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ANA762便プレミアムクラス搭乗記。最新鋭機「78K」で那覇から伊丹へ、大雨の大阪を傘なしでスマートに切り抜ける

旅を日常の延長線上に捉えるようになると、移動そのものに過度なドラマを期待しなくなるものです。いかにシームレスに、そして心身に余計な負荷をかけずに目的地へ着くか。今回は、その選択肢として、那覇(OKA)から大阪伊丹(ITM)へと向かうANA762便のプレミアムクラスを選びました。

那覇から関西圏への移動といえば、本数の多い関西国際空港(KIX)行きが真っ先に選択肢に上がることが多いかと思います。しかし、ビジネスや洗練された大人の移動という文脈において、伊丹線の持つ落ち着いた佇まいには、また捨てがたい魅力があります。しかも本日投入される機材は、国内線新仕様機として静かな注目を集める「78K(ボーイング787-10)」。プレミアムポイントの効率という現実的な計算を胸に秘めつつも、機内での時間を豊かに味わうための、少し贅沢なフライトの記録をお届けします。

那覇空港の喧騒を離れ、静謐なラウンジから35番ゲートへ

旅の始まりは、前行程であるANA993便の那覇到着からでした。午前9時半過ぎ、機外へと一歩踏み出すと、梅雨時期独特の重く湿った南国の空気が肌にまとわりつきます。しかし、その熱気をやり過ごすように、足早にANAラウンジへと向かいました。

次のANA762便が出発するまでのインターバルは約1時間半。この時間を単なる「待ち時間」とするか、それとも「静思の時間」とするかで、旅の質感は大きく変わるものです。冷たいハイボールで喉を潤し、窓の外に整然と並ぶ尾翼を眺めながら、PCを開いて静かに仕事を片付けます。周囲には、同じように静かにタブレットを見つめる出張族の姿があり、心地よい沈黙が空間を支配していました。

11時を回る直前、搭乗口である35番ゲートへと足を運びます。南側サテライトの落ち着いた空気の中、ほぼ定刻通りに優先搭乗のアナウンスが流れました。改札機にQRコードをかざし、静かにボーディングブリッジを渡ります。このスムーズな流れの中に身を置くこと自体が、旅慣れた者にとってのささやかな快感でもあります。

最新鋭機材「78K」の機能美と、特等席「1A」で考える空席の理由

機内に一歩足を踏み入れると、新車のシートを思わせる新しい機材特有の香りが鼻腔をくすぐります。本日アサインされた「78K」は、国内線仕様でありながら15.6インチの大型パーソナルモニターと電動リクライニングシートを備え、その居住性は国際線の中距離ビジネスクラスにも引けを取りません。

こうしたワイドボディの最新鋭機が、羽田発着の超幹線だけでなく、この那覇=伊丹という準幹線にも惜しみなく投入されている点に、この路線の底力を感じます。出張客やリピーターの層が厚いからこその贅沢な機材運用なのだろうと思います。

最前列の左窓側、1Aでした。壁との距離が広く、視界に他人の動きが入らないこの席は、まるでプライベートな書斎のようです。

ただ、ふと思うことがあります。かつてはステータスホルダーであっても確保が容易ではなかったこの最前列が、6月に入ってから妙にすんなりと予約できるようになった気がするのです。
顧客の動向に構造的な変化が起きているのか、あるいはゴールデンウィークと夏休みの端境期ゆえの一時的なエアライン側の座席管理の妙なのか。理由は定かではありませんが、多忙なスケジュールを縫って移動する身としては、この静かな利便性の向上を素直に喜びたいところです。

誘導路でのささやかな発見と、さらば沖縄の美しい海

プッシュバックを終えた機体は、ゆっくりと滑走路へと向けてタクシングを開始します。遮るもののない1A席の大きな窓から外を眺めていると、エプロンの片隅でボーイング737に給油を行うタンクローリーが目に留まりました。

