
ANAホールディングスは決算発表に合わせてAirJapanブランドを休止することを発表し、今後どうなるのか考えてみました。
AirJapanブランドを休止
ANAホールディングスは次期中期経営戦略の策定にあたり、昨今の環境変化に機動的に対応しながら、グループ全体の収益性と競争力を最大化するため、ブランド戦略を再構築することを決定したとのことです。
具体的には表題のとおり、Air Japanブランドを休止し、機材、および人財をANAブランドの運航へ集約し、国際線事業規模を拡大していくとのことです。
Air Japanを運航するエアー・ジャパンと言う会社は消滅するわけでなく、引き続き、ANA便の運航をするという裏方に戻り、冬ダイヤが終わる2026年3月29日まではAir Japanとして運航し、その後は休止となります。
Air Japan(NQ)は現在、成田⇔ソウル仁川、成田⇔バンコク、成田⇔シンガポールをそれぞれ1往復運航しており、2機のボーイング787で裁いているので、毎日運航ではないほか、機材トラブルがあった場合に機材繰りがつかずに運休と言う事もありました。
2024年にスタートし、Air Japanは国際線専門であり、レンジとしては中距離であり、フルサービスでもローコストでもないハイブリットキャリアという位置づけになりました。
他のキャリアではJALグループのZIPAIR、韓国のキャリアのエアプレミアが近場ではハイブリットキャリアと位置付けられています。ただ、エコノミーモノクラスであり、ZIPAIRがフルフラットのビジネスクラス相当の座席、エアプレミアがプレミアムエコノミー相当の座席を設けていたのとは対照的にモノクラスのオールエコノミー仕様でした。
就航当初はインバウンドを主なターゲットとして快適性と日本らしさをPRしていた記憶があります。
休止するANAの事情

ニュースリリースにも書いている通り、ANAには以下のような事情があり、休止となるようです。
- ロシア・ウクライナ戦争の長期化、機材納入遅延などといった環境変化
- リソース(機材不足)の選択と集中
そして、次期中期経営戦略(2026.4~2029.3?)では以下のような方向性を考えているようです。
- 国際線(旅客・貨物)の確実な成長
- 最適なバランスシートへのマネジメント
- 成長投資の強化
取り巻く環境を考えるとおそらく2030.3期以降にも確実に成長して行けるため、これまでの地盤固めをさらに固くしていくように見えます。
次期中期経営戦略期間中にはボーイング777-9の納入や2029年3月の成田空港の機能拡張が予定されており、国際線の拡大をするための成長投資を積極的に行う一方で、国内線の収益性改善、財務健全性や資本効率も推進していく必要があると見えます。
ただ、現状は成長投資をしたいと言っても、飛行機が足りずに収益を上げる機会損失をしていることもあり、次期中期経営戦略に向けて、まずできることからと言う事でブランドの整理を始めたのでしょう。
ボーイング1本脚打法に頼り、運航して見舞われたり、コロナ禍時は会社存続のために売却したB777-300ERが今となって裏目に出てたりと中々ついていないANAですが、今後も不運が続くのかそれは神のみぞ知ると言ったところではないのでしょうか。
今回のブランド統合は、かつて、エアアジアとともに国内線及び近距離国際線としてエアアジアジャパンを立ち上げすぐにダメになり、バニラエアにリブランドして最終的にはピーチと統合という顛末に似た朝令暮改的なところに似ていますが、色々な環境変化に遭遇し、柔軟な対応と言えば対応なのでしょう。
AirJapanブランドを休止して何をするのか
以上のようにAirJapanブランドを休止してするわけですが、では余った機材はどのように使われるのか考えてみました。
かつて、バニラエアをやめた際に余剰となった機材をインテリアはそのままにペイントをANAにして飛ばしていたことがありますが、今回もそうするのでしょうか。
先述のとおり、今後は国際線の確実な拡大と言うところであると機材がボーイング787と言う事もあり、長距離国際線に運用していくのではないかと思います。
ちなみに決算資料に各ブランドの客単価が開示されていますが、以下のとおりです。
(2025年度上期)
ANA国内線 16,255円
ANA国際線 94,486円
ピーチ 14,190円
AirJapan 25,115円
客単価は売上高/旅客数なので、費用(燃料・人件費等)を除いた利益はまた別ですが、同じ機材を使ってあげられる収益を最大化するとなるとANA国際線と言う事になります。しかも、燃費が良い機材なので長距離を飛ばすと言う事になるでしょう。
ANAブランドは、2024年末以降、羽田=ストックホルム線、ミラノ線、イスタンブール線に就航するなど、旺盛な国際線の需要を取り込み、収益拡大を図っています。
とニュースリリースに記載しているので、ヨーロッパ方面に充てるのかと想像してしまう一方で、北極圏/シルクロード・ルートを飛ばざるを得ないヨーロッパ路線は時間もコストもかかるので、アジアとの乗り継ぎ需要が北米に飛ばすのではないでしょうか。

また、客単価のあがるビジネスクラスへの改修を行うのも必須でしょう。当然シートはTHE Room FXが設置されることでしょう。改修費がどれくらいで回収できるかと言う事はありますが。
最後に

決算日翌日の株価を見てみると終値は2,889円/前日比+112.5円(+4.05%)とかなりの上げであります。ちなみにライバルのJALは2,778円/前日比-15円(-0.54%)とJALを抜いてしまいました。
これはNCA連結取り込みによる業績の上方修正が大きく、AirJapanブランド休止の株価への寄与は少ないと思われます。
また、次期中経の方向性が見えてきたことも株価に寄与した事も見え、そう考えるとその一つであるAirJapanブランド休止は投資家にはポジティブなのかもしれません。
個人的には利用者としてAirJapanは利用しないまま終わりそうですが、プレミアムポイントも貯まらず、マイルも貯まらないので、ANA機材に改修して長距離国際線にした方が利用機会が多くなり良いと思います。