っている身にとって、この時期は一つの大きなターニングポイントを迎える季節でもあります。
今回は、おそらく「今年最後」になるであろう、沖縄(那覇:OKA)行きのANAプレミアムクラス搭乗記です。
今回の旅程を終えると、目標としていた5万プレミアムポイント(PP)に到達し、念願の「プラチナステイタス」となります。何度も往復したこの景色とも、今年はこれで一区切りかと思うと、出発前からどこか感慨深いものがあります。
そんな節目となるフライトの模様を、早朝の静まり返った羽田空港の様子から、機内、そして那覇空港でのトンボ返りまで、お伝えします。
- 静寂に包まれた早朝の羽田空港:夏至の残り香とSUITE EXPRESS
- 14年戦士:ボーイング777-200ER(JA741A)に搭乗
- 離陸、そして雲を抜けて太平洋へ
- 早朝の機内食:シンプルさと、別腹のワイン
- 梅雨を抜け、コバルトブルーの沖縄の海へ
- 那覇空港へ着陸:変わらないターミナルと、変わりゆくフリート
- 混雑する那覇空港ラウンジと、旅の終わりに
- 最後に
静寂に包まれた早朝の羽田空港:夏至の残り香とSUITE EXPRESS

旅の始まりは、まだ街全体が眠りから覚めきっていない午前4時台。始発の東京モノレールに乗り込み、羽田空港第2ターミナルへと向かいます。
季節は夏至を過ぎたばかりの時期。時計の針はまだ5時前を指しているというのに、景色はすでにうっすらと明るくなり始めています。冬場であれば漆黒の闇に包まれている時間帯ですが、この時期の早朝は、プライムブルーから淡い朝焼けへと移り変わる美しいグラデーションの空を拝むことができます。

凛とした涼しい朝の空気を吸い込みながらターミナルに到着。日中や夕方の時間帯であれば、旅行客やビジネスパーソンでごった返す出発ロビーも、5時台ばかりは水を打ったような静けさです。チェックインカウンターへと続くエスカレーターは、渋滞の「じ」の字すらありません。この、空港全体がエネルギーを蓄えて静かに呼吸しているかのような独特の空気感は、早朝便を利用する者だけが味わえる特権と言えるでしょう。
「ANA SUITE EXPRESS」からラウンジへのアプローチ

プレミアムクラス利用、そしてダイヤモンドメンバー(あるいはラウンジアクセス権)としての恩恵を受けるべく、保安検査場は「ANA SUITE EXPRESS」へと進みます。
【保安検査場の少しユニークな構造】
この「SUITE EXPRESS」は、混雑を避けて一瞬で保安検査を終えられる最高のショートカットなのですが、検査を終えるとそのまま自動的に「ANA SUITE LOUNGE」へのアクセスルート(エスカレーター)へと導かれる導線になっています。この、一般エリアとは完全に隔離された「特別感」を演出する動線設計は、何度通っても高揚感を覚えるものです。
朝5時台の「朝ワイン」と、65番ゲートへの短い旅

結露するグラスと、至福の迎え酒
ラウンジ内も、さすがに朝5時台とあって人の姿はまばらです。窓外の駐機エリアには、朝一番の出発を待つ大型機たちが並んでいます。静かな窓際のシートを確保し、さっそくドリンクカウンターへ。
「朝の5時台からアルコールなんて」と思われるかもしれませんが、修行僧の朝は早い(そして体内時計はすでに稼働している)のです。今回は自分へのささやかな前祝い、あるいは前日からの「迎え酒」のような感覚で、冷えた白ワインをグラスに注ぎました。
席に戻ってグラスを置くと、またたく間にガラスの表面にびっしりと大きな水滴がつき始めました。気候はすっかり夏。日本の不快ながらもどこか愛おしい、ジメジメとした湿気の強さを、グラスの結露が雄弁に物語っています。キリッと冷えたワインを一口含むと、心地よい酸味が頭をスッキリとさせてくれます。外の景色を眺めながら、これからのフライトに思いを馳せる、この上なく贅沢な時間の始まりです。