何気ない景色ですが、市中を走る車両と比べて驚くほど多いそのタイヤの数に、航空ファンとしての視線が留まります。航空燃料という莫大な重量を支え、地盤への負荷を分散させるための特殊な設計。そうした空港を支える裏方たちの機能美に満ちた営みを間近に観察できるのも、窓側席ならではの密かな愉しみです。那覇空港の日常を切り取ったような、メカニカルで美しい一幕でした。

暦の上では沖縄はまだ梅雨明け前ですが、空を見上げれば、すでに夏の到来を告げるような力強い入道雲が顔を覗かせ、突き抜けるような青空が広がっていました。

エンジンが静かに、しかし力強く出力を上げ、機体は滑走路を滑り出します。ふわりと宙に浮いた瞬間、眼下には美しいエメラルドグリーンの海が広がりました。サンゴ礁の陰影が織りなすグラデーションは、何度見ても胸を打つものがあります。「寝てしまえば通路側も窓側も変わらない」というのは効率主義者の正論かもしれません。しかし、この島々と海が織りなす圧倒的なパノラマを前にすると、やはり飛行機旅の真髄は窓側にこそあると思わされます。

昼下がりのひととき、正午を跨ぐフライトがもたらす程よい充足

巡航高度に達し、ベルトサインが消えると、待ちに待った機内食の時間が訪れます。11時20分に出発したANA762便は、離陸後にちょうど正午を迎えます。

プレミアムクラスの食事は出発時刻によって厳格に分けられていますが、この昼食の時間帯は、重箱スタイルでありながらも幹線に劣らない品数とボリュームが用意されているのが嬉しいところです。本日の繊細なメニューの数々を、ここに書き留めておきます。

✈️ 本日のメニュー
  • 1. 玉子焼き、鯖味噌煮、きんぴら牛蒡
  • 2. パパイヤイリチー
  • 3. 炊き合わせ
  • 4. プルコギ
  • 5. 赤紫蘇ご飯あさり煮添え
  • 6. 味噌汁

429 kcal ※味噌汁を除く

和の定番である鯖味噌煮や炊き合わせが上品な出汁の風味を感じさせる一方で、沖縄の郷土料理であるパパイヤイリチーが南国の余韻を添えてくれます。プルコギのしっかりとした旨味も心地よく、赤紫蘇ご飯との相性も抜群です。

これだけ多様な味を愉しませながら、総カロリーが429kcalと控えめに抑えられている点も、健康に配慮したい大人にはありがたい配慮です。温かいお味噌汁を口に含むと、機内の乾燥した空気に疲れた身体がじんわりと解きほぐされていきました。

本州の梅雨空と、短い巡航時間の中で愉しむワイン

食事が終わる頃、機体は四国沖へと差し掛かり、窓外の景色は一転して灰色に染まり始めます。本州を覆う梅雨前線のリアリティが、そこに厳然と存在していました。

雲がまるで物理的な重みを持って機体の上にのしかかってくるかのような、特有の重苦しい景色です。これから向かう目的地の天候を予感させ、少しだけ気持ちが沈みそうになります。そんな雰囲気を払拭するように、私は客室乗務員に静かに声をかけ、白ワインの小瓶をもう一本願い出ました。

「あぁー、まずい、もう一杯」というCMがありましたが、まずくはない、ワインをもう1本オーダーします。

すっきりとした酸味のワインを口に含み、グラスを傾けながら過ごす時間は、まさに大人の移動における至高のデトックスです。しかし、この心地よい微睡みの時間もそう長くは続きません。那覇=伊丹線というルートは、羽田線とは決定的に異なる「スピード感」を持っているからです。

バブルの夢の跡を俯瞰し、雨光りする伊丹の滑走路へ

羽田へ向かうフライトのような、房総半島を回り込むような迂回ルートや混雑による空中待機は、伊丹アプローチにはほとんどありません。紀伊半島をかすめたかと思うと、機体はあっという間に関西圏の上空へと滑り込んでいきます。

窓外には関西国際空港の人工島、そして対岸のりんくうタウンが見えてきました。そびえ立つゲートタワービルを眺めるたび、かつてこの地に数十本もの摩天楼を築こうとしていたバブル期の狂乱と、その後の冷徹な歴史の教訓に思いを馳せてしまいます。上空からの俯瞰という贅沢な視点だからこそ、かつての人々が惑わされた夢の跡がよぎりました。

