中国国際航空の新規路線と安全保障を考えてみました。
中国の民用航空の始まり
中国は基本的には旧ソ連と同じく社会主義であり、事業者は国営の会社であったものの、二代目の主席が経済については資本主義化を進め、以後の主席も同調し、今日に至っており、世界中とのB to B、B to C等の取引はできるものの、いざとなると政権が強力な統制を可能とするところもあり、不思議な存在であります。
失われ続けている日本を裏目にアズナンバーワンの称号を手に入れようとするくらいでもあります。
そうした中で中国の航空について、元来は役所が空港運営も航空運営も一体として実施しており、中国全土内と国際線の民用は中国民用航空局が握っていました。
日本でいうと国鉄に近いような遠いような感じであり、何とも言えませんが、その後のJRへの流れを見ると何となく近いようにも見えます。
上下分離と民営化
1980年4月に二代目主席が中国民用航空局は民営化するべきと言明し、強大な権力をもとにそれが実現され、1987年から空港と航空の経営分離がなされ、地区管理局ごとに航空会社が設立されていきます。
多くの国では空港と航空会社は別経営と言うのが当たり前でありましたが、中国でもそれがなされることとなります。
日本では線路設備と列車運行は基本的に一つの会社で実施されていますが、一部の新幹線路線では線路と列車運行を分けられ、それを上下分離と言われており、それに近いとも言えます。
さらに、中国全土統一で運航されていた中国民用航空局の運航はエリア別に分割されます。
当初は下記のとおりに分割されています。カッコはハブ空港
1988年:中国国際航空(北京首都国際空港)
1988年:中国東方航空(上海虹橋国際空港)
1991年:中国南方航空(広州白雲国際空港)
1987年:中国西南航空(成都双流国際空港)
1989年:中国西北航空(西安西関空港)
1988年:中国北方航空(瀋陽桃仙国際空港)
大きく分けると首都・北京付近と国際線を担うキャリア、大都市上海を担うキャリア等に分割されました。
いみじくも日本では国鉄について1980年ぐらいから、解体分割民営化が議論され出し、それは頭頂部が二次元バーコードの政治家で実現され、1987年(昭和62年)4月1日に一気に分割されています。分割後は鉄道事業者(北海道、東日本、東海、西日本、四国、九州、貨物)の分割だけのように見えてしまいますが、実際は、情報システム会社や通信会社、そして、当時は良く語られた国鉄清算事業団にも分割されています。鉄道通信は現在では子バンク(親会社の創設者の苗字は孫ですが)となったりしています。
なんとなく、中国国際航空はドル箱の国際線と首都をハブにする意味ではJR東海、中国東方航空は経済大都市の上海を握るのはJR東日本、次いで大きな経済都市圏を持つ広州をハブにする中国南方航空はJR西日本にも似ています。
そして、中国西南航空は博多をハブにするJR九州、中国西北航空はJR四国、中国北方航空は文字通り北の大地のJR北海道にも見えます。
現在の中国大手キャリア
1987年からから1991年にかけて分割された中国のエアラインですが、その後、統合が始まります。
中国西南航空は2002年に中国国際航空へ合併され、中国北方航空は2002年に中国南方航空へ合併され、中国北方航空は2002年に中国南方航空へ合併され、実質的に3大キャリアとなっています。
その後、中国国際航空はスターアライアンスに加盟し、中国東方航空はスカイチームに加盟し、中国南方航空もスカイチームに加盟したものの、2019年末に脱退し、ワンワールドに近い距離をとっています。
エアラインは地理的接続と言うよりはある程度飛んでの結びつきなのか、地理的に近いところとの合従連衡ではないようです。
JRと比較すると本州会社は強く、三島会社(北海道、四国、九州)が厳しいのと同じように3強キャリアに地方キャリアが吸い込まれ、各キャリア国際線をパワーアップしていくこととなります。
