最近、バニラ・エアの沖止めに関する出来事が話題となったこともあり、沖止めについて考えてみました。
沖止めとは
港に停泊できない船を沖合に停泊させておくことを意味します。水深の浅い港湾に停泊できない巨大タンカーなど沖合に停泊して、小型船を介して港と往来することのようです。船と同じような言いまわしが多い航空業界でも「沖止め」という言葉は使われ、空港のボーディングブリッジに接続できない航空機やターミナルの混雑により、ボーディングブリッジに空きがない場合に、ターミナルから離れたエプロンに航空機を駐機させ、タラップ等を利用して乗客を搭乗・降機させることを指します。こうした場合に航空機とターミナルとの往来は、専用バスによる移動または乗客が徒歩にて移動することとなります。
沖止めという言葉は世間一般ではないようで、業界や飛行機好きや飛行機をよく利用する人の間で使われる言葉のようです。一般的にはバスでのご案内やタラップからの搭乗という言い方のようです。
バニラ・エアの出来事
バニラ・エアが誤誘導 入国手続き経ずに入国
2017年4月に、台北発成田着のバニラ・エア機が到着した際に、乗客が入国手続きを経ずに入国した出来事で、原因としては悪天候により、いったん中部国際空港にダイバートした後に成田空港に沖止めし、到着口まで案内するバスが同便を国内線と誤認し、国内線到着口に誘導してしまったことによるもの。さらに2017年に6月にも、香港発成田着の同社便でも、沖止めからの誘導のバス運転手が国内線と誤認して国内線到着口に誘導し、入国手続きを経ずに入国しています。
奄美空港で車いす乗客にタラップで這い上がらせる
正確には乗客自身が搭乗の必要性その他目的から這い上がったというのが事実かもしれませんが、乗客もバニラ・エアも炎上している話題の出来事です。同社の奄美空港での電動昇降機の対応が前倒されたことは良かった一方で、その現場を担当した社員の方や這い上がるまで待っていた他の乗客はしんどかったのではないかと思います。
奄美空港にはボーディングブリッジのある搭乗口もありますが、今回の出来事は沖止めで起きたようです。いずれも沖止めでなければ、起きなかった出来事であるように思います。
沖止めに対しての意見
ネットで沖止めを検索すると意見は二分されます。
沖止めポジティブ派
飛行機好きや飛行機に搭乗すること自体が目的のマイラーに多いようです。真意はわかりませんが、搭乗記では、「出発が沖止めで興奮」や「沖止めキター」、「沖止め最高」といった表現とともに間近に目にする巨大な機体を写真撮影している方が多いようです。また、羽田空港のような巨大空港においてはボーディングブリッジがかなり設置されており、搭乗口または到着口まで約500m歩かされるケースもあります。それほど歩く必要があるのであれば、出発・到着に近いバスラウンジまでしか歩かなくてよい沖止めの方が良いという意見もあります。
沖止めネガティブ派
ファーストクラスやプレミアムクラスを利用しても沖止めとなると誘導バスが定員に達するまで待たされ、普通席の乗客と変わらないといった意見や搭乗の際、マイレージ上級会員の優先搭乗の意味がないといった意見もあります。また、真夏や真冬は体にきついといった意見や雨の日は荷物を抱えてのタラップ昇降は滑りやすくて怖いのでいやだといった意見もあります。
沖止めは利用者にとって、実利的にはあまり望まれない存在といえるのでしょう。一方提供する側からするとボーディングブリッジを増やすのも限界があり、効率的に運用しようとすると沖止めも必要であり、バスの運転、タラップの接続といった業務も発生、ひいては雇用創出にもつながるものでもあります。
結局、沖止めをどう評価するか?
沖止めに対する評価の結論は何とも言えないということになります。旅の一部として楽しみにしている方もいれば、1分1秒を争うビジネスパーソンにとっては時間のかかる沖止めは回避したいものでしょう。個人的にも、帰宅を急いでいる時はちょっと嫌だと思う半面、見通しの良いエプロン&滑走路周りから見える雄大な景色を感じられる時は好印象です。ただ、沖止めの際に、いつも乗客を安全安心に飛行機に搭乗・降機させてくれる係員の方々には感謝したいと思います。
沖止めコレクション
最後に、出没!アド街ック天国のガールズコレクション風に過去撮影した沖止めをお伝えします。
沖止め1 ユナイテッドエクスプレス(サンディエゴ)
沖止め2 南アフリカ航空(ヨハネスブルグ)
沖止め3 エチオピア航空(アディスアベバ)
沖止め4 エアマルタ(マルタ)
沖止め5 バンコクエアウェイズ(ルアンパバーン)
沖止め6 エアヨーロッパ(リスボン)
沖止め7 アドリア航空(リュブリャナ)
沖止め8 チロリアン航空(ウィーン)
沖止め9 エミレーツ航空(マスカット)
炎上とかなく、誰でも沖止めが楽しめる時代になってほしいものです。