機体は急速に高度を下げ、大阪平野の街並みが間近に迫ります。生駒山地を回り込むようにしてファイナルアプローチへ移る一連の流れは実に無駄がなく、圧倒的な早さで進んでいきます。

軽い衝撃とともに、機体は伊丹空港の滑走路へとタッチダウンしました。強烈な逆噴射の音が響いた後は、窓外を流れる「32R」や「14L」の文字を見つめます。アスファルトの路面は大量の雨水を湛え、まるで鏡面のように黒光りしていました。その質感が、外の雨脚の激しさを無言で物語っています。

激しい雨の洗礼と、傘を持たない旅人の選択

スポットに到着し、誰よりも早く降機の途につきます。客室乗務員に見送られてボーディングブリッジへ出た瞬間、窓ガラスを激しく叩く「バラバラ」という雨音が鼓膜を震わせました。大阪は完全なる土砂降りの大雨でした。

ここで、今回の旅は身軽さを最優先したミニマルな弾丸移動。「なんとかなるだろう」と、折りたたみ傘すら自宅に置いてきてしまいました。まあ、持っていく気は最初からありませんでしたが。

このまま不用意に地上へ降りれば、一瞬で濡れ鼠になってしまうのは火を見るより明らかです。頭の中で、雨を回避するためのルート選定が急速に始まりました。

本日はそのまま那覇へ引き返す乗り継ぎではなく、伊丹からしっかりと地上へと降りる行程です。到着ロビーへと歩を進めながらリニューアルされた館内を見渡すと、洗練されたモダンな商業エリアの奥に、昭和の面影を残す天井の低さや独特の骨格が垣間見えます。この「古いのか新しいのかよくわからない」ハイブリッドな空気感こそが、伊丹空港の持つ独特の哀愁であり、どこか愛おしさを感じる理由でもあります。

傘を持たない旅人が、この大雨の伊丹から濡れずに移動するための最適解。それはターミナルビルからダイレクトに乗車できる「空港リムジンバス」の一択でした。

バス乗り場へは、空港の軒下を伝っていけば傘を開く必要すらなくアクセスできます。数ある行き先の中から、「近鉄上本町駅行き」を選択です。梅田行きや新大阪行き、あるいは神戸方面の路線に比べて混雑が比較的少なく、ゆったりとシートに身を沈められるのも良いところです。まあ、それだけが理由ではありませんが。

激しい雨に煙る阪神高速をバスは滑らかに走り、予定通り上本町バスセンターへと滑り込みました。ここは駅の真上に位置する、完全に建物に組み込まれた全天候型のターミナルです。

バスを降りれば、雨風しのげるまま次なる移動や滞在が出来るところであります。近鉄線の駅や地下鉄の改札へも、地下通路のネットワークを通じて一滴の雨に濡れることもなく移動ができます。

結局、この日は屋外へ出てダイレクトに雨に降られるような「水平移動」は一切ありませんでした。折りたたみ傘を置いてきたという痛恨のミニマリズムではなく、計画していたルート選びでありました。

最後に

これまで、沖縄からの帰路には本数の多さから関西国際空港を選びがちでしたが、今やその関西路線もほぼ絶えてしまいました。そんな背景もあり、久しぶりに利用した「那覇=伊丹」線のプレミアムクラスは、予想を遥かに超える快適さに満ちていました。
ANA国内線最高峰の機能美を誇る「78K」の静かな機内で、食事とワインを愉しみながら、効率よくプレミアムポイントを重ねていく。それは、単なる「移動」を「ダイヤモンド修行」へと昇華させる、マイル修行という世界に20年近く狂わされてきた、私なりの証跡なのかもしれません。
時に「トクたびマイル」を活用してお得に飛ぶのも魅力的ですが、区間マイルの優位性や機材のクオリティを考慮すると、この路線は静かに、しかし確実に修行の手応えを得られるルートだと感じています。

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