65番ゲートへ、受付を通らない裏ルート
楽しい時間はあっという間に過ぎ去り、気づけば搭乗時刻が近づいてきました。本日の搭乗口は「65番ゲート」です。
羽田空港第2ターミナルの構造に詳しい方ならピンとくるかもしれませんが、SUITE LOUNGEから65番ゲートへと向かう際、通常のレセプション前を通るルートではなく、ラウンジ奥にあるエレベーターを利用してダイレクトに搭乗階へと下りるルートが存在します。無駄な歩行を減らし、シームレスにゲートへと向かえるこの構造は、非常にスマートで気に入っています。
エレベーターを降り、65番ゲートへと歩を進めます。時刻は6時台。都心在住であっても、公共交通機関を使ってこの時間に羽田空港にたどり着くのは至難の業であるためか、ゲート前の待合エリアも人が少なめで、非常に落ち着いた雰囲気が漂っていました。
14年戦士:ボーイング777-200ER(JA741A)に搭乗

那覇へと連れて行ってくれる機材は、ボーイング777-200ER(機体記号:JA741A)です。
航空ファンであればご存知の通り、この機体はANAの国内線幹線を長年支え続けているベテラン機であり、機齢としては「14年」を数える立派な戦士です。一時期、エンジンの問題等で日本の空から姿を消しかけたトリプルセブンですが、こうして再び日本の大動脈で元気に活躍している姿を見るだけで、どこか胸が熱くなります。
機内に入ると、古臭さは一切感じられません。それもそのはず、プレミアムクラスのシートは近年導入された最新型のパーソナルモニター付きシートへと換装されているからです。


- 機材:Boeing 777-200ER (JA741A)
- 機齢:約14年(ベテラン機)
- シート仕様:最新型プレミアムクラス(大型モニター完備)
- 座席配列:2-3-2(真ん中席はちょっと)
深いプレミアムブルーの布地、電動のリクライニング、そして大画面のタッチパネル。14年という機体の歴史を感じさせないほど、モダンで清潔感あふれる空間が広がっています。大型機ならではのワイドな機幅が生み出す開放感は、やはり小型機や中型機(B787など)とは一線を画すものがあります。
離陸、そして雲を抜けて太平洋へ

D滑走路「RWY 05」からのテイクオフ
定刻通りにプッシュバックが始まり、機体は滑走路へと向けてタキシング(地上移動)を開始します。
この日の離陸滑走路は、羽田空港の沖合に浮かぶD滑走路。50ではなく、通称「RWY 05(ランウェイ・ゼロファイブ)」からの離陸となりました。南風運用の時期であれば、同じD滑走路でも逆側の「RWY 23」や、C滑走路の「RWY 16L」などが使われることが多いですが、この日は北向きに離陸する「05」です。
滑走路端で一旦停止した後、2基の巨大なプラット・アンド・ホイットニー(P&W)製エンジンが「ウゥゥゥン……」という独特の重低音を唸らせ始めます。ブレーキが解放されると、14年戦士とは思えない力強い加速Gが身体をシートへと押し付けます。滑走路を力強く蹴り、機体は大空へと舞い上がりました。

離陸後、機体はまず千葉・浦安方面へと向かって高度を上げ、そこから大きく右へと旋回していきます。眼下には東京湾、そして東京湾アクアラインの「海ほたる」が小さく見えてきます。房総半島をかすめながらさらに右へ旋回し、進路を南西へと定めて太平洋へと出ていく、羽田発西日本・沖縄行きの定番ルート(VYNERディパーチャーなど)です。

上空に達すると、窓の外は一面の「雲一式」となりました。さすがは梅雨の時期です。日本の南岸に停滞する梅雨前線の影響か、水分をたっぷりと含んだ、灰色がかったドヨーンとした雲海がどこまでも広がっています。地上の景色が見えないのは少し残念ですが、この「雲の絨毯」の上を滑るように飛ぶ感覚もまた、飛行機旅の醍醐味です。
早朝の機内食:シンプルさと、別腹のワイン