その人口の多さと経済的繁栄から世界の航空会社 売上高ランキング2020年では中国南方航空が世界5位、中国国際航空が世界7位、中国東方航空が世界9位となっています。
我が国ではANAが14位、JALが17位となっています。
中国民用航空局からコールサインを引き継いだエアチャイナ
中国国際航空は首都北京と国際線を当初、国から引き継いでおり、長男格と言えます。それもあってか、コールサインはAIR CHINA、2レターコードはCA、3レターはCCAであり、中国民用航空局のものをすべて引き継いでいます。
長男が家督を継いだのと似ています。
また、現在までにおける同国の主席や政府要人、中共の要人の輸送をしています。また、朝鮮戦争で同士である国の首脳の輸送もするぐらい、プレステージがあると言えます。
そんなエアチャイナはスターアライアンスに加盟しており、経済的な関係が確立しているためかマイル修行では気軽に格安で利用できていた(アフターコロナにおける経済安全保障ではどうなるか不明)ので、ある意味、頼みの綱でもありました。
また、ネット上の日中関係とは裏腹に利用する年を重ねるサービスアップも著しく、機内食とか撮影していると、栄えるようにわざわざ、食事のプレートの下に敷くクロス製のカバーをプラスで持って来てくれた記憶もあります。
エアチャイナの国際路線
コロナ禍でエアチャイナの国際線の減便も例外ではありませんが、それ直前の国際線就航地は下記のとおりです。
日本
東京(成田、羽田)、広島、名古屋、札幌、福岡、大阪、沖縄
アジア
平壌、ソウル、プサン、チェジュ、テグ、マニラ、クアラルンプール、ホーチミン、ジャカルタ、シンガポール、ジャカルタ、カラチ、イスラマバード、ドバイ、デリー、バンガロール、ムンバイ、ウランバートル、コロンボ、ヤンゴン、シェムリアップ、カトマンズ
アフリカ
ヨハネスブルグ
オセアニア
シドニー、メルボルン、オークランド
北米
バンクーバー、トロント、ニューヨーク、ワシントン、ヒューストン、ロサンゼルス、サンフランシスコ
中南米
ハナバ、サンパウロ
ヨーロッパ
フランクフルト、ミュンヘン、デュッセルドルフ、ブダペスト、コペンハーゲン、アテネ、ミンスク、パリ、ジュネーブ、ローマ、ミラノ、マドリード、バルセロナ、ストックホルム、ウィーン、ロンドン
意外なことにモスクワやキーウはありませんが、ミンスク経由のブダペスト路線やアテネがあるのは一帯一路政策が色濃く感じられます。
アメリカは同盟国でないにもかかわらず、日本からの路線と同等にあるのは現在の経済力が強いと言えます。
気になるのは南米路線であり、現地政権とつながりやすいキューバやブラジルが既にあります。日系では過去にブラジルへの移民を促したこともあり、JFKから以遠でGRUまで飛んでいましたが、風化からか無くなっています。
そして、意外なことに日本各都市からの中国路線が多く、羽田に選択集中した同じスターアライアンスのANAとは異なります。(コロナ禍ベース)
今後、エアチャイナの南太平洋・南米路線が増えると挙げて喜べない
同社の南米路線はサンパウロとハバナでありますが、これがチリのサンチャゴやブエノスアイレス、しかも、その飛行ルートが大西洋経由ではなく、南太平洋のソロモン諸島やバヌアツ上空経由となると北米やヨーロッパを経由せずに日本から近い北京経由で行けるので便利そうであります。
しかし、中国が南太平洋から南米にかけて、道を作るとアメリカと同盟を結ぶ日本にとってはあまり良くないかもしれません。
最後に
エアチャイナはもともとは中国国営であり、分割民営化された後も同国のフラッグシップ的存在であり、主席等の要人輸送を担い、国際線でも外交主要都市を結んでいます。まさに、国家代表キャリアでもあります。
同エアラインはすでに世界五大陸に就航しており、今後、国策の意向で南太平洋や南米、そして、アフリカ各国にさらに就航していくと東京から近い北京で乗り換えで世界各国に行けるのは便利ですが、それが日本にとってもプラスかマイナスかわからないところもあります。
このあたりのアンテナは張っておくことが必須のようです。