胃に優しい405kcalの朝食
水平飛行に移ると、お待ちかねのプレミアムクラスのお食事が提供されます。朝の時間帯は「朝食」メニューとなります。
今回のメニュー内容は以下の通りでした。
お食事 / Menu
- 1. 照り焼きチキンとレッドキャベツとビーツマリネのデニッシュサンドイッチ
- 2. ハムカツタマゴサンドイッチ
- 3. オルゾとベーコン風味のスープ
- 4. フルーツ
早朝便ということもあり、ボリュームとしては非常に「シンプル」です。人によっては、昼食や夕食の豪華な御膳と比べると「同じプレミアムクラスの料金(あるいはアップグレード料金)を払っているのに、少し損をしたかな?」と感じるかもしれません。
しかし、まだ寝起きで本格的に動いていない身体の胃袋にとっては、このくらいの軽食がまさに「ちょうど良い」のです。温かいスープがじんわりと身体に染み渡り、彩り豊かなサンドイッチが程よくお腹を満たしてくれます。ビーツのマリネの酸味が爽やかで、眠気を含んだ頭を優しく起こしてくれました。

紙コップになっても止まらないワイン
食事のボリュームは控えめでしたが、アルコールをはじめとする飲み物は「別腹」です。
ラウンジに引き続き、機内でも白ワインをオーダー。ANAのプレミアムクラスでは、通常は小瓶(クォーターボトル)とガラス製のグラスで提供されますが、飛行時間が長く、ついついおかわりを重ねているうちに、安全上の理由や在庫の関係からか、最終的にはお馴染みの「紙コップ」での提供となりました。
プラスチックや紙コップで飲むワインも、上空1万メートルの機内という非日常のスパイスが加われば、不思議と美味しく感じられるものです。梅雨時の千切れ雲が窓外を飛び去っていく様子を眺めながら、ゆっくりとグラス(紙コップ)を傾ける時間は、至福そのものでした。
梅雨を抜け、コバルトブルーの沖縄の海へ

劇的な景色の変化:長い梅雨の終わり
羽田を発ってから2時間が経過しようとする頃、窓外の景色に劇的な変化が訪れました。
それまで機体を包み込んでいた、あるいは眼下を覆い尽くしていた重々しい梅雨の雲が、嘘のようにサーッと消え去っていったのです。代わりに現れたのは、痛烈なほどの太陽の光と、どこまでも続く濃い青色のグラデーション。
南の海へと近づくにつれ、沖縄地方が長い梅雨の季節を終え、本格的な「夏」へと突入したことを確信させる、目の覚めるような快晴の景色が広がりました。千切れた白い綿菓子のような雲が、エメラルドグリーンの海面にポツポツと影を落としています。これぞ、誰もが憧れる沖縄の景色です。

伊江島上空の空中散歩と「トリトン&モヒカン」
那覇空港への降下を開始すると、飛行機は沖縄本島の北西に位置する「伊江島(いえじま)」の上空付近を通過します。


窓の外に目をやると、サンゴ礁が作り出す、淡い水色から深い藍色へと変化する「ブルーの重なり」が見事な美しさを見せています。ANAの歴代塗装である「トリトンブルー」と「モヒカンブルー」の2色の青は、まさにこの日本の美しい海のグラデーションからインスピレーションを得たのではないか、そんな風に思わせてくれるほど、沖縄の海は神々しく輝いていました。
右手に目を移すと、特徴的な城山(タッチュー)がそびえる伊江島が見えます。伊江島といえば、かつての米軍滑走路の跡地などが残る場所ですが、上空から見ると「一体ここに滑走路が何本ある(あった)のだろう?」とゲシュタルト崩壊を起こしそうになるほど、奇妙に入り組んだラインが大地に刻まれているのが見て取れます。こうした地理的な発見も、窓側座席の醍醐味です。
トリトンとモヒカンではありませんが、沖縄らしいブルーの重なりが見えます。写真右は伊江島であります。滑走路は何本あるのかわからなくなります。
那覇空港へ着陸:変わらないターミナルと、変わりゆくフリート

沖合の第2滑走路(RWY 18L)へ着陸
機体はさらに高度を下げ、いよいよ那覇空港への最終進入態勢に入ります。
本日着陸するのは、数年前に新設された沖合の第2滑走路「RWY 18L」です。エメラルドグリーンの美しい海を間近に見ながら、機体は極めてスムーズにアプローチを続けます。
コックピットのスピーカーからは、地上からの高度を知らせる自動音声「One Hundred... Fifty... Thirty... Ten...(ワンハンドレッド、フィフティ……)」というコールが流れている頃でしょうか。そんな想像をめぐらせているうちに、軽いショックとともに14年戦士のタイヤが沖縄の地にタッチダウンしました。力強いリバース(逆噴射)の音が機内に響き渡ります。


着陸後、機体は広大な誘導路を通り、元々ある第1滑走路を横切って、懐かしの国内線ターミナルビルへと向かってタキシングします。
那覇空港の現・国内線旅客ターミナルビルが全面開業したのは1999年のこと。つまり、今年で築27年を迎えることになります。
私が初めてマイル修行という世界に足を踏み入れ、この那覇空港に降り立ったあの日から、このターミナルの構造や雰囲気は全く変わっていません。初めて来たときは、天井が高く、南国の光が差し込むピカピカの最新ターミナルという強い印象を受けましたが、27年が経過した今でも、その洗練された印象は色褪せることなく、当時の思い出をそのままパッケージしてくれているかのような安心感があります。

一方で、機材の面では時代の移り変わりを感じずにはいられません。本日お世話になったB777-200ER(JA741A)は機齢14年。まだまだ現役で日本の空を飛び続けてくれるでしょうが、トリプルセブン(B777シリーズ)自体が徐々に退役を進めているのも事実です。ANAが導入を予定している次世代の超大型双発機、ボーイング777-9(B779)の勇姿を、ここ那覇空港で早く見たいという期待が膨らむと同時に、このクラシックなB772の乗り心地をあと何回楽しめるだろうか、という一抹の寂しさも過ります。
混雑する那覇空港ラウンジと、旅の終わりに

降機後、次のフライトまでの短い時間を利用して「ANA SUITE LOUNGE」へと足を運びます。
朝の那覇空港ラウンジは、東京へ戻るビジネスパーソンや、私と同じような修行僧、そして観光帰りの目の肥えたプレミアムメンバーたちで、朝からかなりの混雑を見せていました。
「座る席がまったくない」という最悪の事態こそ免れたものの、お気に入りの一人用ソファー席はすべて埋まっており、今回は中央の大きなテーブル席の一角を選択せざるを得ませんでした。それでも、オリオンビールやシークワーサージュースの香りが漂うラウンジの雰囲気は、やはり「沖縄に来たんだ」という実感を強く抱かせてくれます。
最後に

今回の那覇フライトの到着を以て、私のプレミアムポイントは無事に50,000PPの壁を突破しました。
冒頭でも触れた通り、今年(2026年)中に那覇空港(OKA)の地を踏むのは、おそらくこれが最後になるでしょう。修行僧にとって「OKAタッチ(那覇を目的地としてすぐに折り返すこと)」は日常茶飯事のルーティンワークのようになりがちですが、いざ「これが今年最後だ」と思うと、降機する際の一歩一歩に、少しだけ感慨深い、後ろ髪を引かれるような寂しさを覚えました。
現時点ではまだ明確な方針は決まっていませんが、少なくとも効率重視で「羽田〜那覇」をマシーンのように往復する日々からは、一旦の卒業となります。
今日も今日とて、私はラウンジで一息ついた後、保安検査場を出ることなく、再び出発ゲートへと向かいます。しかし、次に向かう先は、いつもの羽田(HND)ではありません。ではでは。